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解かれた術

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 その頃、フランツとルーカスはある意味修羅場に立たされていた。今日のフランツはあのトレードマークのもじゃもじゃの髭を剃り、もじゃもじゃの頭は軽く整髪料を馴染ませセットされていた。

 すると日頃隠れていた目が、ここぞとばかりにしっかりと主張し、そこには優しげなイケメンが現れたのだった。

 その側には同じく知的なイケメンのルーカス。

 もちろんお姉ちゃん達に引っ張りだこである。かと言って求めに応じていたのでは、ここに何をしに来たのか分からない。そして頑なに断っている姿をここのスタッフに見られる訳にも行かない。修羅場、そう修羅場。特にルーカスに取っては。


 その辺りはフランツはとても上手く振る舞う。さすが年の功。お姉ちゃん達と駆け引きしながら相手をして、そこから擬似恋愛を愉しむ。

 もちろんまだ学生であるルーカスには、悲しいがなそんな器用なスキルは存在しない。トホホ。

 そしてフランツは立ち上がると、何人かの女性を連れて個室へ入って行った。残されたルーカスに「後で部屋へ来い。」と耳打ちしながら。

 ルーカスも何とかお姉ちゃん達と会話をしていた。それから20分ほど経った頃に「すいませんお手洗い~。」と言いながらその場を抜け出しフランツの後を追った。すると3つ先の部屋のドアが少し開いていた。中をそっと覗くとそこには手招きするフランツの姿があった。

そぉっとルーカスが部屋へ入ってドアを閉めると、ベッドの上にたくさんのお姉ちゃん達がみんな仲良くぐっすりと眠っていた。そう、これもフランツの神力の1つである。

「お~、ルーカス、お疲れさん。」とにやにやしながらフランツが労をねぎらっている。

「・・・・ええ、まあ、何とか。でもまだまだ僕もこういう場合の対処方法を学ばなければいけませんね。」と苦笑い。

「それよりルーカス気が付いているか?うちの騎士団が到着してたぜ?でもちょっと逃げる時間を稼がれているみたいだな。急ぐか?」と言いつつフランツが精神を統一し始めた。

「ーーああ、強力な精神に関する神力を持ってるやつがこの屋敷全体に術?を掛けてるな。これでは普通の人は、自分の意志で行動するのは大変かもしれない。ルーカス、ほんの5分ほどこの部屋の入り口を見張っててくれ。俺はこの術を解く。」と言いながら胸元で両手のひらを合わせ、更に目をつぶって集中し始めた。

 そのうち空気が変わったのはルーカスでも分かった。

「はい!ルーカスありがとさん。もうこの屋敷全体を縛っていた術は解けたぜ。」とフランツが言った途端、表が騒がしくなった。

「おっ、女性達が正気に戻ったね。さぁ、奴さん達はどう出るのか?」そう言いつつもフランツはもう一度、精神統一を始めた。そしてリンダに連絡を取り始めた。


「「リンダ嬢、聞こえるか?」」

「「ええ、距離が近いのでよく聞こえます。この屋敷全体に掛かってた術を解いたのはフランツ様ですわね?ありがとうございます。」」

「「さすがに良くわかるね。そんなリンダ嬢に頼みがある。実はこの術を解いた時に分かったが、この術には依代が存在する。依代にされていたのは恐らく若い女性だ。」

「・・・・奴らは神力を持つ若い女性を睡眠状態にした上で増幅装置として利用し、長時間この屋敷全体に術をかけていた形跡が有る。申し訳無いがその女性を助けてやってくれないか?恐らく別の部屋で眠らされてる可能性が高い。気配はリンダ嬢なら嗅ぎ取れるだろう。」」

「「分かりました。私たちはあと少しで地下へ入ります。その辺りも捜索して見ます。」」リンダがそう話すと「よろしく!!」と言ってフランツは連絡を絶った。
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