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十六夜の夜

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「まずはリンダ嬢、協力ありがとうとお礼を言っておくね。まあ、先ほどのやり方はまあ何というか。ごにょ、ごにょ。。。。」と少し頬を赤らめてルーカスがリンダに向かって照れながら話していた。

「っ!リンダ嬢、僕がベッドの下へ隠れた時にでも言ってくれたら良かったのに~。何が悲しくて中年オヤジの喘ぎ声を耳元で聞かなければならなかったのか、今でも理解に苦しむよ。」とノアがリンダの方を恨みがましく見ながら愚痴っていた。そりゃそうよね。うん、私知ってた。

「まあ、まあ、とにかく帳簿が手に入ったんだから良しとしよう。」とルーカスがノアに言って聞かせている。よしよしそれでいいのだ。

「まあ、帳簿は片が付いたんだが、いよいよ売春実態の件だ。これについては少しリンダ嬢にも関係するかもしれない。」とルーカスが真面目な顔で話し始めた。

「ここへ来て捜査はだいぶん進んできたんだ。あ~、でも話すと長くなりそうだからノア、ちょっとお茶でも入れて来てくれないか?適当にお茶菓子も頼むよ。」と傍にいるノアにお茶出しを頼んだ。

「えーまた僕?たまにはナユタがやってよ~。」とノアが泣き言を喚いている。その泣き言を聞くと、ナユタはすくっと立ち上がった。その表情はとても怖い。絶対零度だ。

「っつ!分かったよ、分かった。僕がやればいいんでしょ。僕が。」と切れつつもノアが席を立った。

 リンダはその様子を見ながら「じゃあノア様、私も手伝いますね。さっきのお詫びも兼ねて。では行きましょうか?」とノアに声を掛けるとさっさと席を立った。

「リンダ嬢、ルーカスはこのお茶でね~、ナユタはこちらのお茶が好みなんだよ~。」とキッチンから2人の楽し気な話し声が聞こえる。

 その様子を見ながらルーカスは資料を眺めていた。ナユタが「おいルーカス、いったいいつまであの女に手伝わせるつもりなんだ?この件はフランツは知っているのか?」と話し始めている。

「フランツには大まかに話してはいるよ。僕たちが信頼できる協力者を得て活動していると伝えた。その何が不満なんだい?」とさりげなくナユタに聞き返した。

「っそれは。。。」

「でも、彼女の力は本物だしそれは認めているでしょ?実際に彼女が居なければ今日の帳簿ももっと時間がかかったと思う。」そう言ったきりルーカスは俯き黙り込んだ。


「皆さまお待たせしました。今日のお茶菓子はフルーツいっぱいのパウンドケーキですわ。」と言いながらノアとリンダが現れた。リンダはさっさと3人の目の前に、お茶やらお茶菓子を配膳した。少しも聞き苦しい音を立てることは無く、本来の育ちの良さがうかがえる。

 4人ともお茶を少し飲みそれぞれケーキを口に入れるとルーカスが話し始めた。

「まずはこの資料を見て貰いたいんだ。ここ2~3年の色街で春を売っている人たちの数だ。見ての通りここ2~3年はその数がうなぎ上りだ。そしてこの増えた人たちはどこに居るか分かるかい?」と資料を指差しながらリンダに聞いてきた。

「そんなの分かる訳ありませんわ。ルーカス様いじわるは止して下さいな?」と笑ってはいるが目は笑ってなかった。

「ごめんごめん、悪気はなかったんだ。答えを言うね。[十六夜いざよいの夜]と呼ばれる店に集結しているのが分かってるんだ。」

「この[十六夜の夜]の場所がなかなか特定出来なかったんだけど、やっと今日特定出来たと連絡が入ったよ。」

「・・・・まぁそれは何よりですわね。」とリンダが頷き、ノアやナユタは真剣にルーカスの方を見ていた。

「そして同時に他の報告も上がって来た。その[十六夜の夜]で春を売る女性達の殆どがこの国の女性では無いらしい。何処からか違法に連れて来られて来た女性ばかりだと。」
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