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任務完了の後のナユタ君と馬車で。

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 青、赤、青。

 これが何かって?

 私が呼びかけた後の3人の顔色よ?
激おこでベッドの下から飛び出て来たノアの顔色が赤いのは分かるわ。でも残りの2人の顔色が青いのは何故かしら?

「・・・・ノア様、どうしたのですか?」と意地悪く聞いてみた。やはり私は人が悪いみたい。

「っふ!!リンダ嬢!どうして君は!!」と声に出さずに怒っている。偉いわね~。今は任務の最中と分かってらっしゃる。

「3人ともラッセンの自供をよく聞いてましたよね?さぁ、納屋を探しましょう。長居は無用です。手分けして急いで。」と3人を納屋へと急き立てた。

 その間に別室でお休み中のラナ本人を、同じくベッドで絶賛お休み中のラッセンの隣へ並べて置いた。これでヨシ。この人たちこれで幸せ。

 後は2人仲良くやって下さいな。もちろん私が書いた魅了の紙もビリビリに破いて人目につかない様に処理して置いた。そして術を解きリンダの姿へ戻った。

 今日は少し力を使い過ぎてるわね。やれやれだわ。

「リンダ嬢、見つかりましたよ?」とルーカスが帳簿を持って来た。中身を見るとこれで間違いない。と思える内容だった。しっかりと売春で得た利益の事も記してある。

 頭が良く悪巧みが出来る人間ほど、書き記す事にこだわる傾向がある。絶対にガチの帳簿が存在すると思ってたわ。そう考えている間にルーカスがしっかりと記録を取っている。そして元の場所に帳簿を戻していた。

「・・・・リンダ嬢、ここはもう出よう。」とナユタがそう話すと、リンダもさっと部屋から出た。人目につきにくい様、各自バラバラで歩く。

 リンダは自然とナユタと一緒に歩く事になってしまった。何やら沈黙が気まずい。

「・・・・2人並んで歩いているのに何も話さないのも変ね。」と笑ってナユタに話しかけると「あぁ、それもそうだな。・・・・前からずっと思ってたんだが、リンダ嬢は一体どこで修行を?」と不思議そうに話しかけて来た。

(そんな普段の顔も素敵ね。そして相変わらず目が綺麗。)

「ふふっ、恐らく言っても分からないので秘密です。でもいくら調べても出て来ないと思いますよ?」とだけ言っておいた。

 それからは学校の話やら友達の話など学生らしい話を心掛けた。どこで誰が聞いているか分からないし。

 途中で辻馬車を見つけると、嫌がるナユタ君を「私疲れちゃった。えへっ。」と説き伏せ、彼の手を引っ張ると馬車の中へ連れ込み、行き先を聞いて来た御者にアジトの方へ行くように告げた。

 人目に付くのはなるべく避けたいと思うからね。移動は迅速に行うに限る。忍びの心得よ?

 馬車の中でナユタ君が車窓を見ながら聞いて来た。

「リンダ嬢は婚約者はいるのか?」

「いえいえ、ナユタ様はご存じの筈でしょう。私は先日、大衆の面前でこっ酷く振られたんですよ?そんな直ぐに新しい婚約者が見つかる訳無いじゃないですか~。・・・・それにそんな物好きは中々居ないですよ。」とぎこちなく笑って答えた。

 そして誰に言うでも無く「・・・・いづれ修道院にでも行こうかな。」と呟いた。

(・・・・闘う修道女ってかっこ良くない?私なら獣も仕留める自信があるわ。絶対、教会の皆様のお役に立てると思う!!何ならハンターも可!)

 まさかリンダがそんな妄想逞しくさせているとは夢にも思わず、ナユタはそんなリンダの横顔を何か言いたそうにじっと見つめていた。
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