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閑話

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 この世界に魔晶石と言う石がある。

 こちらの世界で言えば石炭みたいなものだと思って頂けたら良い。日常生活のエネルギーはほぼこの石で賄われておりクリプトン国を始め全世界のエネルギーの主力である。

 もちろんこの石が採掘出来るところは限られており、クリプトン国で優先採掘権を持っているのが、この国はほぼ公爵家であった。

 そしてその発掘された魔晶石の運搬全体を受け持っているのが、リンダの実家であるトラスト家だった。そして優先発掘権は無いものの、侯爵家の中で唯一発掘権を持っているのがリンダの婚約者だったリーベルト侯爵家で有った。






「んっ、んっ、んんっ!!」とドアの外から咳払いが聞こえて来た。上質な調度品が置いてあるその部屋のベッドで、ゴロリと横たわっていたその男は、いそいそとドアに向かいドアを開けた。そこには丁度1食分の食事の載ったトレーが置いてある。


 ここはクリプトン国4大侯爵家の一つとされているリーベルト家の屋敷の離れである。

 この離れで家族から本宅を追い出されているのは当主ラッセンであった。

 元々政略結婚で結ばれた二人だったが、実は結婚前からラナと言う情人がいた。

 ラッセンの両親は結婚前にはラナを切るように厳しく言い含めたが、結局のところ切れたのはその時だけで、数年前に焼け木杭に火が着きそれが執念深いマリアンヌにばれてしまった状態である。

 問答無用で住まいは離れに移されて現在に至る。ラッセンは1人寂しくに離れに居るのだ。

 ただ仕事の時だけは離れから出しては貰えるが、もれなく監視付きであった。

 事業も結婚した最初の頃はうまく行っていた。魔晶石を取っていたのは我が国だけだったし、優先発掘権が無くてもそれなりに採掘出来たからうちの事業も潤っていた。

 他の国でも採れ出し、流通する様になってからは事業に暗雲が立ち込めて来た。

 そうなると事情をよく知りもしない上に、贅沢に慣れきっていたマリアンヌが「どうして私のドレスを買い控えしなければならないの?」

「あれぐらいの宝石じゃ無いと、他の方のパーティには、恥ずかしくてとても出席出来ないわ。」

などと言い始めた。その時に都合よくエリックの婚約話が纏まり、多額の融資を受けられる様になった。

 お金があって当たり前という環境で育った苦労知らずのマリアンヌにはその有り難みが分からなかったようだ。

 その時だったと思う。ちょうど得意先との飲み会で元情人のラナに会ったのは。エリックは昔の情熱を思い出し再度ラナを口説き始めた。

 ラナと一緒に居ると楽しかった。自然に呼吸が出来る気がした。ラナさえいれば何も要らないとまで思い始めていた。

 何かの折にとうとう2人は再び情を交わし始めてしまった。そしてそれが何処からかわからないが半年も持たずにマリアンヌにバレてしまったのだった。

 息子にも知られてしまい、屋敷にとうとう居場所が無くなった。使用人達に連れられ離れへと住まいを移された。


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