上 下
12 / 40

戦いへの誘い

しおりを挟む

 リンダはマダム・エクレールの店から飛び出し【フォートナムの森】へ着いた。
「さぁ、ここね。」と呟くとリンダは荷物を降ろしさっとドレスを脱ぎ捨てた。

 黒装束である。さすがにまんまそれでは無い。リンダ独自の改良を加えてある。幻術を使えるので顔を隠す必要はない。

 ただドレスや制服は動きにくいのだ。黒い膝上までのチュニックに、ウエストを共布のベルトで締め、黒いスパッツに黒いブーツを履いた。もちろんインナーには黒いタートルネックを着込んだ。暗い森の中で更に目立たない工夫だ。

 そして武器を仕込み、ベルトの部分に取り付けた刀用のホルダーに脇差しを付けた。

「ん、バッチリだわ。」靴音対策としてきちんと厚めのゴム製の靴底の物を選んだ。

 そして黒いゴムで長い髪を一つに束ねた。

 荷物は一つに纏め大きな岩の影へ隠した。

 落ち着いて水筒を出すと、一口水分を口へ含ませ1つ深呼吸した。いつも任務の時はこのタイミングで、だいたいの作戦を練っていた。今はそこから索敵を行い、後方に3名が居る事を掴んだ。

「変化の術」と呟くと姿形を全くの他人に変化させた。そして、ゆっくりと奴らの方向へ進み出す。

 歩きながら引き続き索敵を行う。3名のうち2名はノアとルーカスね。あと1名は。。。。

 へぇ、これはこれは。何て凄いエネルギー。2人とは段違いだわ。これは長引く相手になりそうね。なるほど奴らが薦めるだけは有る。慎重に慎重に行きましょう。とても貴重で大切な時間なのだから。。。。



◇◆◇



「おいでなすった様だ。」とナユタが話すと剣を携えポツリと言った。

「ええ~!もう分かるのか?」と驚くルーカスとノア。

「あぁ、でもこの感じは。。。。」何処かで感じた事があるな。普通じゃない人間のエネルギー。そう、1人の体なのに1人じゃ無いんだ。

「あっ、あの鍛冶屋、アントニオの店に居た子だ。」と咄嗟に思い出した。確か綺麗な銀髪だと思ったんだ。

「ナユタ、何だよそれ。訳わからんし。」とノアがボヤいている。

「ナユタ、一度会っているんですか?」と思わずルーカスも聞いた。

「お前ら言わなかったけど。この人女性だよな?」と2人をジロリと見た。

「言い難かったんだ。俺たち手も足も出なかったから。」とルーカスが悔しそうに俯いてそう話した。

「まあ良いよ。俺も自分の立ち位置がそろそろ知りたかったんだ。これからやれるだけやってみるさ。」とナユタが明るく2人に話しかけた。

 その時「ゴォー!!」と強風が吹き辺り一面まっ白い花びらが舞った。周りの木々の木の葉も一緒に巻き上げられている。美しいがもの凄い量の花びらだ。

「ナユタ、ナユタ。何処にいるの?」と何処からかお母さんの声が聞こえた。遠くでお母さんがこちらを向いている。

「幻覚を使えるのか?」と呟くと抜刀し、刀身に眼で力を送り込むと大きく辺り一面薙ぎ払った。一瞬で消えて行く花びら。

 その瞬間に細い殺気を帯びた太刀筋がナユタの方へ降り掛かった。「キィン!!」とその殺気を払うと、周囲が静かになった。

 この気配は、なぜだろう。ヒューイに似ている気がする。


「うわぁ!!」と声が森の奥から響いて来た。あれはノアの声だ。俺たちいつの間に離された?

 ルーカスが「ノア!!」と叫ぶとその声のする方向へ向かって走って行った。

「ルーカス、危ないから俺から離れるな!!バラバラになったら奴の思う壺だぞ!!」と叫んだがそのまま行ってしまった。

 しかし、本当に女性なのか?何者だ。それにしてもかなりの使い手だ。そう考えていたら

「ごめん、ルーカスはどこ?気がついたらここから離されてしまって。」とノアが慌ててナユタの元へ駆け寄って来た。

 その瞬間、ナユタの喉元に迫り来る刃先が見えた。ナユタだからこそ見えたと言っても良いだろう。もしこれがルーカスやノアだったらひと思いに殺されていた。この間合い、やはりヒューイを思い出させる。


 咄嗟にその刃先を払った。そしてノアはにこにこと笑っていた。そして。。。。


「あら?やっぱりばれた?」と笑いながらゆっくりとノアから銀髪の髪の美しい女性へと変化した。そう、やはりアントニオの店で出会ったあの子だ。

「こんにちは、初めましてでは無いですね。」と楽しそうに笑った。弾ける様な笑顔だ。さっきまで自分の命を狙っていたとは到底思えない。

「あぁアントニオの店で会ってるな。」と何故か負けた様な気持ちでナユタも答える。

「はい、お互いにすぐ分りましたね。貴方だけエネルギーが違うんですもの。久しぶりに楽しかったです。来たかいが有りましたわ。」とリンダが頭に巻き付けた布をふわりと外しながら話した。

「ーーーー君は1人では無いんだね?」ナユタはリンダの流れる様な銀髪を眩しい思いで見つめていた。

「はい、そこまで分かりますか?そうなんです。まぁ、話すと長くなるんですが。ははっ。」

そう言いながら「解!」と韻を結んで森の奥の木へくくってあるノアの縛りを解いた。

 先ほどの魅了の術の時にノアを絡め糸で捕まえておいたのだ。

「じゃあ帰ります。あの2人来ると煩いんで。そうそう、私はリンダです。貴方はナユタさんで合ってますか?」

「そうだ。アントニオの店で聞いてたんだったな。」

「ええ、じゃあ私はこれで。機会が有ればまた戦いましょうね。」と楽しそうに戦うをしてその場から立ち去った。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ドン引きするくらいエッチなわたしに年下の彼ができました

中七七三
恋愛
わたしっておかしいの? 小さいころからエッチなことが大好きだった。 そして、小学校のときに起こしてしまった事件。 「アナタ! 女の子なのになにしてるの!」 その母親の言葉が大人になっても頭から離れない。 エッチじゃいけないの? でも、エッチは大好きなのに。 それでも…… わたしは、男の人と付き合えない―― だって、男の人がドン引きするぐらい エッチだったから。 嫌われるのが怖いから。

【R18】らぶえっち短編集

おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
調べたら残り2作品ありました、本日投稿しますので、お待ちくださいませ(3/31)  R18執筆1年目の時に書いた短編完結作品23本のうち商業作品をのぞく約20作品を短編集としてまとめることにしました。 ※R18に※ ※毎日投稿21時~24時頃、1作品ずつ。 ※R18短編3作品目「追放されし奴隷の聖女は、王位簒奪者に溺愛される」からの投稿になります。 ※処女作「清廉なる巫女は、竜の欲望の贄となる」2作品目「堕ちていく竜の聖女は、年下皇太子に奪われる」は商業化したため、読みたい場合はムーンライトノベルズにどうぞよろしくお願いいたします。 ※これまでに投稿してきた短編は非公開になりますので、どうぞご了承くださいませ。

悲劇の公爵令嬢に転生したはずなのですが…なぜかヒーローでもある王太子殿下に溺愛されています

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のリリアナは、ある日前世の記憶を取り戻すとともに、死ぬ寸前まで読んでいた漫画の世界に転生している事に気が付いた。 自分が転生したリリアナは、ヒロインでもある悪女に陥れられ、絶望の中死んでいく悲劇の公爵令嬢だった。 本来なら生きるために、漫画の世界の人間と関りを絶つ方向で動くべきなのだが、彼女は違った。絶望の中死んでいったリリアナの無念を晴らすため、リリアナに濡れ衣を着せた悪女、イザベルとその協力者たちを断罪し、今度こそヒーローでもある王太子殿下、クリスとの幸せを目指すことにしたのだ。 一方クリスは、ある事情から今度こそ元婚約者だったリリアナを幸せにするため、動き出していた。 そして運命のお茶会で、2人は再開するはずだったのだが… 悲劇の公爵令嬢に転生したリリアナと、2度目の生を生きるクリスの恋のお話しです。 カクヨム、小説家になろうでも同時投稿しています。 どうぞよろしくお願いします。

転生皇太子は、虐待され生命力を奪われた聖女を救い溺愛する。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

もしも○○だったら~らぶえっちシリーズ

中村 心響
恋愛
もしもシリーズと題しまして、オリジナル作品の二次創作。ファンサービスで書いた"もしも、あのキャラとこのキャラがこうだったら~"など、本編では有り得ない夢の妄想短編ストーリーの総集編となっております。 ※ 作品 「男装バレてイケメンに~」 「灼熱の砂丘」 「イケメンはずんどうぽっちゃり…」 こちらの作品を先にお読みください。 各、作品のファン様へ。 こちらの作品は、ノリと悪ふざけで作者が書き散らした、らぶえっちだらけの物語りとなっております。 故に、本作品のイメージが崩れた!とか。 あのキャラにこんなことさせないで!とか。 その他諸々の苦情は一切受け付けておりません。(。ᵕᴗᵕ。)

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

転生令嬢は最強の侍女!

キノン
恋愛
とある少女は、生まれつき病弱で常に入退院を繰り返し、両親からも煙たがられていた。 ある日突然、神様と名乗る謎の青年に神の不手際で、助かるはずだった火事で逃げ遅れ死んだ事を聞かされ、その代わりに前世の記憶を持ったまま異世界に転生させてくれると言われた少女。 そして、リディア・ローレンス伯爵家の娘として転生した少女は、身体を自由に動かせる喜びに感動し、鍛える内に身体能力が開花し、いつしか並みの騎士をも軽々と倒せるほどの令嬢になっていた。平凡に暮らそうと思っていたリディアは、ふと自分が転生したのは乙女ゲームの世界だという事を思い出し、そして天使で可愛い従姉妹が将来悪役令嬢になる事を思い出す。従姉妹の断罪イベントを回避する為、リディアは陰で奮闘するが次から次へと問題に巻き込まれてしまうーーー ※ラブコメ要素有りの個性的な面々が暴れる物語にしていきたいと思っています。 ※更新不定期です。 2019.1.21 前世の名前を消し、前世の名前は出さず少女と一括りにしました。文章を大幅に修正しました。

【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される

鈴木かなえ
恋愛
第17回恋愛小説大賞にエントリーしています。 レティシア・マークスは、『妖精姫』と呼ばれる社交界随一の美少女だが、実際は亡くなった前妻の子として家族からは虐げられていて、過去に起きたある出来事により男嫌いになってしまっていた。 社交界デビューしたレティシアは、家族から逃げるために条件にあう男を必死で探していた。 そんな時に目についたのが、女嫌いで有名な『氷血公爵』ことテオドール・エデルマン公爵だった。 レティシアは、自分自身と生まれた時から一緒にいるメイドと護衛を救うため、テオドールに決死の覚悟で取引をもちかける。 R18シーンがある場合、サブタイトルに※がつけてあります。 ムーンライトで公開してあるものを、少しずつ改稿しながら投稿していきます。

処理中です...