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フォートナムの森の戦い

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【フォートナムの森】へは私の脚なら直ぐに着いた。もと神月の上忍の実力を舐めてもらっちゃ困るね。上忍になるのに、どれだけ足腰鍛えたか。でもこのリンダの体は、まだまだ鍛え足りない。

 自分と互角の実力者とやるなら戦いが長期にわたる。とてもじゃないが、この体では長丁場は耐えられないだろう。



 森に入る手前から己の気配を消す。これは初歩中の初歩。5歳の小五郎でもやってたわ。
そして慎重にだが素早く木の影を移動して行く。移動しながら、気を練り索敵も行う。

 ある程度森の中へ入ったら、じっと木の影に隠れ相手が索敵に掛かるのを待つ。私の能力なら半径1キロは相手がどこにいるかが分かる。気を研ぎ澄まし集中する。

 私の右斜め45度の地点に1名潜んでいる。

 あ~、こんな時に手裏剣かクナイが有れば良かったのに。仕方ないわね。

 手頃な石を拾った。石に強く自分の気を送り込む。そして私の気とリンクさせた。これでヨシ。

「えいっ。」と相手に向かって投げた。そのまま集中し石の飛行ルートをコントロールし続ける。相手も気配を察して少しずれたわね。

 逃げようたってそうは問屋が卸さないわ。逃すものか!

「ギャッ。」と短く声がした。うん、的中!
そのまま気配を消して、気を練り続けたまま相手に忍び寄る。私の投げた石は相手の右足の脛に当たった様だ。うずくまって患部を抱えている。

「ん?」相手の姿を見てびっくりした。うちの学校の生徒だ。タイの色からして一つ上ね。まだ私には気が付いていない様子。

 まあ~、顔はいいけど驚くほどボンボン面しているわ。修二郎の方がいい男だった。

「ーーーー絡め糸。」と術をかけて相手を木の幹に括り付けた。

「えっ!えっ!チクショー!ったくもう。これ何だよ、動けねぇじゃん。」当たり前だ、動かれてたまるか。

「あー、降参、降参。試す様な真似してすいませんでした。」と相手から情け無い声がした。

「ふふっ、ロッカーに恋文を頂いたので来て見たまで。私に何か御用でした?」と木の影からゆっくりと出てその男の前に出た。

「初めまして私の名前はノア。ねぇ君は誰?僕の知ってるリンダ嬢じゃ無いよね?」と悪びれもせず言い出した。

「ーーーー貴方殺されたいの?」

「っ、いやいやいや!!ごめんなさいって。この通り謝るから。」と木の幹に括り付けながら手足をジタバタしている。

 ん?他にもう1人仲間がいたのか?私の感覚に引っかかった奴がいる。

「そこにいるのは誰かしら?お仲間?」振り返るとその方向へ向かって声を張り上げた。

「参ったね。僕まで分かったんだ?」と姿を表すとこちらも同じ学校の生徒で一つ上だった。こちらもクールなイケメンだけど、やっぱりボンボン2号ね。

「解!」と指で韻を結びながら呟くと木の幹にいる男の拘束を解いた。

「大した用がないなら帰るわ。次にこんな真似をしたら2人とも殺すから。」とこちらを見ている2人を見据えて言い放ち、その場を後にした。


◇◆◇


「ーーッ!ひょー、ルーカス見てた?メチャクチャ強え。カッコいい。俺、手も脚も出なかったよ。あの子になら殺されても良いかも。」と騒いでる。

 あぁ、こいつの悪い所が出ている。昔から自分より強い奴には目がない。傾倒し称え崇めるのだ。でも自分より弱いとみなすや否や。まぁ、ここでは言わないでおこう。


「バカを言うなノア。あの子は既に何人かってる人間だよ。あの見た目に騙されるな。とは言ってもあの姿も本物じゃ無いね。油断してたら本当に躊躇なく呼吸するように殺るよ。まさかうちの学校に、あんな子が居るなんて。驚きしかないよ。」


「だよねぇ、ルーカス、あの子ぜひ仲間に欲しいなぁ。」

「あぁ、望む所だ。だが一筋縄では無理だろうなぁ。つるまなくても強い奴は、それだけ自分を持ってるって言う事だからね。」

「一度でいいから、ナユタに会わせて見たいよ。どちらが強いんだろ?」

「さあな、ナユタも強いからなぁ。何てったって俺らのリーダーだし。でもあれほど強い2人なら運命って奴に引き合わされるかもよ?」

「なーに言ってんだか!!何が運命だよ。笑わせるな。」







【フォートナムの森】から自宅へ帰って来た。何だか拍子抜け。もう少し手応えのある奴だと思っていたのにな。残念だ。もう1人もまぁ、そこそこって感じだ。

 でもあの森は訓練にうってつけだ。また行ってみよう。

 あっ、クナイと手裏剣。せっかくキャサリンに鍛冶屋を教えて貰ったのに作りに行くの忘れてた。明日にでも作りに行こうか。



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