6 / 40
フォートナムの森の戦い
しおりを挟む【フォートナムの森】へは私の脚なら直ぐに着いた。もと神月の上忍の実力を舐めてもらっちゃ困るね。上忍になるのに、どれだけ足腰鍛えたか。でもこのリンダの体は、まだまだ鍛え足りない。
自分と互角の実力者とやるなら戦いが長期にわたる。とてもじゃないが、この体では長丁場は耐えられないだろう。
森に入る手前から己の気配を消す。これは初歩中の初歩。5歳の小五郎でもやってたわ。
そして慎重にだが素早く木の影を移動して行く。移動しながら、気を練り索敵も行う。
ある程度森の中へ入ったら、じっと木の影に隠れ相手が索敵に掛かるのを待つ。私の能力なら半径1キロは相手がどこにいるかが分かる。気を研ぎ澄まし集中する。
私の右斜め45度の地点に1名潜んでいる。
あ~、こんな時に手裏剣かクナイが有れば良かったのに。仕方ないわね。
手頃な石を拾った。石に強く自分の気を送り込む。そして私の気とリンクさせた。これでヨシ。
「えいっ。」と相手に向かって投げた。そのまま集中し石の飛行ルートをコントロールし続ける。相手も気配を察して少しずれたわね。
逃げようたってそうは問屋が卸さないわ。逃すものか!
「ギャッ。」と短く声がした。うん、的中!
そのまま気配を消して、気を練り続けたまま相手に忍び寄る。私の投げた石は相手の右足の脛に当たった様だ。うずくまって患部を抱えている。
「ん?」相手の姿を見てびっくりした。うちの学校の生徒だ。タイの色からして一つ上ね。まだ私には気が付いていない様子。
まあ~、顔はいいけど驚くほどボンボン面しているわ。修二郎の方がいい男だった。
「ーーーー絡め糸。」と術をかけて相手を木の幹に括り付けた。
「えっ!えっ!チクショー!ったくもう。これ何だよ、動けねぇじゃん。」当たり前だ、動かれてたまるか。
「あー、降参、降参。試す様な真似してすいませんでした。」と相手から情け無い声がした。
「ふふっ、ロッカーに恋文を頂いたので来て見たまで。私に何か御用でした?」と木の影からゆっくりと出てその男の前に出た。
「初めまして私の名前はノア。ねぇ君は誰?僕の知ってるリンダ嬢じゃ無いよね?」と悪びれもせず言い出した。
「ーーーー貴方殺されたいの?」
「っ、いやいやいや!!ごめんなさいって。この通り謝るから。」と木の幹に括り付けながら手足をジタバタしている。
ん?他にもう1人仲間がいたのか?私の感覚に引っかかった奴がいる。
「そこにいるのは誰かしら?お仲間?」振り返るとその方向へ向かって声を張り上げた。
「参ったね。僕まで分かったんだ?」と姿を表すとこちらも同じ学校の生徒で一つ上だった。こちらもクールなイケメンだけど、やっぱりボンボン2号ね。
「解!」と指で韻を結びながら呟くと木の幹にいる男の拘束を解いた。
「大した用がないなら帰るわ。次にこんな真似をしたら2人とも殺すから。」とこちらを見ている2人を見据えて言い放ち、その場を後にした。
◇◆◇
「ーーッ!ひょー、ルーカス見てた?メチャクチャ強え。カッコいい。俺、手も脚も出なかったよ。あの子になら殺されても良いかも。」と騒いでる。
あぁ、こいつの悪い所が出ている。昔から自分より強い奴には目がない。傾倒し称え崇めるのだ。でも自分より弱いとみなすや否や。まぁ、ここでは言わないでおこう。
「バカを言うなノア。あの子は既に何人か殺ってる人間だよ。あの見た目に騙されるな。とは言ってもあの姿も本物じゃ無いね。油断してたら本当に躊躇なく呼吸するように殺るよ。まさかうちの学校に、あんな子が居るなんて。驚きしかないよ。」
「だよねぇ、ルーカス、あの子ぜひ仲間に欲しいなぁ。」
「あぁ、望む所だ。だが一筋縄では無理だろうなぁ。つるまなくても強い奴は、それだけ自分を持ってるって言う事だからね。」
「一度でいいから、ナユタに会わせて見たいよ。どちらが強いんだろ?」
「さあな、ナユタも強いからなぁ。何てったって俺らのリーダーだし。でもあれほど強い2人なら運命って奴に引き合わされるかもよ?」
「なーに言ってんだか!!何が運命だよ。笑わせるな。」
◇
【フォートナムの森】から自宅へ帰って来た。何だか拍子抜け。もう少し手応えのある奴だと思っていたのにな。残念だ。もう1人もまぁ、そこそこって感じだ。
でもあの森は訓練にうってつけだ。また行ってみよう。
あっ、クナイと手裏剣。せっかくキャサリンに鍛冶屋を教えて貰ったのに作りに行くの忘れてた。明日にでも作りに行こうか。
0
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された侯爵令嬢は、元婚約者の側妃にされる前に悪役令嬢推しの美形従者に隣国へ連れ去られます
葵 遥菜
恋愛
アナベル・ハワード侯爵令嬢は婚約者のイーサン王太子殿下を心から慕い、彼の伴侶になるための勉強にできる限りの時間を費やしていた。二人の仲は順調で、結婚の日取りも決まっていた。
しかし、王立学園に入学したのち、イーサン王太子は真実の愛を見つけたようだった。
お相手はエリーナ・カートレット男爵令嬢。
二人は相思相愛のようなので、アナベルは将来王妃となったのち、彼女が側妃として召し上げられることになるだろうと覚悟した。
「悪役令嬢、アナベル・ハワード! あなたにイーサン様は渡さない――!」
アナベルはエリーナから「悪」だと断じられたことで、自分の存在が二人の邪魔であることを再認識し、エリーナが王妃になる道はないのかと探り始める――。
「エリーナ様を王妃に据えるにはどうしたらいいのかしらね、エリオット?」
「一つだけ方法がございます。それをお教えする代わりに、私と約束をしてください」
「どんな約束でも守るわ」
「もし……万が一、王太子殿下がアナベル様との『婚約を破棄する』とおっしゃったら、私と一緒に隣国ガルディニアへ逃げてください」
これは、悪役令嬢を溺愛する従者が合法的に推しを手に入れる物語である。
※タイトル通りのご都合主義なお話です。
※他サイトにも投稿しています。
公爵令嬢 メアリの逆襲 ~魔の森に作った湯船が 王子 で溢れて困ってます~
薄味メロン
恋愛
HOTランキング 1位 (2019.9.18)
お気に入り4000人突破しました。
次世代の王妃と言われていたメアリは、その日、すべての地位を奪われた。
だが、誰も知らなかった。
「荷物よし。魔力よし。決意、よし!」
「出発するわ! 目指すは源泉掛け流し!」
メアリが、追放の準備を整えていたことに。
多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています
結城芙由奈
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】
23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも!
そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。
お願いですから、私に構わないで下さい!
※ 他サイトでも投稿中
不機嫌な悪役令嬢〜王子は最強の悪役令嬢を溺愛する?〜
晴行
恋愛
乙女ゲームの貴族令嬢リリアーナに転生したわたしは、大きな屋敷の小さな部屋の中で窓のそばに腰掛けてため息ばかり。
見目麗しく深窓の令嬢なんて噂されるほどには容姿が優れているらしいけど、わたしは知っている。
これは主人公であるアリシアの物語。
わたしはその当て馬にされるだけの、悪役令嬢リリアーナでしかない。
窓の外を眺めて、次の転生は鳥になりたいと真剣に考えているの。
「つまらないわ」
わたしはいつも不機嫌。
どんなに努力しても運命が変えられないのなら、わたしがこの世界に転生した意味がない。
あーあ、もうやめた。
なにか他のことをしよう。お料理とか、お裁縫とか、魔法がある世界だからそれを勉強してもいいわ。
このお屋敷にはなんでも揃っていますし、わたしには才能がありますもの。
仕方がないので、ゲームのストーリーが始まるまで悪役令嬢らしく不機嫌に日々を過ごしましょう。
__それもカイル王子に裏切られて婚約を破棄され、大きな屋敷も貴族の称号もすべてを失い終わりなのだけど。
頑張ったことが全部無駄になるなんて、ほんとうにつまらないわ。
の、はずだったのだけれど。
アリシアが現れても、王子は彼女に興味がない様子。
ストーリーがなかなか始まらない。
これじゃ二人の仲を引き裂く悪役令嬢になれないわ。
カイル王子、間違ってます。わたしはアリシアではないですよ。いつもツンとしている?
それは当たり前です。貴方こそなぜわたしの家にやってくるのですか?
わたしの料理が食べたい? そんなのアリシアに作らせればいいでしょう?
毎日つくれ? ふざけるな。
……カイル王子、そろそろ帰ってくれません?
悪役令嬢、第四王子と結婚します!
水魔沙希
恋愛
私・フローディア・フランソワーズには前世の記憶があります。定番の乙女ゲームの悪役転生というものです。私に残された道はただ一つ。破滅フラグを立てない事!それには、手っ取り早く同じく悪役キャラになってしまう第四王子を何とかして、私の手中にして、シナリオブレイクします!
小説家になろう様にも、書き起こしております。
婚約破棄されたのたが、兄上がチートでツラい。
藤宮
恋愛
「ローズ。貴様のティルナシア・カーターに対する数々の嫌がらせは既に明白。そのようなことをするものを国母と迎え入れるわけにはいかぬ。よってここにアロー皇国皇子イヴァン・カイ・アローとローザリア公爵家ローズ・ロレーヌ・ローザリアの婚約を破棄する。そして、私、アロー皇国第二皇子イヴァン・カイ・アローは真に王妃に相応しき、このカーター男爵家令嬢、ティルナシア・カーターとの婚約を宣言する」
婚約破棄モノ実験中。名前は使い回しで←
うっかり2年ほど放置していた事実に、今驚愕。
家出した伯爵令嬢【完結済】
弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。
番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています
6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる