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ホワイトライツ 兵士の称号
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話はちょうど一週間前にさかのぼる。
「おいアルバート、最近こう~~何だか周辺がざわざわしてないか?」休憩中お茶を飲んでいたアーサーがそう言いながら話しかけてきたのが最初だった。
ここは王宮内にあるホワイトライツ専用の詰め所である。
この国の近衛兵団の中でも抜きん出ているエリートを身につけている制服の色から「ホワイトライツ」と呼ばれ他の近衛兵と区別されていたりする。よくある話で「戦闘において決して汚さぬ白」と言う所らしい。
その時俺は一週間後に控えた『海の花嫁』の公演のために国外からの来賓の警備の打ち合わせをしていた。
俺たちの上司はすでに概要を作ってきており、それを元にスケジュールに合わせての警備の流れを説明した。話し終えると俺とベッテルに「まぁ詳しくは概要をよく読んどいてくれ。僕はこれから他国の警備の連中と打ち合わせがある。打ち合わせ次第で君らのスケジュールは調整する」と言って部屋から出ていった。
概要を流し読みしながら「・・・・変ってなんだよ?」と先にアーサーに噛み付いたのはベッテルだった。
彼はいわゆる剣豪と呼ばれる男で俺と並んで軍の中で一、二を争っている。生家がもともと軍人家系で彼自身厳しく育てられてきた。俺は剣士出身だが真剣にやったら彼に勝てる自信はない。
「ここだけの話なんだが、奴らが俺たちのテリトリーにやたら踏み込んできてるんだよ」と神妙な顔でアーサーが話した。
「・・・・特捜部か」俺は二人を見ながらそう話すとアーサーは首を縦に振った。
俺たちは近衛兵団に所属しており主に王宮周辺の安全管理を仕事にしている。もちろん要人警護の時もあれば単なるパトロールしているだけの時もあったりとさまざまだ。近衛兵団はいわゆる軍部の花形の部署と言っても差し支えなかった。
そして軍内部でも伏せられている組織がある。
この組織の存在は近衛兵団の中でも我々「ホワイトライツ」しか知らされていない。もちろん上司から多少は聞けるがわかる範囲なんて高が知れている。
いわゆる我々軍人や王宮関係者などの捜査をする事が出来る権限を持つ陛下直属の部隊であるらしい。と言う事ぐらいしか知らない。活動内容も所属メンバーも極秘中の極秘だ。聞けば一旦特捜部に入ると任務中は自分の家族との接触も難しくなり満足に自宅へ帰ることも出来なくなるらしい。
よって特捜部のメンバーに選ばれる人間は本人の背後関係を隈なく調べられ、人間関係のしがらみを持たない貴族ではない者も名を連ねているらしい。
もちろんその腕前は噂によると我々「ホワイトライツ」に勝るとも劣らないと聞く。
「・・・・あぁ、久しぶりに子供たちのダンスでも観たいなぁ」と頭の後ろで手を組み、椅子に座って背もたれに背中を預けたアーサーがポツリこぼした。
「あの子たちのダンスってなんだかほっこり癒されるんだよねぇ。子供ってやっぱり良いよね?僕、結婚しようかな?」なんて話している。
ーーーーお前何言ってんだよ!俺とベッテルは知ってるぞ?お前はそう言ってるが心に秘めた幼馴染の女の子になかなか告白できない腰抜けだと言う事を。
「まぁ子供のダンスはともかくとして『アルテミスを始めこの国のシアター周辺が何だかおかしい』と俺は前から言ってるだろ?」と二人の前でそう言った。
パトロールを強化しているのも少し前からアルテミスを筆頭に国内のいろんなシアターのメンバーの消息が不明になってると聞いているからである。
最近街で出会った「ユミリー」と呼ばれるシアターのメンバーも後をつけられていた。それも只者ではなかった。あれは俺たち同様訓練を受けた男だった。でもその日の二度目に彼女を見かけた時には三人の男に絡まれていた。最初の時の男とは違う。この子一体何者?何かしたのか?何か多数の人間に恨まれてでもいるのか?
それにこの三人の男たちは素人同然だった。「顔をメチャクチャに」って普通は口に出して言わない。と言うことはこの三人の男たちは誰かに依頼されて彼女に危害を加える為にあそこに居たってことだ。
そんな話をしていた時に「アルバート准将!貴方にお手紙です。と秘書官から一通の手紙を受け取った。
差出人はカイルとだけ書かれていた。差出人に心当たりがないので封筒をひっくり返したりしてみたが特に仕掛けも何もなく、封を開け読んでみるとその内容は陸軍上層部関連の裏の商売の話だった。
この件で特捜部はほぼ証拠を手中にし、今回のことは陛下の耳にも入っているとあった。そして特捜部の捜査にユミリーというシアターの女性が極秘で協力している事が書いてあり、ユミリーが御前公演とレセプションの間に陸軍大将のウイル大将の部屋に証拠を取りに行く手筈になっていると記してあり文末には陛下の刻印が押されていた。
「・・・・・こういう事だったんだな」そう言いながらアーサーとベッテルにも手紙を見せ協力を頼んだ。身内の捜査だから極秘とし、とにかくこの件は一旦は我々だけで対処しようと決めた。ただ直属の上司一人だけには話しておいた。もし何かあった時に融通をつけやすくするためだ。
アーサーたちは大至急手紙の裏を取ると公演当日の警備担当表を見直して、俺たちがある程度の時間だけは自由に動けるように上司に掛け合い取り計らってくれた。
「おいアルバート、最近こう~~何だか周辺がざわざわしてないか?」休憩中お茶を飲んでいたアーサーがそう言いながら話しかけてきたのが最初だった。
ここは王宮内にあるホワイトライツ専用の詰め所である。
この国の近衛兵団の中でも抜きん出ているエリートを身につけている制服の色から「ホワイトライツ」と呼ばれ他の近衛兵と区別されていたりする。よくある話で「戦闘において決して汚さぬ白」と言う所らしい。
その時俺は一週間後に控えた『海の花嫁』の公演のために国外からの来賓の警備の打ち合わせをしていた。
俺たちの上司はすでに概要を作ってきており、それを元にスケジュールに合わせての警備の流れを説明した。話し終えると俺とベッテルに「まぁ詳しくは概要をよく読んどいてくれ。僕はこれから他国の警備の連中と打ち合わせがある。打ち合わせ次第で君らのスケジュールは調整する」と言って部屋から出ていった。
概要を流し読みしながら「・・・・変ってなんだよ?」と先にアーサーに噛み付いたのはベッテルだった。
彼はいわゆる剣豪と呼ばれる男で俺と並んで軍の中で一、二を争っている。生家がもともと軍人家系で彼自身厳しく育てられてきた。俺は剣士出身だが真剣にやったら彼に勝てる自信はない。
「ここだけの話なんだが、奴らが俺たちのテリトリーにやたら踏み込んできてるんだよ」と神妙な顔でアーサーが話した。
「・・・・特捜部か」俺は二人を見ながらそう話すとアーサーは首を縦に振った。
俺たちは近衛兵団に所属しており主に王宮周辺の安全管理を仕事にしている。もちろん要人警護の時もあれば単なるパトロールしているだけの時もあったりとさまざまだ。近衛兵団はいわゆる軍部の花形の部署と言っても差し支えなかった。
そして軍内部でも伏せられている組織がある。
この組織の存在は近衛兵団の中でも我々「ホワイトライツ」しか知らされていない。もちろん上司から多少は聞けるがわかる範囲なんて高が知れている。
いわゆる我々軍人や王宮関係者などの捜査をする事が出来る権限を持つ陛下直属の部隊であるらしい。と言う事ぐらいしか知らない。活動内容も所属メンバーも極秘中の極秘だ。聞けば一旦特捜部に入ると任務中は自分の家族との接触も難しくなり満足に自宅へ帰ることも出来なくなるらしい。
よって特捜部のメンバーに選ばれる人間は本人の背後関係を隈なく調べられ、人間関係のしがらみを持たない貴族ではない者も名を連ねているらしい。
もちろんその腕前は噂によると我々「ホワイトライツ」に勝るとも劣らないと聞く。
「・・・・あぁ、久しぶりに子供たちのダンスでも観たいなぁ」と頭の後ろで手を組み、椅子に座って背もたれに背中を預けたアーサーがポツリこぼした。
「あの子たちのダンスってなんだかほっこり癒されるんだよねぇ。子供ってやっぱり良いよね?僕、結婚しようかな?」なんて話している。
ーーーーお前何言ってんだよ!俺とベッテルは知ってるぞ?お前はそう言ってるが心に秘めた幼馴染の女の子になかなか告白できない腰抜けだと言う事を。
「まぁ子供のダンスはともかくとして『アルテミスを始めこの国のシアター周辺が何だかおかしい』と俺は前から言ってるだろ?」と二人の前でそう言った。
パトロールを強化しているのも少し前からアルテミスを筆頭に国内のいろんなシアターのメンバーの消息が不明になってると聞いているからである。
最近街で出会った「ユミリー」と呼ばれるシアターのメンバーも後をつけられていた。それも只者ではなかった。あれは俺たち同様訓練を受けた男だった。でもその日の二度目に彼女を見かけた時には三人の男に絡まれていた。最初の時の男とは違う。この子一体何者?何かしたのか?何か多数の人間に恨まれてでもいるのか?
それにこの三人の男たちは素人同然だった。「顔をメチャクチャに」って普通は口に出して言わない。と言うことはこの三人の男たちは誰かに依頼されて彼女に危害を加える為にあそこに居たってことだ。
そんな話をしていた時に「アルバート准将!貴方にお手紙です。と秘書官から一通の手紙を受け取った。
差出人はカイルとだけ書かれていた。差出人に心当たりがないので封筒をひっくり返したりしてみたが特に仕掛けも何もなく、封を開け読んでみるとその内容は陸軍上層部関連の裏の商売の話だった。
この件で特捜部はほぼ証拠を手中にし、今回のことは陛下の耳にも入っているとあった。そして特捜部の捜査にユミリーというシアターの女性が極秘で協力している事が書いてあり、ユミリーが御前公演とレセプションの間に陸軍大将のウイル大将の部屋に証拠を取りに行く手筈になっていると記してあり文末には陛下の刻印が押されていた。
「・・・・・こういう事だったんだな」そう言いながらアーサーとベッテルにも手紙を見せ協力を頼んだ。身内の捜査だから極秘とし、とにかくこの件は一旦は我々だけで対処しようと決めた。ただ直属の上司一人だけには話しておいた。もし何かあった時に融通をつけやすくするためだ。
アーサーたちは大至急手紙の裏を取ると公演当日の警備担当表を見直して、俺たちがある程度の時間だけは自由に動けるように上司に掛け合い取り計らってくれた。
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