10 / 35
狙われたキス
しおりを挟む何回かパンのおかわりもらってお腹がいっぱいになった。
デザートも最高だった。大好きなサンダルのいっぱい入ったムースにバニラのアイスが添えてあった。もうそれだけでご機嫌。
「しっかし、お前本当に美味そうに食うなぁ。男でもそれだけ美味そうに食べる奴なかなか居ないぞ?」カイルはそう言ってチェックを済ませると店を出て二人並んで歩き出した。
「デザートは別腹なんです。異世界に行くんです」どうせ酔ってるし。ふん!真面目に言ってやったわ。デザートは私のお腹の中で皮下脂肪という形で異世界転生するのだ。
「ははっ、お前酔っ払うと面白いんだな」カイルが破顔している。やめてよね、酔っ払った心臓にイケメンの笑顔は悪いんだからね。
ふいっと横向くと「おいどうしたんだ?気分でも悪いのか?」って言ってきた。
思わず顔をあげると間近にカイルの顔があった。そして一瞬でキスされていた。腰に手が回され逃げたくても逃げられない。後は壁だ。体を突き放そうとするが強い力で抱きすくめられて声が出ない。
ようやく唇が解放され目が合うと「俺は前からお前が好きだ。おそらくお前が思っているずっと前から。だから謝らないしこれからもっと態度で表していくからそこんとこよろしく!」そう言ってニヤッと笑った。
ユミリーがあまりの展開の速さに何も言えず口をパクパクしていると、「もう遅いし送っていくよ。さぁ行くぞ」そう言ってユミリーをエスコートして歩き出した。
慣れている。この男慣れすぎてやしないか?
訝しがるユミリーを横目にさっさと部屋の前まで送り届け「じゃあお休み。早く寝ろよ」と言って帰っていった。
部屋に入るとキャルがベッドでゴロゴロしている。「おかえり~。ユミリー飲んできたの?顔真っ赤じゃん」と言って笑っている。
「うん・・・」それだけ言い返しシャワーを浴びに浴室へ向かった。ノロノロと服を脱ぎシャワーを浴びながら唇に触れる。
・・・・私のファーストキスだったのに。でも拒めなかった。そんな自分が自分で信じられない。もしかして私って男日照りだった?
でも・・・・酔っ払った勢いでキスしないでよ!!本当ひどいわ。もう今日は寝る。
明日はオフだし孤児院に行く日だ。
子供たちと遊んで気持ちを切り替えるのよっ!
◇◇◇
いい天気だ。ダンス日和ってこんな日を言うのよ!と思いながら歩いている。もちろんこの世界にだってそんな天候はない。
今日は教会で子供たちがダンスを披露する日だ。教会に着くとダンスには教会内では狭いので外に作って貰ったステージが見えてきた。
ステージといってもまぁたかが知れてるけど・・・・。
今回の披露に向けて結構難しいステップを組み合わせてダンス構成をまとめてある。曲も楽しいアップテンポの曲なので見応えがあるはず。
先日ちょっと見た感じは不安要素はあるけど子供たちならやってくれると信じている。今回は初めて一番上手い子にセンターパートを任せてみたのだ。
黒人の女の子だったんだけどすごく張り切ってた。もともとリズム感も良かった。背が高く手足が長い子で振り付けも映える。めちゃくちゃカッコいい。
歩きながら「ムフフ~」と声が出たので思わず周りを見てしまったのはご愛嬌。
教会へ向かうと大勢の人たちがステージ前にいる。こそこそと教会に入り控室の子供たちの元へ向かう。子供たちを見るとみんな一斉に「ユミ先生~」と言って側までやって来た。
「おはようみんな?昨日はよく眠れた?ご飯はしっかり食べた?」と尋ねるとセンターパートを任せた子が「うん、みんな昨日は早く寝たし体調はバッチリだよ!」と笑っていた。
いつも教会でこの子供たちのダンスを担当してくれているシスターが「皆さん、ユミ先生も来手くれた事だしそろそろ始めましょうか?」と言って声をかけてきた。子供たちの表情が一気に引き締まる。
「じゃあ先生は外で見てるね。大丈夫よがんばってね?」と声をかけ外の観客席へ向かった。隅っこに陣取るとそっと席に座った。ここからは子供たちとシスターの出番だ。
シスターが今回のテーマを紹介するとピアノが伴奏を始めた。
それに合わせて聖歌隊が歌い始めるそれに合わせて子供たちが呼吸を合わせ踊り始める。
うん、今のところは順調順調。そうそうその調子よ。このまま突き進んでいけっ!そう思った時だった。
センターパートの子の振り付けが一瞬抜けた。本人の顔色がさっと曇った。でも大丈夫、これぐらいなら観客にはバレてないと思う。
曲が終わり一同きれいに整列しておじぎした。子供たちがたくさんの拍手を浴びている。私は席を立つと子供たちを労うために再び教会に入る。
その途端だった。
「どうしてあんな所でトチるんだよ!!」と一番年長の男の子が叫んでいた。急いで部屋に入るとセンターを任せていた女の子が部屋の中央に立ちすくみポロポロと悲しそうに泣いていた。
他の皆んなは何も言わず取り囲んで固唾を飲んでこの事態を見守っている。
「よしなさい!!」とその間に入ると「ユミ先生っ!!」とセンターパートを任せていた子が泣きついてきた。その子の頭を撫でながら「先生見てたけど、誰も気が付いてなかったよ。大丈夫。うまかったよ?」と溢れる涙を拭いてやる。
「でも先生、練習は上手く行ってたんだ。本当に上手く行ってたんだ。なのにちくしょう・・・・」怒っていたはずの男の子も涙声だ。全くどっちが悪いのかこれではわからん。いやどっちも悪くはないんだけど・・・・
「皆んなちょっと集まってくれる?」と声をかけみんなを集める。そしてかがみ込み子供たちに目線をじっと合わせる。
「・・・・私、ちゃんと最後までみんなを見てたよ。正直言ってこんなに上手く行くとは思わなかったぐらいよ?」
子供たちがまさかそんなことを言われると思ってなかったのか、きょとんとした顔で見ている。ん~可愛いわぁ。
「えっ、だって今回は新しい事に挑戦してるんだよ?間違っても仕方ないんじゃない?だってもう終わったし参列者の皆さんすっごく喜んで寄付して行ってくれてたわよ?
・・・・・今回はね、まず間違えてしまう事もあるって覚えといて欲しいんです。だから今日よりも明日。明日よりも明後日。ダンスだけでなくしっかり後悔のない一日を過ごしてください。そうしたら失敗しても悔しくないでしょ?」と言って一人ずつ抱きしめながらくりくりと頭をなでていった。
その姿をまさかアルバートたちが後ろからじっと見ていたとは知らず。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
英国紳士の熱い抱擁に、今にも腰が砕けそうです
坂合奏
恋愛
「I love much more than you think(君が思っているよりは、愛しているよ)」
祖母の策略によって、冷徹上司であるイギリス人のジャン・ブラウンと婚約することになってしまった、二十八歳の清水萌衣。
こんな男と結婚してしまったら、この先人生お先真っ暗だと思いきや、意外にもジャンは恋人に甘々の男で……。
あまりの熱い抱擁に、今にも腰が砕けそうです。
※物語の都合で軽い性描写が2~3ページほどあります。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる