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独立国家アーガイル
しおりを挟む最近の晴天続きは人々の予想通りこの日も晴天だった。そして今日のこの日の空は王宮から放たれる祝砲が色鮮やかな紙吹雪を撒き散らし青空を彩っていた。
「この調印式を持って我が国アーガイルは旧ハリストン国からの独立を宣言する。」そう声高らかに宣言する声が街の大広場に響き渡ると、唸る様な歓声と大きな地鳴りの様な拍手が巻き起こった。
人々は笑い喜び、家族は抱き合い、恋人同士はキスをしていた。街角では号外が配られている。
「そして今回この独立に関して多大なるお力添えを頂いたシュレーゲル国王太子ランスロット・シュレーゲル殿下に盛大な拍手を!!」その掛け声で更なる熱狂の渦が出来上がっていく。
ランスロットは立ち上がり聴衆の声に手を振り答えた。
そしてその華やかな舞台の裏側で1人の男が牢屋の中で息絶えていた。
イザークである。死亡理由は原因不明とされ遺体は内密に処理された。また拘束されていた2人の息子と妻は後のサラの供述で無関係とされお咎め無しとなった。その後の彼らの消息は不明である。
ーーお母様、お母様何処にいるの?私は辛い事が多くてもうここにいるのは嫌なの。お母様、そちらの世界へ私も連れて行って下さい。人が死ぬのは嫌なの。私を害されるのも嫌なの。
お母様どうして私1人置いて行ったの?ーー
あれから眠り続けるサラの目から涙が流れた。ちょうど丸2日間、サラは眠り続けている。サラの手をランスロットが握りながらタオルでサラの涙を拭いた。
「ランスロット様、サラ様はこうして眠る事で傷ついた心を癒しているんだと思います。どうか辛抱強く温かく見守ってあげて下さい。」と軍の専属医の診断が頭に残っている。
眠り続けるサラの手を取り口付けをすると、その手を両手で握った。「あの夜、直接私が貴女を玄関へ迎えに出ていたなら。」と呟いた。
「あれほど強く貴女の側に居たいと思ったが、こんな形で叶ってしまうのは、あまりも。。」ランスロットがそう呟いた時サラの動く気配がした。
視線をサラの方へ目を向けると、サラは目を開けてランスロットを見ていた。そしてにっこりと笑ったのだ。
「あっ、ランスロット様がいるわ。こんな所にいる訳ないわね、きっとこれは夢なのね。私が夢でも会いたいって思ったからきっと神様が叶えてくれたのね。」とはきはきと話している。
「あぁ、良かった。今日は何か良い事有るかも。」と言って無邪気にランスロットの心を掻き乱すと再び眠った。
「なっ、何だ今のは。私も夢を見ているのか?サラは今なんて言ったんだった?」思わず顔を覆ってしまった。嬉しさと恥ずかしさのあまり。
普段無口な人間がはきはきと好意を告げるその破壊力を初めて知ったランスロットだった。
「早く目を覚ましてくれ、サラ。貴女に話したい事がたくさん有るんだ。そして貴女と1日でも早く一緒になりたい。」そう話すと自分の服のポケットから指輪を取り出しサラの指へ填めると眠っているサラに口付けを落として部屋を後にした。
結局サラは次の日の昼下がりに目を開けた。
幸か不幸かあのイザークに襲われた時の記憶が飛んでいる様だ。
ランスロットはノイマンを始めサラの周辺全体に箝口令を引き、あの時の話しをサラの耳に入れない様にした。それで良い、これ以上サラの精神に負担を掛けたくない。ランスロットはそう考えている。そしてこの機会はちょうど良い。
「あっ、あの。。。。ランスロット様」
「どうした?サラ。」
ここはシュレーゲルへの帰りの馬車の中だ。
アーガイルから出国する時に宿から馬車が出る際に
「サラは私とこちらだ。」とサラの手を引くとさっさと自分の馬車へ乗せてサラを座席に座らせると自分もその隣に座ったのだ。
「サラは私と一緒でなくてはダメだ。まだ本調子では無いからね。」とランスロットが笑いながらサラに言った。確かにランスロットの乗る馬車が1番大きいのでゆったりと乗れる。
ただ、ただ、私の心臓が持たないのよー!こんな狭い空間でランスロット様と2人きりなんて!!とサラの心が叫んでいる。
「サラ、お茶はどうだい?」と隣でランスロット様が聞いている。「私がやります。」と言っているのに「サラは病み上がりだ。じっとしてて?」と微笑みながら言われてしまい頬を赤らめると恥ずかしさから目を伏せた。
優雅な手付きでお茶の用意を始めたランスロットに「あの、ランスロット様この指輪は?」と自分の手元を見ながらサラが話し出した。
「それは私の亡くなった母の遺品だ。君が持っていてくれると嬉しい。もちろん普段は外して貰ってても構わない。」目線をサラに合わせる事無くお茶の用意を進めている。馬車の中だと言うのに器用だ。
「そっそんなの困ります。この様な大切な指輪はこれからランスロット様の伴侶になる方に渡すべきです。」と指輪を外しかけたが、「だからそうしたんだ。」とあっさり言われた。
「サラ良い機会だ、少し話をしようか?君はあの時の事は覚えているかい?」とランスロット様が意味ありげに私に話しかけると、慣れた手付きでサラにお茶の入ったカップを渡した。
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