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【間話】ココの秘密?
しおりを挟む「マイク様、すいませんがここからここまで耕してもらえませんか?」
ココさんが鍬を僕に手渡して場所を指差した。
「あぁ、いいですよ。じゃあここは任せてください。ちなみにここには何を植えるんです?」
「え~っと、ここにはキャベチとキャコットと出来ればセリリーなんかが植えられるといいなって思います。」と言いながらココはマイクににっこり微笑んだ。
ココのふわふわとした亜麻色の髪がそよ風に揺れ、温かい日差しを反射した大きな瞳がキラキラしていた。
(やっぱりかわいいや。うん、本当かわいい。こんな子が僕のお嫁さんになってくれたらなぁ~)
マイクの鼻の下はのーびのびのデレデレである。
今日はいい天気だ。朝ごはんのあとココから野菜の植え付けを手伝って欲しいと頼まれた。
「マイク手伝ってやれ」とオズワルド様も許可してくれた。
手渡された鍬でせっせと耕していく。流れる汗が心地いい。
(フランキー先輩はキャリーさんと一緒に役場に行き新年度の予算をもぎ取りに行った。直接フランキー先輩が役場の人間相手に直談判することは無いにしろキャリーさんの後ろで睨みつけてたら予算を通しやすいかも知れない。)
せっせと鍬で畑を耕しながらそんなことを考えていた。
(しかしひとつ気になっている事があるんだよなぁ。オズワルド様ってあんなに女性にマメな人だったっけ?今でもスクナさんと一緒に買い出しに出かけてるし、手が空いてると大概スクナさんの側で料理の下ごしらえを手伝ったりしてるもんなぁ・・・。)
「マイクさん、ねぇ!マイクさん!!」とココから声をかけられるまではマイクはそんなことを考えながら耕していた。
だから僕は遅れてしまったんだ。まわりを見るのが。
気がつけば、立ち上がると2.5メートル以上ある大きな熊を至近距離で見る事になろうとは・・・・
「マイクさん。熊です。私たちから数メートルのところに熊がいます。どうしよう・・・・」とココがマイクの上着の裾を引っ張っている。
「ココさん大丈夫。僕の後ろに下がってて?」とココを背後に隠した。しかし熊は気が立っているのか少しずつ少しずつマイク達に近寄ってきた。
どうする?どうするマイク?お前の剣は教会の部屋の中だぞ?
マイクは鍬を放り出すと、辺りを見渡し手頃な石を探し出した。2~3歩ほど体の位置をずらし石を手に入れた。その間にも熊はマイク達の方へ近寄ってくる。
「マイクさん、逃げましょう。」とココは言うがたぶん背を向けたら襲われる。
「いや、かえってまずいです。このまま後ずさりながら様子を見ましょう。」とココを背に隠したまま少しづつ、少しづつ後ろへ下がって行った。
しかし今日のマイクは運が悪かった。ある所まで下がった瞬間、自分の足元に使っていた鍬があったのだ。
「あっ!!」とゆっくりスローモーションのように倒れ込むマイク。すかさず体を大きく見せマイクに襲いかかろうとする熊。
「マイクさん!!!」とココの叫び声を聞いたのが気を失う最後の記憶だった。
「マイクさん!マイクさん!しっかりして下さい。」とマイクは体を揺すられると目を覚ました。
「ココさん、大丈夫でしたか??熊は?熊はどこ行ったんです!!」ガバッと起き上がりキョロキョロ見渡すが、熊らしい物はどこにもない。少し地面に血が付いているだけだ。
「大丈夫です。熊は先ほど村の方に退治されました。マイクさんが無事で良かったです。」と涙ぐんでいた。涙を拭くその手には血が滲んでいた。
「ココさんおけがを・・・・」と言ってハンカチをポケットから出そうとしたが「大丈夫です。これぐらい。」と手を押さえ笑っていた。
その日は無事に野菜の植え付けを終わらせることができた。そして次の日からしばらく夕食に熊の肉が出された。
「お裾分けで頂いたんですよ。皆さんたくさん食べて下さいね!」とココは笑っていたがスクナとキャリーが微妙な表情をしていたのはきっとシスターだから熊の肉が食べられないからだとマイクは勝手に思った。
マイクたちは知らなかった。
今自分たち食べているその肉は、熊がマイクを襲ってきた際に気絶したマイクを助けてココが熊のアゴに鋭い一撃を与え、一発で仕留めた肉だと言うことを。
スクナとキャリーは知っていた。
ココは生まれつき怪力を持っているハードパンチャーであり、ココにその技術を教え込んだのがクロエ修道院長だと言うことを。
『あんなに美味しく食べてるんだもの。余計な事は言わないほうがいいよね。』2人は目配せしてその日の夕食を終えた。
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