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⑫騎士様達との共同生活の始まり
しおりを挟む「クロエ修道院長、こちらのご事情はわかりました。私たちがここにいる以上責任を持って警備にあたります。ご安心を。そしてひとつだけお願いがあります。」
「まぁ、それはどう言った??」
「私たちの部屋へ入られるのはもちろん構いません。が、荷物にはたくさんの武器が入っております。私たちの荷物に触れる時は念のため我々の誰かにお伝え頂けると助かります。シスター達に要らぬお怪我をされても気の毒ですし。」と苦笑いした。
「まぁ、そんな事が。分かりました。私の方からシスター達には徹底させますわ。」と話すとオズワルドはにっこりと笑い部屋を出た。
「ココ、マイクさん。この場所をお2人に任せても良いかしら?そろそろ夕食の準備がしたくて。」と床を掃き終わったスクナが2人に声をかけた。
「「大丈夫です!」」と2人が声を揃えた。
「まぁ、気の合う事ですね。ではここはお任せします。」と言ってスクナは掃除道具を片すと調理室へ向かって歩き出した。
途中の食糧庫で小麦粉を大量に持ち出す。これから夕食用のパンを仕込むのだ。
『酵母は確かまだたくさんあったよね??』と呟きながら重い袋をヨイショと運ぶ。
『明日の朝の分もこの際だから仕込んでおきたいし、卵ももっと必要ね。明日は買い出しにも出かけよう。』
そんな事を考えていたら腕がスッと軽くなった。「えっ?」と目の前に立っていた人を見るとオズワルドだった。
「あっ、あの・・・すいません。」
「大丈夫ですよ。これぐらいは朝飯前です。どこまで運んだら良いですか?」とスクナに聞いて来る。
「ええっと、あの角を回ってすぐの調理室です。ありがとうございます。」と言葉をかけた。
幸いこの場所から調理室へはそんなにかからない。荷物を下ろしたオズワルドに対してスクナは、
「本当にありがとうございました。」とお礼を述べると「これから夕食の準備ですか?」とオズワルドが聞いてきた。
「はい、これからパンを仕込みます。夕食だけでなく朝食にも頂けるようにたくさん仕込みます。」そう話すとスクナはぎこちなく笑った。
オズワルドが飛び抜けた美形なので気後れしているのだ。
「良かったらお手伝いしますよ?実は遠征でも私たちが食事の用意をする時があるんです。私も奴らも料理はひと通りできますよ?」と言ってスクナに笑いかけた。
(あぁ~イケメンの笑顔って破壊力抜群なのね。初めて知ったわ。)
「・・・ではパンを捏ねる作業をお願いしても良いですか?最初の生地は私が作りますので・・・。」
「もちろん構わないです。力を使う事なら任せてください。」そう言ってオズワルドは両腕を腕まくりした。
(凄い筋肉。・・・こんなの初めて見た。)
パンッ、パンッ。
調理室からリズミカルにパン生地を捏ねる音がする。
やはりオズワルドは男なんだとスクナはその様子を見て思った。スクナが捏ねる時より遥かに早くまた大量のパン生地が出来上がっていくのだ。
「ありがとうございました。オズワルドさん。もうここまでで大丈夫ですよ?助かりました。」とスクナは礼を言った。そうやって話しつつも手は休めない。
ベンチタイムの後は直ぐに成形に入るのだ。
しかしオズワルドは黙ってスクナの隣に並ぶと同じように生地を成形し始めた。
たちまちたくさんのパンの成形が済み、それをスクナが生地が乾燥しないよう濡れふきんを掛け温かい場所へ置いた。
ここでは焼き上げはピザ窯のような感じで木のトレーにパン生地を乗せると窯の中へそっと置き、ぷくぅ~と色づき膨らんで来たら完成だ。
スクナは最初の分が焼き上がるとひとつ手に取りパカっと割ると片方をオズワルドに渡した。
「熱いですよ?おひとつどうぞ?」と言って微笑んだ。
「ありがとうございます。では頂きます。これぞ制作者の特権ですね?」
そう言いながらもパンを千切ってひと口食べだ。その瞬間オズワルドの目が大きく開かれスクナをジッと見ていた。
「美味しいですか?お口に合いましたか?」
笑うスクナ。そう言いつつスクナもひと口齧ると「あぁ~おいひい~。」と味わい、恥ずかしげにオズワルドを見た。
「ぷっ。スクナさんでしたか?面白い方だ。」とオズワルドが笑った。
「えっ??今のどこが??」
「いえいえ、私には3歳だったかな?甥っ子がいるんです。スクナさんの食べているのを見て甥っ子を思い出しました。」
「酷いですよ!私、子供じゃ無いです。」と言って怒ったが、にっこりと笑うイケメンになす術もなく次のパン作りに取り掛かった。
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