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23、ソフィアの機転

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ヨハンがソフィアに気持ちを告げてから1ヶ月ほど経った。すでにきな臭い雰囲気が漂ってきているのでヨハンたち騎士団の幹部は連日詰め所で待機中だ。


そしてその瞬間は真夜中の訪問者によってソフィアに告げられた。数羽の鳥たちによって。

『分かった、教えてくれてありがとう。』そう話しバルコニーにエサを撒いてやった。そして鳥たちに手紙を持たせ送り主に大至急届けるように頼んだ。


・・・・・・リカルドからもらった指輪がここまで役に立つとは。奴め最初から分かってたのか?



鳥たちを見送ると部屋のクローゼットの中のドレスから一番見栄えの良いドレスに着替え、アマデウスの剣を手に取った。部屋から出て静かに歩き出した。行き先はセバスチャンの部屋だ。

ノックの後ドア越しに「セバスチャン様遅くに申し訳ありません。ソフィアです。どうかそのままお聞きください。」と話し出した。


「先ほど国境を越えアルファザード騎士団と思わしき集団が侵入したと連絡がありました。そして侵入者は2手に分かれているようです。片方は数百人、一方でもう片方は百人程度だと思われます。その事を騎士団詰め所で控えていらっしゃるヨハン様に大至急お知らせください。」


そう話すとドア越しにセバスチャンの声がした。

「・・・・・・ソフィア様はどうされるおつもりですか?恐らくヨハン様は・・・・・・。」


「私は10名ほど別働隊としてヨハン様から腕の立つものをお借りして居ますので百人規模の方へ向かいます。残りはこちらの騎士団の方で処理をお願いします。では失礼します。」そう話すと急いで玄関に向かった。


そこには一見高貴な貴族とわかる馬車が停められていた。そしてその馬車の側にはヨハンがソフィアの命を守るべく選出した騎士団の中でも手だれのもの達が控えていた。それぞれ彼らの手には先ほど鳥たちが持って飛び立った手紙を握っている。


「皆の者。いよいよその時が来ました。我々の役目はアルファザード騎士団の別働隊の足止めです。作戦は先日お知らせした通りです。私の指示が出るまでは手出しは無用。分かりましたね?」

「ソフィア様、私たちは貴方のことを何一つ知りません。全てはヨハン団長の指示に従って貴方様と行動を共にします。しかし百人規模の足止めをするにはこの人数ではあまりに足りないのでは?ましてや我々の武装は殆どない状態です。」中でもリーダーらしき男がソフィアに問いかけた。



「そうよね。不安に思うのはよく分かるわ。でも、そうは言ってられないわよ?敵は国境を越えてきてるからね。さぁ、私たちは奴らの足止めに向かうわよ。場所は分かっているわね?そろそろ出ましょう。奴らが山道に手こずっている間に罠を仕掛けて街への侵入を防ぎたいから。」そう話すと馬車に乗り込んだ。


目的地はここからだと2~3時間ほどかかる。ちょうど奴らが山道を抜け出す頃だ。そこに罠を仕掛ける。








「ここで良いわ。さぁ馬車を倒して?」とソフィアが他の者に指示を出している。ソフィアはその間に山の方へ向かって鳥を飛ばしていた。

数羽帰ってきた。それぞれの言い分を聞く。

『分かったわ。教えてくれてありがとう。もうすぐアルファザードの方々にお会いできそうね?実戦は久しぶりだから嬉しいわ。ワクワクしちゃう。』そう話しながらも鳥たちにご褒美の木の実を与える。


そしてついに山中を抜け出したアルファザード騎士団の一行が見えてきた。

ソフィアはたった1人でその前に立ち塞がった。


「すいません、馬車が野盗に襲われてしまって。」と優雅にカーテシーをしながら先頭の男に話し出す。


「なにぶんこんな時間です。倒された馬車が道を塞いでおりますし私も一刻も早く屋敷に帰りたいのです。申し訳ありませんが少し手を貸していただけませんでしょうか?」


そう話すと奥からこの騎士団のリーダーらしき男が出てきた。なかなか若い。ヨハンとそう歳が変わらないかも知れない。


「美しいご婦人。我々も先を急いでいる。分かった馬車を起こす手伝いぐらいはさせよう。しばし近くで待たれよ。」そう話し近くのものにソフィアが乗ってきた馬車を起こさせようとしたその時、

ソフィアはドレス姿のままゆっくりと微笑みながら「ありがとうございます。」と話すとそのままアルファザード騎士団に近づき全ての馬たちに『この先は危険だから今すぐ来た道を戻るように。』と話した。


その場にいたアルファザード騎士団が驚いた瞬間、そのタイミングでヨハンから借りていたヤプール騎士団10名は奇声を発し大きな松明を振りかざしながら大きな音を立てて襲いかかった。

パニックを起こした馬は主を乗せたまま来た道を走り出し山道を駆け上がり帰って行った。残りの徒歩の兵士たちは、実力から言ってソフィア達の敵ではなかった。


ソフィアは馬に乗った騎士たち。いわゆるこの集団の実力者たちを無傷で追い払ったのだ。パニックを起こした馬たちはしばらく使い物にならないだろう。



アルファザード騎士団が蜘蛛の子を散らすように逃げ出したのを確認すると、「さぁ、私たちも本隊に合流しましょう。」そう話しヤプール騎士団本隊が戦っている場所へと急いだ。












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