19 / 32
18、アルト王子とアンネリーゼ
しおりを挟む「アルト、アレの調子はどうだ?」
「えぇ父上、中々良くやってますよ?仮にもわたしの婚約者として側においてるのですから上手くやってもらわないと困りますしね。」
「アルファザードの呪いをあの娘にかけられたのは良かった。まぁ、両親の命がかかってたら必死にもなるよのう。我が息子ながら恐ろしい奴だよお前は。」
「まぁ、本番までにはもう少し使えるようにしますよ。なんせ全てを癒す聖女様ですからね。兵士の士気を高めるには打ってつけです。」
「ファースト家にはもう1人男の子供がいたそうだが不慮の事故で亡くなったと聞いている。その子が生きてたらこの計画は難しかったかもしれん。」
「はい父上。天は我々に見方しているのですよ。次の戦いでは必ずヤプールを取りましょう。その頃には婚約者殿は人前には出られない身体でしょうから私には都合が良いと言うものですよ。では父上、私はこれから美しいアンネリーゼの元へ顔を出すとします。」
「おいアルト、まだこれから聖女様に頑張って貰わなければならないんだから目立つ事はするなよ?」
「もちろんですよ父上。わたしの計画に油断はありません。」
「分かってるか?アンネリーゼに呪いを受けさせたくないからってわざわざファースト家に濡れ衣を着せあの娘に呪いを受けさせているのを忘れるなよ?」
その言葉には答えずアルト王子はにっこり笑った。そして父親である国王に一礼し部屋から出た。そのまま王宮内を歩き隠し通路を通ると、その先に止めてある馬車に乗り込んだ。
もちろん行先は幼馴染でありアルト王子の想い人のリビング伯爵家のひとり娘アンネリーゼの元である。
「私の計画に抜かりはない。ヤプールを手中に納めアンネリーゼと新しい国を作る。」そう呟くと御者に馬車を出すように伝えた。
◇
「アルト王子様。お会いしたかったです。私、すごく寂しかった。」
伯爵家とは名ばかりで、公爵家にも負けず劣らずの豪華な屋敷の一室でアルト王子は意中の相手であるアンネリーゼと熱いひと時を過ごしていた。
お互いに熱を交わした後のピロートークである。
「済まなかったな。これもそなたと一緒になる為なんだ。今は我慢してくれ。」
「私は王子様を信じますわ。それよりケイトは元気にしていますか?ふふっ、学校ではこれでも割と仲が良かったんです。彼女を大切にしてあげて下さいね??」全てを知っているのに話す言葉はいかにも心配している風である。
「当たり前だ。彼女がいなければ私たちは今ごろはこんな風に過ごす事は出来なかった。しかし、聖女伝説のためにファースト家を差し出したきみもなかなかだ。」そう話しアンネリーゼの美しい金髪を一筋すくい口付けを落とした。
「でも、アルト王子様のお母様と国王様もこんな風に結ばれたのでしょ?」
「あぁ、私の母は形式上は後妻だからね。それよりもう一回いいかい?」
「まぁ~~、王子様ったら・・・」
「こんな時は名前で呼べよアンネリーゼ。」
アルトはこれ以上会話を続ける気はなく、腕の中のアンネリーゼを組み伏せ、この時が永遠に続けと言わんばかりに再びかき抱いた。
0
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
闇黒の悪役令嬢は溺愛される
葵川真衣
恋愛
公爵令嬢リアは十歳のときに、転生していることを知る。
今は二度目の人生だ。
十六歳の舞踏会、皇太子ジークハルトから、婚約破棄を突き付けられる。
記憶を得たリアは前世同様、世界を旅する決意をする。
前世の仲間と、冒険の日々を送ろう!
婚約破棄された後、すぐ帝都を出られるように、リアは旅の支度をし、舞踏会に向かった。
だが、その夜、前世と異なる出来事が起きて──!?
悪役令嬢、溺愛物語。
☆本編完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!
utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑)
妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?!
※適宜内容を修正する場合があります
公爵子息に気に入られて貴族令嬢になったけど姑の嫌がらせで婚約破棄されました。傷心の私を癒してくれるのは幼馴染だけです
エルトリア
恋愛
「アルフレッド・リヒテンブルグと、リーリエ・バンクシーとの婚約は、只今をもって破棄致します」
塗装看板屋バンクシー・ペイントサービスを営むリーリエは、人命救助をきっかけに出会った公爵子息アルフレッドから求婚される。
平民と貴族という身分差に戸惑いながらも、アルフレッドに惹かれていくリーリエ。
だが、それを快く思わない公爵夫人は、リーリエに対して冷酷な態度を取る。さらには、許嫁を名乗る娘が現れて――。
お披露目を兼ねた舞踏会で、婚約破棄を言い渡されたリーリエが、失意から再び立ち上がる物語。
著者:藤本透
原案:エルトリア
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる