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31、内部捜査

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「ついでなので引き続き話しますね。ここまではよろしいでしょうか?」と聞くとオスカー団長が「ああ、頼むよ。」と神妙な表情で返事をしてきた。傍にいるゲイルも同様だ。

「今回、私たちはハノイ国の近海で上がった遺体を何体か所持しています。ご存知でしょうか?」

「ああ、先日アルフォンス殿からも聞いた。正直今でも信じられない。」とオスカーが答えた。

「ハノイ国には皮膚と筋肉を改造出来る能力者がいるのでは?と思っています。ただ能力としたら強力すぎるので、その能力を格段に強化出来る人物が裏にいる物と私個人で考えています。そして遺体の状況から恐らく能力が及ぶのは顔つまり顔面のみではないでしょうか?」

もうこの部屋の雰囲気がお葬式のようだった。黙り込む2人。


アニエスはその雰囲気に耐えきれず、ふぅっとため息を吐いた。


「先ほどのディアッカ殿?の話ですが、仮に彼本人がその能力者だとしたらどうでしょう?」

「攫われてきた女性にこちらの近衛兵であるディアッカ殿がそのギフト強化をされ、ハノイ国の要求のまま、オーロラ王女の最新の顔を女性に施術していたら?」

「もしこの話が仮に真実だったら?
高額な施術料が彼の懐に入るのは当然でしょうね。こんな事あまり考えたくは無いんですが。」と目の前の2人を交互に見ながら話して行く。


「彼の妹さんの高額な治療代で治療時期を調べて見て下さい。この推理が真実だとすれば、オーロラ王女が襲われ始めた時期、ディアッカが施術した人数、遺体の数と見つかった時期。それぞれに法則があるのではないかと思います。照合はそちらにお任せします。」と話してみた。


「私の話はここまでです。他に何かありますか?」と2人に聞いてみた。黙り込む2人。

「では私はこれで失礼します。」と一礼して部屋を出た。


部屋から出た途端、壁にもたれてアルフォンスが待っていた。

美形は何やっても様になるのね。ふん!

「団長、どうされました?」と聞いてみた。

「あぁ、君のこちらの団服を預かっているのとこれからしばらく生活する部屋を教えておくよ。まぁ、着いてきて。」と歩き出した彼に着いて行く。

「さっきの話、本当か?」とアルフォンスが聞いてきた。

「はい、私の独自調査ですが、ソースはかなり信用出来ます。」

「そうか、あまり危ない所には突っ込むなよ。まず俺には言って欲しい。」と私を見つめていた。

なっ、何なのよ。急に。ドキドキしてしまった。

「えっ、ええ、わかった。」と歯切れの悪い返事になってしまった。

王宮の外へ出てすぐの所に騎士団の寮があった。

「ここだ。こちらが女性団員の寮なんだそうだ。」と団服が入った紙袋を手渡された。

「じゃあお休み。」とアルフォンスが男性の方の寮へと入って行った。

寮に入ると以前レンブラントに来ていた女性団員の2人のうちの1人に出会った。

「あっ、お久しぶりです。」とこちらから挨拶すると、「ようこそ来て下さいました。宜しくお願いします。」とにっこりしながら挨拶してくれた。

「これからお部屋ですか?良かったら案内しますよ。」と提案してくれたのでありがたく案内してもらう事にする。

「こちらですよ。」と案内された部屋はこじんまりとしたいい部屋だった。

「部屋にはミニキッチンを始め全て付いてます。そして21時まででしたら食堂も利用出来ますよ。」と教えてくれた。

「ありがとうございます。」とお礼を伝えてこの日はシャワーを浴びて早急に休んだ。





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