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26、ブルックリンの卒業証書

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 お父さんの葬式は滞りなく済んだ。家の近くの人達が「これから大変だけど頑張ってね。何か手伝える事があったら言ってね。」とそれぞれが心配し声をかけてくれる。国立カーティス魔法学園からも校長先生とローガン先生が駆けつけてくれた。

「ブルックリンさん、今は大変でしょ?落ち着いた頃もう一度ここに来るわね。」とブルックリンの手を握りしめローガン先生はそう話すとホバーに乗って帰って行った。

 お母さんは葬儀を済ませると落ち着き、疲弊していた心を取り戻したようだったが、ショックが大きかったのか寝込む事が増えた。

 ブルックリンはアンナ叔母さん達近所の人々と力を合わせて毎日明るく振舞っているが、夜、寝るために自分の部屋のベッドに入ると、フェアリーやケイトの事を思い出してしまい泣けてくる。学園生活は何と言っても楽しかったのだ。もちろんお母さんや弟、妹たちの前ではその事はおくびにも出さなかったが。

 やっと生活が落ち着いた頃、ローガン先生がやって来た。

「ブルックリンさん、どう?少しは落ち着いたかしら?」とリビングの椅子に座り問いかけて来た。先生も気を使っているのか、たいてい手土産を持ってくる。今日は学校の近くのケーキ屋さんのクッキーだ。

「ええ、ローガン先生、父の葬儀の時はありがとうございました。おかげで今は近所の方々のお力もあって、生活も落ち着いて来ました。」とぎこちなく微笑み、話しながらクッキーをちょっとマシなお皿に入れ、先生と自分の前へ出す。

「それでね、どうかしら?卒業式には来れそう?貴女は対抗戦の優勝者だし、成績も良かったから卒業の条件は自動的に満たされているわ。」

 先生もブルックリンの入れたお茶を飲みながら話す。時折、クッキーを摘まむ所は、先生もけっこう甘党なんだろう。

「――――それは、・・・・分かりません。これから幼い弟や妹を日中見てくれる所を探さないといけませんし。」と言いながら俯いた。

「そうよね。だけど進路はどうするの?・・・念のため聞くけど、確か魔法省のテスタメンターになりたかったのよね?一応、アーチャーに会った時に伝えてはおいたんだけど。」

「ありがとうございます。・・・・せっかくですがこの辺りで就職口を探そうと思います。お母さんと一緒に家族を養って行かなくてはならないので。」

「――――、そりゃそうよね。でも何だかもったいないわね。でも私の方でもこの付近に就職口があるかどうか調べてみるわね。」と言ってローガン先生はホバーに乗って帰って行った。

 そしてケイトからの手紙でブルックリンを心配している事、またエドワードが魔法省へ就職が決まったと知った。ケイトもフェアリーもそれぞれ進路が決まったと書いてあった。

 そして手紙から2週間後、とうとう卒業式の日が来たが、ブルックリンは自宅でチャーリーやミヤと過ごしていた。――――暗い顔をしていたら心配するから笑おう。とすればするほど涙が出そうになってしまった。

 その様子を見るに見かねて、お母さんが「ブルックリン、今日はもう私がこの子達を見てるから休みなさい。」と言ってくれた。


 卒業式の次の日。ローガン先生が大きな荷物を持ってやって来た。宅配業者と一緒だ。寮の荷物を片付けて持って来てくれていた。

「ローガン先生、お手数おかけしました。ありがとうございます。」と言いながらお茶を出した。今日はお母さんは働きに言っている。チャーリーとミヤは仲良くお昼寝中だ。

「荷物の事は気にしないで?フェアリーさんとケイトさんがほとんど纏めてくれたのよ。それより、ここから歩いて20分ほどの所に魔道具店があるの。どうかしら?そこへ就職しない?」と言いながら先生はその魔道具店のスタッフ募集の紙をカバンから取り出した。

「とりあえず、今は学校を卒業したばかりだからお給料は大体こんなものだと思うわ。仕事としては魔道具の作成と魔力の注入ね。そしてこのお店の道中に保育園があるの。ここの家はお父様がお亡くなりになられたから、国からの補助も幾らか出るしどうかしら?」と今度は保育園のパンフレットと行政に補助金を申請するための用紙をカバンから取り出した。


「そして、これは私とアメリア先生からの卒業祝い。」と言いながらカバンから今度は鳥かごを出して来た。

 どうやって入れてたの?と突っ込みたいと思ったが、中には真っ白の羽を持つ美しいハトが入っていた。口ばしの赤い賢そうなハトだった。

「――――せっかくですがこんな高価な物、頂けません。」と言うと「まあ、子供が気を遣うんじゃないわよ。私達からのささやかなお祝いよ。」と言いながらローガン先生は強引にその鳥かごをブルックリンに手渡して来た。

「アメリアがあなたが優勝した事をすっごく喜んでててね。土属性の子の優勝は、ほとんど見たことが無かったから。」と言っていた。

「ローガン先生、そして、ここには居らっしゃらないけどアメリア先生、ではありがたく頂戴します。どうかアメリア先生にお礼を言っていたとお伝えください。」と言って鳥かごを受け取った。

「そして、これは私から渡す事になってね・・・・。」と言いながらカバンからブルックリンの卒業証書を出すと、ブルックリンに恭しく手渡してくれた。

「ブルックリンさん、貴女本当によく頑張ったわ。これだけは忘れないで?どんな時でもやり抜いて来た自分自身を誇るのよ。」そう言いながらブルックリンに握手を求めた。

 ブルックリンもガッチリ握手をすると、「ローガン先生、本当に今までありがとうございました。」と、泣きながらおじぎをした。

 ローガン先生は「じゃあ、先に保育園に行って手続きを済ませるのよ~。」と言いながらホバーに乗って帰って行った。
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