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11、テスタメンターという仕事

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「分かりました。ではこれから準備を始めます。すいませんが椅子を1つお借りできますか?」とガブリエラさんが言った。すかさずブルックリンが隣の部屋から椅子を持ち出してガブリエラへ渡した。

「あぁ、ありがとうございます。」とガブリエラは椅子を受け取ると部屋の中央へ置いた。

 そして自分の荷物から2枚の用紙を取り出すと「奥様、申し訳ありませんがこちらへ了解したとのサインをお願いします。」と言いながらテーブルの上へペンと一緒に紙を置いた。

「これから伝言を聞きますと言う了解の用紙と、確かに聴きました。と言う事後の用紙になります。まずはこちらの伝言を聞く事の了解の用紙にサインをお願いします。」と言いつつお母さんへ紙とペンを差し出した。お母さんは用紙を一瞥するとスラスラとサインした。ガブリエラさんはその用紙をカバンにしまい込んだ。

「それでは少しだけ説明させて頂きます。」と言いながらこれからの流れを話すと、椅子に腰掛けた。

「皆さんどうか心静かに。」と聞いながら杖を出した。

「シュペール、インファーレンズ。」と唱えるとガブリエラさんの周りの景色が変わった。

 (この景色見た事ある。おばあちゃんの家のリビングだわ。)

「アンミラブル、デフィカルト!!」と杖の先でガブリエラの右手の指輪を突つくと、ガブリエラさんの姿がゆっくりとおばあちゃんの姿に変化した。

「っ!おばあちゃん!!」とブルックリンを含む子供達の声が上がった。

「皆さんこんにちは。今この姿をガブリエラが見せてるって言う事は、私の命はもう長く無いと思って頂戴。」と話すと悲しげに俯いた。

「私がガブリエラと会ったのは偶然だったの。本当に偶然だった。」と話すと苦しそうに呼吸した。

「ガブリエラは街の中で倒れた私を介抱してくれて話を聞いてくれたのよ?そしてこのサービスの提供を申し出てくれた。」

「まだこのサービスは一般には出回ってないからきっと驚いていると思うわ。」と言いながら悪戯っぽく笑った。

「まずはロンド、娘のナターシャと結婚してくれてありがとう。たくさんの孫の顔を見せてくれてありがとう。心から御礼を言うわね。」とおばあちゃんの姿をしたガブリエラは、お父さんに向かって御礼を言った。

「ブルックリンを始め私の愛しい孫たち。おばあちゃんは離れていても、いつも貴方達の事を考えて居ますよ。皆んな本当にお父さん、お母さんを助ける良い子たちに育ったわ。これからもお父さん、お母さんを宜しくね。」ここでガブリエラが激しい咳をした。

「まずはこの話をするわね。ナターシャ、貴女の兄は既に財産を放棄しています。なのであの家はナターシャ、貴女の名義に書き換えてあります。」

「家の中の事はナターシャの好きにしたら良いけど、家の中にある物は子供たちにも分けてあげて欲しいのよ。大したものは無いけれど、少しでもおばあちゃんの事を心のどこかで覚えていてくれると嬉しいわ。」そう話しながらブルックリンを始めそれぞれ兄弟を見渡した。

「もちろん庭もナターシャ、貴女の名義よ。現金は大した額は無いけど孫たちの名義で銀行に入れてあるわ。ほんの少しだけど貴金属は纏めて金庫に入れてあるわ。これはナターシャ、貴女が持っていて欲しい。最後にガブリエラが全ての書類を出すけどよく確認しなさいね。貴女は昔からそそっかしい所があるから。」と苦笑いした。

「最後だけどロンド、手間を掛けさせるけど、私の亡骸は亡くなった主人のお墓へ入れて欲しいの。頼めるかしら?」

「じゃあそろそろ話を終わるわね。私が生きてる間に一度ぐらいは会えると良いけど、ここまではちょっと距離があるからね。」と寂しく笑うとガブリエラの体は力が抜けてガクッとなった。
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