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第三章 今度の敵はバイク! 魔獣少女の夏
第20話 魔獣少女と、食レポお嬢様
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「はーいみなさまー。加瀬 イヴキの『B級グルメのお嬢様』のお時間ですわ!」
イヴキ様が、使用人さんのカメラに笑顔を見せている。
市民プールで遊ぶ日がやってきた。
期末試験休みなので、朝からみんな集まっている。
といっても、わたしは午前中は、お母さんのお手伝いなのだが。
「今日は、クラスメイトと一緒に市民プールに来ていますわ。ごらんください。みなさん思い思いに泳いでいらっしゃいます」
わたしたちに、カメラが向けられる。
「うわっと」
マナさんが、顔を隠す。
「ちょっとイヴキ様、さすがに顔は」
臨也さんが、マナさんの顔を手で覆った。
「ご心配なく。お顔を隠さなくても、こちらで処理は致します。生配信はしない主義ですので」
一応事故が起きないように、イヴキ様以外はモザイクをかけるか、顔自体を映さない。
また、イヴキ様自身も特に目立とうとしなかった。「主役はあくまでも料理」というスタンスなのである。いつものストイックなイヴキ様らしい。
プールに来ているのは、わたしと母、ユキちゃん、マナさん、イヴキ様、で、なんと臨也さんである。
「それにしても、加瀬がラッシュガードとはねぇ」
マナさんが、不思議がっているのも無理はない。
イヴキ様のことだから、てっきり誰もが大胆な水着姿を披露するかと思っていた。
しかし、実態はラッシュガードにパレオという完全防備である。庶民に見せる肌などないという心構えすら感じた。
「じゃあ、あたしたちは見学してるから」
「遊んでらしても、よろしくてよ」
「いや。タコスが食いたい。さっきからうまそうで」
実はマナさん、朝食を食べていないんだとか。
現在は、朝の九時だ。一番お腹が空く時間帯である。
「まあ。いいですわ。サクラ扱いになりますが、よろしくて?」
「構わん」
「では、撮影を再開いたしますわ」
再び、カメラが回り始めた。
「さっそくタコスが焼き上がっておりますわ。店主さん、このタコスのコンセプトはなんですの?」
「ズバリ、ヘルシーです!」
お母さん、ノリノリで取材に応じてるよ。母は上下ともラッシュガードだ。下は競泳水着らしい。「おしゃれする歳でもないから」と、露出は避けている。
「実は生地に、小麦粉を使っていません!」
「ほほう、グルテンフリーなのですわね?」
「生地には、コーンミールとお豆腐を使っているの!」
泳いだ後に疲れた身体だと、物足りないって感じちゃうかも。だけど、カロリーを気にせずガッツリ食べたいって人にはおススメよ。
二人がやりとりをしている間に、臨也さんへ声をかける。
「来てくれてありがとう、臨也さん」
わたしたちがプールへ行くというと、臨也さんが「マナの付き添いがしたい」と言い出したのだ。
「誘ってくれって行ったら、普通に呼んだじゃん」
「あなたの素行不良を、見張っていなきゃいけないだけよ! そのわがままボディも守らなきゃ!」
臨也さんの水着は、紺に水玉ワンピースだ。彼女の水着だけは、レンタルである。フリルスカートが付いていて露出が少なく、子どもっぽい。でも、似合ってしまうのが臨也さんだ。
「かわいいですよ、臨也さん」
「あ、ありがとう」
スカートを押さえつつ、臨也さんが頬を染める。
「マナさん、臨也さんの調子はどうですか?」
「なんともねえ。それどころか、記憶もなくしてやがった」
魔獣少女としての活動は、「夢を見ていた感じ」でしか、覚えていなかったという。あまりにもセクシーすぎる夢だったので、言葉にはしたくないとはぐらかされたが。
「私のことより来栖さん、イヴキ様にボコボコにされて、なんともない?」
臨也さんが、わたしを気遣う。
「そうだよ。大丈夫だった?」
ユキちゃんも、わたしを心配した。
「平気だよ。ほら、このとおり」
首をゴキゴキと鳴らして、無事をアピールする。
「どういうことでしょう? 先輩?」
さりげなく、バロール先輩に尋ねてみた。
周りには当然、先輩の姿は見えない。
『アイツは、リリスは電脳世界の住人だしな。深層心理に働きかけるから、認識自体されていなかったっぽい』
臨也さん自身が、魔獣に取り憑かれていたことを否定したいのかもしれないが、とのこと。
『オレサマが倒した相手は、魔獣少女になることはねえ。関係性を断つからな』
「だといいのですが」
わたしが虚空に向かってボソボソ話していると……。
「ダレと話しているんだ?」
マナさんに話しかけられた。
「ふえ!? なんでもありませんよー」
「でも、なんか幽霊とかと話しているのかと」
「そんな。わたし霊感とかないので」
わたしが弁解すると、ユキちゃんも話に乗ってきた。
「この辺に、霊はいないよ」
ユキちゃんは、霊媒体質なのだ。魔獣の気配は感じ取れないらしい。
「変なのはいるみたいだけど、害はないみたい」
「そ、そっか。危なくないんならいいんだよ」
さっきからマナさん、臨也さんの手をギュッと握っていた。心霊現象が、怖いのだろうか?
「おばけ怖い?」
「ひう!?」
ダイレクトに、ユキちゃんがマナさんに聞く。
わたしがスルーしようと思っていたのにっ。
イヴキ様が、使用人さんのカメラに笑顔を見せている。
市民プールで遊ぶ日がやってきた。
期末試験休みなので、朝からみんな集まっている。
といっても、わたしは午前中は、お母さんのお手伝いなのだが。
「今日は、クラスメイトと一緒に市民プールに来ていますわ。ごらんください。みなさん思い思いに泳いでいらっしゃいます」
わたしたちに、カメラが向けられる。
「うわっと」
マナさんが、顔を隠す。
「ちょっとイヴキ様、さすがに顔は」
臨也さんが、マナさんの顔を手で覆った。
「ご心配なく。お顔を隠さなくても、こちらで処理は致します。生配信はしない主義ですので」
一応事故が起きないように、イヴキ様以外はモザイクをかけるか、顔自体を映さない。
また、イヴキ様自身も特に目立とうとしなかった。「主役はあくまでも料理」というスタンスなのである。いつものストイックなイヴキ様らしい。
プールに来ているのは、わたしと母、ユキちゃん、マナさん、イヴキ様、で、なんと臨也さんである。
「それにしても、加瀬がラッシュガードとはねぇ」
マナさんが、不思議がっているのも無理はない。
イヴキ様のことだから、てっきり誰もが大胆な水着姿を披露するかと思っていた。
しかし、実態はラッシュガードにパレオという完全防備である。庶民に見せる肌などないという心構えすら感じた。
「じゃあ、あたしたちは見学してるから」
「遊んでらしても、よろしくてよ」
「いや。タコスが食いたい。さっきからうまそうで」
実はマナさん、朝食を食べていないんだとか。
現在は、朝の九時だ。一番お腹が空く時間帯である。
「まあ。いいですわ。サクラ扱いになりますが、よろしくて?」
「構わん」
「では、撮影を再開いたしますわ」
再び、カメラが回り始めた。
「さっそくタコスが焼き上がっておりますわ。店主さん、このタコスのコンセプトはなんですの?」
「ズバリ、ヘルシーです!」
お母さん、ノリノリで取材に応じてるよ。母は上下ともラッシュガードだ。下は競泳水着らしい。「おしゃれする歳でもないから」と、露出は避けている。
「実は生地に、小麦粉を使っていません!」
「ほほう、グルテンフリーなのですわね?」
「生地には、コーンミールとお豆腐を使っているの!」
泳いだ後に疲れた身体だと、物足りないって感じちゃうかも。だけど、カロリーを気にせずガッツリ食べたいって人にはおススメよ。
二人がやりとりをしている間に、臨也さんへ声をかける。
「来てくれてありがとう、臨也さん」
わたしたちがプールへ行くというと、臨也さんが「マナの付き添いがしたい」と言い出したのだ。
「誘ってくれって行ったら、普通に呼んだじゃん」
「あなたの素行不良を、見張っていなきゃいけないだけよ! そのわがままボディも守らなきゃ!」
臨也さんの水着は、紺に水玉ワンピースだ。彼女の水着だけは、レンタルである。フリルスカートが付いていて露出が少なく、子どもっぽい。でも、似合ってしまうのが臨也さんだ。
「かわいいですよ、臨也さん」
「あ、ありがとう」
スカートを押さえつつ、臨也さんが頬を染める。
「マナさん、臨也さんの調子はどうですか?」
「なんともねえ。それどころか、記憶もなくしてやがった」
魔獣少女としての活動は、「夢を見ていた感じ」でしか、覚えていなかったという。あまりにもセクシーすぎる夢だったので、言葉にはしたくないとはぐらかされたが。
「私のことより来栖さん、イヴキ様にボコボコにされて、なんともない?」
臨也さんが、わたしを気遣う。
「そうだよ。大丈夫だった?」
ユキちゃんも、わたしを心配した。
「平気だよ。ほら、このとおり」
首をゴキゴキと鳴らして、無事をアピールする。
「どういうことでしょう? 先輩?」
さりげなく、バロール先輩に尋ねてみた。
周りには当然、先輩の姿は見えない。
『アイツは、リリスは電脳世界の住人だしな。深層心理に働きかけるから、認識自体されていなかったっぽい』
臨也さん自身が、魔獣に取り憑かれていたことを否定したいのかもしれないが、とのこと。
『オレサマが倒した相手は、魔獣少女になることはねえ。関係性を断つからな』
「だといいのですが」
わたしが虚空に向かってボソボソ話していると……。
「ダレと話しているんだ?」
マナさんに話しかけられた。
「ふえ!? なんでもありませんよー」
「でも、なんか幽霊とかと話しているのかと」
「そんな。わたし霊感とかないので」
わたしが弁解すると、ユキちゃんも話に乗ってきた。
「この辺に、霊はいないよ」
ユキちゃんは、霊媒体質なのだ。魔獣の気配は感じ取れないらしい。
「変なのはいるみたいだけど、害はないみたい」
「そ、そっか。危なくないんならいいんだよ」
さっきからマナさん、臨也さんの手をギュッと握っていた。心霊現象が、怖いのだろうか?
「おばけ怖い?」
「ひう!?」
ダイレクトに、ユキちゃんがマナさんに聞く。
わたしがスルーしようと思っていたのにっ。
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