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第二章 デートじゃねえから!

第21話 からまったコードから脱出するだけなのに

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 オレたちは、音ゲーのコードに絡まったまま動けなくなっている。
 コールを呼びたくても、電話は向かい側にあって届かない。

「大丈夫か? 頭を打ってないか?」

 実代みよの顔が、すぐ近くにあった。近いのは、顔だけではない。豊満な胸も密着していた。

「へ、平気っす、紺太こんたセンパイ。ソファが柔らかくて無事っすよ」

 すぐさま、オレは身体をどけようとする。

 しかし、コードが絡まって動けない。今どき、コードレスではないとは! よく見ると、かなりタイプの古い音ゲーだった。どうりで配線が必要なわけだ。

「待ってろ。足をどけて、と。実代、お前も足を上げてくれ」
「はいっす」

 実代が、太ももをあげかけた。

「待ったぁ! 今はマズイ」

 実代の足から、オレは後ろのミラーから顔をそらす。

 ミラーには、ミヨの下半身が映っていた。

 あやうく、実代のスカートの中身が全開になるところだったのである。

 実代も気づいたのか、顔を赤らめてそっと足をどけた。

 これで第一ミッションは終了である。

「いいぞ」
「すんません、気を使わせちゃって」

 実代の息が、オレの耳にかかった。

「う、う~ふう」

 ダメだ。オレは耳が弱い。わかっていても、悶てしまう。

「変な声、出さないでほしいっす」
「す、すまん。耳に息がかかって」
「これが弱いんすか?」

 また、実代がふーっとオレに息を吹きかけてきた。

「はあう。やめろっての」

 耳がくすぐったくなって、体をねじる。

「あっ、センパイ。もうちょいっすね?」

 なんと、そのおかげでコードがゆるくなってきた。

「単に、体重をお前に乗せていたのがマズかったみたいだな」

 そうとわかれば、あとは早い。オレは横に移動する。

「実代、身体をねじってみてくれ」
「こうっすね」

 言われたとおりに、実代は身体を動かす。

 オレの読みは当たり、脱出に成功した。

「よし。やったぜ」
「やったっすね」

 ふう、一時はどうなるかと。

「店員に怪しまれてねえよな?」

 監視カメラで、イチャイチャされていると思われているのでは?

「ごまかすっす。またデュエットしておきましょう」

 二人で歌うタイプのボカロ曲をチョイスして、ミュージックスタート。

 なぜか、実代がオレのすぐ横に移動し、腕を組んでくる。どうしたんだろう? やけにスキンシップが過剰だ。

「♫~んはあ!?」

 あろうことか、実代がオレの耳に息をふきかけてきた。

 オレのあえぎ声が、大音量で部屋に鳴り響く。

「やめんか、実代」
「勝負っすよ。先輩が耐えられるかどうか」
「もうやめなさい。マジで追い出されっから」
「ふ~っ」
「はあん!」

 耐えるのだが、不意打ちにやられてしまう。

「ムリだ。オレの負けでいいから!」

 今度こそ、部屋から追い出されかねない。オレは歌を中断した。

「え~。つまんないっすよ~」
「いいんだよ。あと一時間だろ? 夕メシ食って帰ろう」

 気を取り直して、夕食をオーダーした。

 オレはちゃんぽん麺を。実代はミックスフライとエビドリアである。

 店員は、怪訝そうな顔をして注文の品を持ってきた。

 オレたちは平静を装い、作り笑いで応対する。

「あれだけの油モノを食ったのに、追い油とか。若いな」

 可能な限り、オレは野菜を取ろうとしていた。ラーメンの塩分で台無しだとしても。

「センパイがヒョロなだけっすよ」

 実代は、付け合せのパセリから食う。前回のピーマンといい、どうも苦い野菜は平気のようだ。

「ぐう」

 しかし、さすがの実代も追い油の洗礼を受けているようである。そうそう、油って急に来るんだよ。

「エビフライ一匹どうっすか?」
「おう、サンキュ」

 エビフライを「あーん」してもらう。

「おいしいっすか?」
「うん。ありがとな。ていうかお前、スキあらばあーん攻撃してくるな?」
「好きっすから」
「あん?」
「あっ……あーんが好きなんすよ! 誤解しちゃダメっすからね!」
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