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第五章 お隣さんと、海デート

第30話 水着選び

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 寿々花すずかさんの水着を選ぶ、手伝いをすることになるとは。

 とはいえ、こっちも休めるように手筈を整えておかないと。

 最近は有給も取りやすくなった。いうほどデスマも起きなくなってきたし。

 作業効率も、ここ数週間はすこぶるいい。体調も万全だ。やはり、寿々花さんから栄養をもらっているからだろう。

 やはり人間って、身体が資本なんだよな。どれだけ金があっても、健康でないと。

「ねえヒデくん、これどうかな」

 そんなしょーもないコトを考え続けていないと、この目の前にドンと押し寄せてくる爆撃に耐えられない!

 もう、何着目だよ。一着目はホントに面積の少ない水着を披露し、二着目はブラヒモがないタイプを選んできた。三着目が、これである。ピンクのビキニだ。

「い、いいと思います」
「そっかー。じゃあ、色違いを付けてみるね」

 まだ続くのか。

 うれしいが、これはある意味では拷問だな。目の前に熟れた果実があるのに、手を出せない拷問である。

「白にしてみたんだけど」

 また、カーテンが開く。

「俺は、白の方がいいと思います」

 さっきのピンクも背徳感が会って素晴らしかったが、やはり寿々花さんは白が似合う。
 
 
 それから、俺はひたすら仕事に励んだ。どうしても、有給を取る必要があるから。

 その甲斐があって、別のプロジェクトチームが手伝ってくれることとなる。

「我々も、8月は大型連休が欲しい。なので、お互い協力し合おう」と、女性リーダーは言ってくれた。彼女も、交際相手とデートがしたいとか。

 それぞれのプロジェクトを補完しつつ、自分たちの仕事もこなす。

 やっとプロジェクトが終わった時は、休めるぎりぎりになってしまった。

 しかし、どうにか寿々花さんとの夏を手に入れられる。

 寿々花さんとの旅行は、電車を利用した。レンタカーでもよかったが、この場所は電車のほうが便利だ。車だと道が混みそうだからとボツに。

 以前のキャンプみたいに、大雨でトラブルになる予想もあった。しかし、電車がアウトになった道なんて車もアウトだろうと。

「ヒデくん、泳ごう!」

 寿々花さんが、足首まである茶色のワンピースをぐぐっとたくし上げた。

「え、ここで着替えるんですか!?」
「大丈夫、下に着てるから」

 買ってきた白ビキニが、あらわになる。

 おし。誰もいなくてよかった。

 こんな姿を見られたら、誰もが振り向いただろう。

 ちょっと幼く見えるポニーテールも、ステキだ。

「すごく似合っています。海にもマッチしていますね」
「わあ。ありがとうヒデくん。海に入ろうか」
「はい」

 ビーチボールを膨らませ、海へと向かう。
 

 
 で、今に至る。

 誰もいない海で、俺たちはビーチボールをトスしあっていた。

 砂浜はまだシーズンではないのか、ガラガラだ。

 まだ、夏休みにもなっていないのだろう。ヘルメットを被って自転車に乗る学生が、道路を通り過ぎていく。

「すごいです。ほぼ貸し切りですよ」
「いいね! ちょっと水着買ってから太っちゃって、またパッツンパッツンになっちゃった」

 寿々花さん、それはふくよかになったんじゃないです。胸が成長しなさったんですよ。

 そう教えてあげたい。しかし、セクハラになってしまう。

 俺の心の中に、そっとしまっておく。

「この際だから遊んじゃおう、ヒデくん。よっと」
「はい。それっ」

 俺たちがトスを楽しんでいる時だった。

 フェリーが、水平線を横切っているのが見える。

 俺は予感した。高い波が来ると。

 だが、その波は俺の想像をはるかに上回っていた。

「え? え? え?」

 サーフィンでもできそうな大型の波が、俺たちを流していく。

 踏ん張っていたのに、俺は逆さまに海の中で転げ回った。

「あっぶね」

 びしょ濡れになって、水面へと上がる。

「ヒデくん」

 か細い声で、寿々花さんが海水に入ったまま俺を呼ぶ。動けないようだ。 

「待っててください」

 俺は、寿々花さんの元にたどり着いた。

 途端に、寿々花さんが俺に抱きつく。

「どうしたんですか?」

 問いかけてみたが、密着した瞬間にわかってしまった。何が起きたのか。

「ブラが流されちゃった」
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