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第三章 隣のお姉さんと、キャンプデート

第14話 キャンプ場へ向かう前に

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 GW前のデスマーチを、乗り切ったぜ。

 あれは執念だった。

 村井むらいなんか、俺と同じ「ヒデ」という名前をつけたネコの待受を見ながら踏ん張っていたっけ。

 とにかく、デスマーチを抜けた俺たちは、晴れて自由の身に。

 寿々花すずかさんの名義で、レンタカーを借りる。

 小さい軽四ワゴンだ。いかにも、寿々花さんらしい。

 寿々花さんが免許持ちだとは、知らなかったな。でも就職に有利だし、そういう意味では取っていても不思議ではないか。

「俺が運転しますよ」

 一応、俺も免許は持っている。オートマ限定だが。

 車を持つ必要性を感じなかったから、駐車場のない今のアパートを借りているだけだ。

 アパートには月極駐車スペースもあるが、利用者は少ない。

「近いから、いいよー。クルマ運転したい、ってものあったし」
「では、お願いします」

 キャンプ場へ向かった。

 寿々花さんは久しぶりの運転と言っていたが、そこまで危なっかしいドライブではない。

「上手ですね」
「仕事で、たまに乗るからね」

 不動産って、営業が大事だもんな。現地に行く足も必要だろうし。

「狭い道とかはムリだけど、山道にある物件とかと商談に行くときで鍛えられたかな」

 結構、ワイルドな体験をなさっておいでで。

「よかった。あまり道が混んでなくて」
「天気もよくて、最高ですね」

 青空が広がり、キャンプ日和だ。

「今日のキャンプ場って、どんな感じなんです? 山道なんですか?」
「ちょっと山があるかなぁ。そこは、動物園や農園と隣接しててね、お野菜とかお肉とかも売ってるの。直売店」

 その農園で育てている牛などを、直接さばいたものが直売店に並んでいるという。

「新鮮なお肉が食べられると?」
「そうなの。楽しみだなぁ」
「それで、何も買ってこなくていいって言っていたんですね?」

 危うく、スーパーで大量に肉やら野菜やらを買おうとした。

 今日はバーベキューの他に、ピザ工房もあるという。石窯を使って自分でピザを焼けるそうだ。

「ピザを焼く体験ができるんだよ。朝ごはんはそれにしようね」
「いいですね。最高です。朝食を抜いた甲斐がありました!」

 朝を抜いてきてほしいと言われた理由が、ようやくわかった。コンビニのイートインで、済ませるのかなと思ったが。

 今日は、いつになく寿々花さんとの距離が近い。

 いい香りもするし、ちょっとくらっとなりそうだ。

「どうしたのヒデくん、具合悪い?」
「大丈夫です」
「でも、息も荒いし、顔が赤い。クルマに酔った?」
「平気です。三半規管は強いほうなので」

 学生の時も、遠足のバスなどで後ろのやつと席を交代するほどである。

「コンビニで、お茶でも買う? 私も飲みたいから買おっか」
「そうしましょう」

 手洗い休憩も兼ねて、コンビニに寄ることにした。

 カップ型の容器を買い、コンビニカフェを利用する。イートインで場所を取り、寿々花さんの用が済むのを待つ。

 寿々花さんが、お手洗いを済ませて戻ってきた。

「どうぞ寿々花さん」
「ありがとー」

 カップのアイスミルクティーを受け取って、寿々花さんは喜ぶ。連れてきてもらっているからと、代金は受け取らなかった。

 俺もアイスカフェオレをグイッとチャージして、シャキッとする。

「ヒデくんは、スイーツを選ぶ基準ってあるの?」
「特にはないですね。ほしいものを買っている感じです。物珍しいものに目を惹かれることはありますけど」
「じゃあ、選び方を教えてもらおうかな?」
「わかりました」

 再度、俺たちは店をうろつく。

「いっぱい種類があるね。魅力的な商品が、圧縮されてるって感じだぁ。すごいなあ」

 まんべんなくそれなりのものがあるスーパーとは違って、コンビニは厳選された商品が並ぶ。刺さる人にはグッと刺さり、離さない。

 とはいえ、コンビニ初心者の寿々花さんが選んだのは、眠気覚まし用のガムだった。
 これでも、スイーツと言えばスイーツだ。
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