68 / 70
最終章 カップルYouTuber、決意の……
第68話 恋人たちの岬
しおりを挟む
夢希が留学を決めたと聞き、周りがどよめいた。
「いつから行くの?」
「来年の春から、半年間の予定」
すでに夢希は、両親にも話を通しているという。
「で、ゆくゆくは、アメリカの大学に通う」
「いつの間に決めたん?」
「台風が来たとき、あったでしょ? その前後で、快斗にだけ話したの」
だからオレは、星梨おばさんの経営する会社の方針に、難色を示したのだ。
「本当は、今年の秋くらいには考えていたんだよ」
「そうなんや」
でも、夢希からしても早すぎると、「二年の頭から」に決まった。一応オンラインで勉強もできるから、今はそっちでがんばっている。
「もう、ムギの夢は始まってるんだね」
「モミジ、ムギの夢ってなんなん?」
「洋画の吹き替え台本を、作るんだって」
夢希の目標を、モミジが癒乃に教えた。
「すごいやん! ウチも映画好きやから、吹き替えは助かるわー」
仲間たちは、夢希の夢に好意的だ。
「でもカイトは、ひとりぼっちになるよね?」
「ああ。でも、おひとりさまに戻るだけだ。オンラインでいつでも連絡は取れるからな」
すぐに日本を発つわけじゃない。まだ来年の春までは、こっちにいる。
それまで、二人の時間を大切にしようと決めた。
「チャンネルは、どうするの?」
「動画をやめるか続けるかは、最後まで話し合った。結果、オレがチャンネルをもたせることになった」
へたをすると、動画チャンネルの管理者はオレだけになる。そうなって、今のポテンシャルを維持できるかどうか、謎だったのだ。
「夢希の帰る場所は、オレが守り続ける」
食後、オレたちは「恋人たちの岬」というデートスポットへ向かう。
岩山を切り取った階段を、ズンズンと上がっていく。ちょっと横を見ると、すぐに海だ。オレたちがいるスポットは、まさに崖そのものである。アップダウンの激しい石段を、暑い中で踏みしめた。
この崖を上った先で、願い事を言うと叶うらしい。が、そこまで辿り着く前に、ほとんどのカップルが挫折するという。休憩所にあるロープウェイで、下に降りてしまうとか。
「薄着で来たのに、暑いね」
「日光の照り返しが、ヤバい」
石段から、熱が跳ね返ってくる。これが、余計に体力を奪うのだ。
錆びたプレハブ小屋が、見えてきた。
「ちょっと水分を補給しよう」
休憩所に置かれているベンチに、腰掛ける。自販機のスポドリが、ありがたい。
「たこ焼き売ってたから、買ってきた」
「いただきます……ああ、うま」
作り置きの冷めたたこ焼きなのに、高級料理並みの味だ。疲労がそう感じさせるのか。
誰もいない、二人だけでのデートだ。なのに、ほとんど会話もなし。たこ焼きをつつきながら、ただ二人で頂上を見上げる。
「遠い」
「でもゴールは、見えてるぜ」
休憩を終えて、体力を使い、気力も振り絞った。
ようやく、頂上にたどり着く。
そこでオレたちは、最初で最後になるかも知れない、生配信を開始することにした。
「いつから行くの?」
「来年の春から、半年間の予定」
すでに夢希は、両親にも話を通しているという。
「で、ゆくゆくは、アメリカの大学に通う」
「いつの間に決めたん?」
「台風が来たとき、あったでしょ? その前後で、快斗にだけ話したの」
だからオレは、星梨おばさんの経営する会社の方針に、難色を示したのだ。
「本当は、今年の秋くらいには考えていたんだよ」
「そうなんや」
でも、夢希からしても早すぎると、「二年の頭から」に決まった。一応オンラインで勉強もできるから、今はそっちでがんばっている。
「もう、ムギの夢は始まってるんだね」
「モミジ、ムギの夢ってなんなん?」
「洋画の吹き替え台本を、作るんだって」
夢希の目標を、モミジが癒乃に教えた。
「すごいやん! ウチも映画好きやから、吹き替えは助かるわー」
仲間たちは、夢希の夢に好意的だ。
「でもカイトは、ひとりぼっちになるよね?」
「ああ。でも、おひとりさまに戻るだけだ。オンラインでいつでも連絡は取れるからな」
すぐに日本を発つわけじゃない。まだ来年の春までは、こっちにいる。
それまで、二人の時間を大切にしようと決めた。
「チャンネルは、どうするの?」
「動画をやめるか続けるかは、最後まで話し合った。結果、オレがチャンネルをもたせることになった」
へたをすると、動画チャンネルの管理者はオレだけになる。そうなって、今のポテンシャルを維持できるかどうか、謎だったのだ。
「夢希の帰る場所は、オレが守り続ける」
食後、オレたちは「恋人たちの岬」というデートスポットへ向かう。
岩山を切り取った階段を、ズンズンと上がっていく。ちょっと横を見ると、すぐに海だ。オレたちがいるスポットは、まさに崖そのものである。アップダウンの激しい石段を、暑い中で踏みしめた。
この崖を上った先で、願い事を言うと叶うらしい。が、そこまで辿り着く前に、ほとんどのカップルが挫折するという。休憩所にあるロープウェイで、下に降りてしまうとか。
「薄着で来たのに、暑いね」
「日光の照り返しが、ヤバい」
石段から、熱が跳ね返ってくる。これが、余計に体力を奪うのだ。
錆びたプレハブ小屋が、見えてきた。
「ちょっと水分を補給しよう」
休憩所に置かれているベンチに、腰掛ける。自販機のスポドリが、ありがたい。
「たこ焼き売ってたから、買ってきた」
「いただきます……ああ、うま」
作り置きの冷めたたこ焼きなのに、高級料理並みの味だ。疲労がそう感じさせるのか。
誰もいない、二人だけでのデートだ。なのに、ほとんど会話もなし。たこ焼きをつつきながら、ただ二人で頂上を見上げる。
「遠い」
「でもゴールは、見えてるぜ」
休憩を終えて、体力を使い、気力も振り絞った。
ようやく、頂上にたどり着く。
そこでオレたちは、最初で最後になるかも知れない、生配信を開始することにした。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
全校転移!異能で異世界を巡る!?
小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。
目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。
周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。
取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。
「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」
取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。
そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。
追う者
篠原
青春
追う者 ~第1巻~
過酷な現状に耐え、正しい生き方をしてきたはずだった…。
でも、知ってしまった、母の死んだ後。
純連潔白だと信じ切っていた自分の中に、
凶悪強姦犯の血が赤々と流れているという、衝撃の、恐ろしい、忌まわしい、
事実を。
そして、私は、決めた。もう、生き方を変える・・・・・・。
~あらすじ~
とある街、夏の熱帯夜。実在する鬼から逃げるように、死に物狂いで走る、
1人の若い女性…。交番に向かって、走っていく……が…。
それから、かなりの時間が過ぎて…。
最愛の男性との結婚式を数日後に控え、
人生史上最も幸せなはずの20代女子・柳沼真子は回想する。
真子の回想から、ある小さな女の子が登場する。
彼女の苗字は奥中。幸せに暮らしていた。
その町で、男が轢き殺される事故が起こる、あの日まで…。
(本作の無断転載等はご遠慮ください)
(エブリスタ、小説家になろう、ノベルデイズ にも掲載)
(本作は、 追う者 ~第1巻~です。第2巻で完結します)
My Angel -マイ・エンジェル-
甲斐てつろう
青春
逃げて、向き合って、そして始まる。
いくら頑張っても認めてもらえず全てを投げ出して現実逃避の旅に出る事を選んだ丈二。
道中で同じく現実に嫌気がさした麗奈と共に行く事になるが彼女は親に無断で家出をした未成年だった。
世間では誘拐事件と言われてしまい現実逃避の旅は過酷となって行く。
旅の果てに彼らの導く答えとは。
ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう
味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく
【完結】人前で話せない陰キャな僕がVtuberを始めた結果、クラスにいる国民的美少女のアイドルにガチ恋されてた件
中島健一
青春
織原朔真16歳は人前で話せない。息が詰まり、頭が真っ白になる。そんな悩みを抱えていたある日、妹の織原萌にVチューバーになって喋る練習をしたらどうかと持ち掛けられた。
織原朔真の扮するキャラクター、エドヴァルド・ブレインは次第に人気を博していく。そんな中、チャンネル登録者数が1桁の時から応援してくれていた視聴者が、織原朔真と同じ高校に通う国民的アイドル、椎名町45に属する音咲華多莉だったことに気が付く。
彼女に自分がエドヴァルドだとバレたら落胆させてしまうかもしれない。彼女には勿論、学校の生徒達や視聴者達に自分の正体がバレないよう、Vチューバー活動をするのだが、織原朔真は自分の中に異変を感じる。
ネットの中だけの人格であるエドヴァルドが現実世界にも顔を覗かせ始めたのだ。
学校とアルバイトだけの生活から一変、視聴者や同じVチューバー達との交流、eスポーツを経て変わっていく自分の心情や価値観。
これは織原朔真や彼に関わる者達が成長していく物語である。
カクヨム、小説家になろうにも掲載しております。
幼馴染をわからせたい ~実は両想いだと気が付かない二人は、今日も相手を告らせるために勝負(誘惑)して空回る~
下城米雪
青春
「よわよわ」「泣いちゃう?」「情けない」「ざーこ」と幼馴染に言われ続けた尾崎太一は、いつか彼女を泣かすという一心で己を鍛えていた。しかし中学生になった日、可愛くなった彼女を見て気持ちが変化する。その後の彼は、自分を認めさせて告白するために勝負を続けるのだった。
一方、彼の幼馴染である穂村芽依は、三歳の時に交わした結婚の約束が生きていると思っていた。しかし友人から「尾崎くんに対して酷過ぎない?」と言われ太一に恨まれていると錯覚する。だが勝負に勝ち続ける限りは彼と一緒に遊べることに気が付いた。そして思った。いつか負けてしまう前に、彼をメロメロにして告らせれば良いのだ。
かくして、実は両想いだと気が付かない二人は、互いの魅力をわからせるための勝負を続けているのだった。
芽衣は少しだけ他人よりも性欲が強いせいで空回りをして、太一は「愛してるゲーム」「脱衣チェス」「乳首当てゲーム」などの意味不明な勝負に惨敗して自信を喪失してしまう。
乳首当てゲームの後、泣きながら廊下を歩いていた太一は、アニメが大好きな先輩、白柳楓と出会った。彼女は太一の話を聞いて「両想い」に気が付き、アドバイスをする。また二人は会話の波長が合うことから、気が付けば毎日会話するようになっていた。
その関係を芽依が知った時、幼馴染の関係が大きく変わり始めるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる