上 下
63 / 70
最終章 カップルYouTuber、決意の……

第63話 林間学校のやり直し

しおりを挟む
 オレたちは今、星梨セイナおばさんのレンタカーでキャンプ場を目指している。先導するのは、小春コハルさんら森本モリモト家ご一行。関西YouTuber、『タコ足配線』の面々だ。

「アタシ、タコ足配線の人と生でしゃべるの初めて。いつもリモートだし」

「関西ローカルの買い物番組を教えてもらったのも、リモートだったよね」

 モミジが、夢希ムギと話しながら興奮している。

「ファンだったのか?」

「ずっとたこ焼き食べたくてさ」

「絶品だったからな。食べる機会があったら、ぜひ食ってみてくれ」

 多分だが鉄板か、たこ焼き器なども用意しているはずだ。

「子どもたちも、夏休みの自由研究で屋台を作ったらしいぞ」

「見た見た! 動画で見せてもらった。案外本格的でさ、でも大五郎台車をベースに作っちゃったから、体育館に入らねえって怒られたんだよね」

 オレは夢希とモミジの三人で、ゲラゲラと笑い合う。

「どうしたの、快斗カイト? しんみりしちゃって」

 夢希が心配してくれた。

「そうだよ。こんな雑談がしたかったんだよ、オレたちは。なあ夢希」

「うん、だよね」

 二人で、当時を思い起こす。

「どしたん、ふたりとも?」

「いやさ、実はオレたち、林間学校でロクな思い出がないんだよ」

 
 オレと夢希ムギは、同じ中学である。

 当時、オレたちは林間学校でキャンプをする……はずだった。

 しかし、当時はゲリラ豪雨に見舞われてしまう。山の天気は変わりやすい。だが学校側は、油断していたのである。

 おかげでキャンプは中止に。コテージでおとなしくすることを余儀なくされた。弾丸宿泊だったので、他の客と混ざってしまったのである。
 自分たちで作るはずだったカレーも、宿泊施設のものをいただいた。

 教員は責任をなすりつけ合い、あまりいい思い出がない。

 学校から支給されたメスティンも、色褪せて見えたのを覚えている。

 だからオレと夢希は、ずっとやり直したいと思っていた。キャンプを、つまらない思い出にしたくない。

 今日こそ、リベンジを果たしたかった。



「ああ、あるよね。そういうときってさ。不運は重なるんよ。アタシは、修学旅行とか言っていないけど」

「お前は、休学していたんだよな」

 モミジは、もっと思い出がないんだ。

「だからさ、今日はユノともムギとも遊ぶから。楽しみなんだよね」

「おっ。存分に楽しもう」

「夜はテントで、女子トークしようよ」

 夢希と、モミジがお菓子をシェアし合いながら盛り上がる。

「あ、そうそう。最終日にはちゃんと返すから。ムギのこと」

「ん?」

「なんでもなーい」

 なぜか、モミジは夢希とニヤニヤし始めた。 

「サービスエリアによりますよー」

 運転をベニマル先生と交代するため、星梨さんがサービスエリアに車を入れる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

雌犬、女子高生になる

フルーツパフェ
大衆娯楽
最近は犬が人間になるアニメが流行りの様子。 流行に乗って元は犬だった女子高生美少女達の日常を描く

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

【R15】【第一作目完結】最強の妹・樹里の愛が僕に凄すぎる件

木村 サイダー
青春
中学時代のいじめをきっかけに非モテ・ボッチを決め込むようになった高校2年生・御堂雅樹。素人ながら地域や雑誌などを賑わすほどの美しさとスタイルを持ち、成績も優秀で運動神経も発達し、中でもケンカは負け知らずでめっぽう強く学内で男女問わずのモテモテの高校1年生の妹、御堂樹里。親元から離れ二人で学園の近くで同居・・・・というか樹里が雅樹をナチュラル召使的に扱っていたのだが、雅樹に好きな人が現れてから、樹里の心境に変化が起きて行く。雅樹の恋模様は?樹里とは本当に兄妹なのか?美しく解き放たれて、自由になれるというのは本当に良いことだけなのだろうか? ■場所 関西のとある地方都市 ■登場人物 ●御堂雅樹 本作の主人公。身長約百七十六センチと高めの細マッチョ。ボサボサ頭の目隠れ男子。趣味は釣りとエロゲー。スポーツは特にしないが妹と筋トレには励んでいる。 ●御堂樹里 本作のヒロイン。身長百七十センチにIカップのバストを持ち、腹筋はエイトパックに分かれる絶世の美少女。芸能界からのスカウト多数。天性の格闘センスと身体能力でケンカ最強。強烈な人間不信&兄妹コンプレックス。素直ではなく、兄の前で自分はモテまくりアピールをしまくったり、わざと夜に出かけてヤキモチを焼かせている。今回新たな癖に目覚める。 ●田中真理 雅樹の同級生で同じ特進科のクラス。肌質や髪の毛の性質のせいで不細工扱い。『オッペケペーズ』と呼ばれてスクールカースト最下層の女子三人組の一人。持っている素質は美人であると雅樹が見抜く。あまり思慮深くなく、先の先を読まないで行動してしまうところがある。

処理中です...