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第九章 おひとりさまYouTuber ふたりきり

第54話 高熱

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快斗カイト、大丈夫?」

 制服姿の夢希ムギが、寝ているオレに声をかけてくる。

「いや、もうダメだな」

 オレは今日、学校を休んだ。カゼを引いたのである。例の流行り病ではなかったのが幸いだが。

 星梨セイナおばさんは、朝から出張だ。事務所内で、トラブルがあったらしい。

「感染源はわかる?」

「うーん、突然雨にやられたのがヤバかったな」

 秋になって、天気が急変することが増えた。その影響を、モロに食らってしまったらしい。昨日から熱を出し、病院で処方せんをもらって帰ってきた。

「食欲はある? ない場合は、ムリして食べないほうがいいんだって」

 胃が消化にエネルギーを使うせいで、ウイルス撃退に身体が集中できないらしい。なので、ムリに食わないほうがいいのだ。水さえ飲んでいれば、平気だという。

「おくすりとお水をテーブルに置いておくから、あとは自分で」

「すまねえ。一日寝ていたらよくなると思うから、オレは気にしないで行ってくれ」

「うん。行ってきます」

 手を握った後、名残惜しそうな顔で部屋を出た。

 オレは、少し横になる。

 午後になって、トイレに立った。

「お?」

 冷蔵庫に書き置きがある。

「食欲が戻ったら、食べて」

 ドアを開くと、耐熱容器に手作りのおかゆが。容器のまま、レンチンで食べられるタイプだ。となりには、プリンもある。

 オレがムリして食っちまうと思って、話さなかったんだな。

 たしかに出ていく前に伝えられていたら、這ってでも食いに向かっただろう。せっかく夢希が、オレのために作ってくれたものだぞ。食わずに死ねるかと。

 ありがたい。これは夕飯にして、スポドリだけいただく。今は静養するか。おかゆをおいしく食えるようになるまで。

 汗まみれになったので、新しいスウェットに着替えた。

 汚れ物を洗濯機へ入れるため、トボトボと更衣室へ。

「ひゃあ!」

 なんと、下着姿の夢希がいた。

「す、すまん!」

 オレは慌てて、ドアを閉める。

「悪かった。帰ってるって思ってなくて!」

「こっちこそ、ごめん。台風で急に帰宅指示が出ちゃって。でも濡れちゃった」

「台風?」

 TVをつけた。

 たしかに、『台風接近』と報道されている。

 テレビ番組に興味がないと、天気もわからないものだ。

「明日、学校が休みになるって」

 台風は去っていくが、交通がマヒした影響で、先生が来られない。

「大変だな」

 まあ、オレのスマホにも、学校から「明日は休校」と指示が出た。

「オレの学校も、休みだってよ」

 続いて、星梨おばさんからメッセが。台風で、帰れなくなったとのこと。

「じゃあ今日は、おうちで二人きりだね」

 ドア越しに、胸が熱くなる会話を続ける。
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