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第七章 次のコラボはバーチャルからの刺客!?

第43話 マルチチューバー

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 モミジは、ぜひオレたちにマルチチューバーにならないかと持ちかけてきた。顔出しなしでも、バーチャルアバターでも、活動できるという。

「でも、予算とか大変なんじゃあ」

「実はですね。もうすでに、アバターもできあがっているんですよ」

 ベニマル先生が、ノートPCを用意した。
 メガネの男女が、画面に映っている。

「これが、オレたちですか?」

 野暮ったいオレの顔も、なんだかシュッとした感じだ。ベニマル先生のタッチのおかげだろう。

「はい。細かいクオリティはまだ考えている途中ですが」

 せっかくだから、動かしてみようとなった。

「おお、これが、バーチャル配信者の動きか」

「ゆらゆら動くのは、よく見るよね」

 見るのと、実際に演じてみるのは、結構違う。

「動画撮ってみる?」

「もちろん!」

 こんな楽しいことは、やってみなければ。

「よう、カイカイだ。今日はいつもと違うぞ。どこが違うかは、わかるよな? では、ムゥの方も見てもらおうか」

「よぉ、ムゥだ。声だけだと、ちょっと恥ずかしい」

 そうなのだ。声だけを聞いていると、なんだか自分ではないみたいなのである。ビジュアルと声が、一致していない。

「今日はバーチャル配信者の『MØMIJI』と一緒に、アバターになって動画を撮っているぞ」

 軽く質疑応答などの雑談をして、どうにかアバターに馴染もうとする。
 しかし、全然アバターが自分の身体に浸透しない。

「なんだろうな。この感じ。どう言えばいいか」

「とにかくさ、『このキャラクターの声を、自分が出していいのか』感がある」

「それだ!」

 オレの違和感を、夢希がズバリ指摘した。

「ビジュアルがよすぎて、プロに頼んだほうがいいんじゃねっていう、謎の敗北感があるんだよ」

「それな」

 ギャルと話しているせいか、夢希からギャル語が。
 いつの間にか、夢希は服装までギャル風になっている。
 モミジが、水着の下から夢希に着せた。

「生身ビジュアルも見てやってくれ。今日のムゥは、ギャル風だ」

 スカートの丈が短すぎるが、際どいビジュアルに反して中は水着だ。それにしても、ノリノリだな。

「ギャルピ」

 なんの脈絡もなく、夢希が急にギャル風ピースをする。下方向に手のひらを見せるタイプのピースサインだ。

「その服あげるわ」

「いえーい、ありがとー」

 モミジと一緒に、ピースをする。

 オレのカメラに顔を映さない角度で、二人はそれぞれのスマホで自撮りを始めた。

 二人のやりとりを、オレは黙って撮影する。

「どしたん、カイカイ?」

「いやあ、尊いなと」

『この二人で配信を、個人的に見たい』と、完全にギャラリー目線で思ってしまった。
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