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第五章 最大のピンチ! 飼い主を救うニャー

第41話 ビビのゲーム特性

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「バレていないわよね。ビビちゃんがしゃべっていたところなんて」

 美少女エルフ「ファンナおばさん」が帰っていった後、ベルさんがボクに耳打ちしてきた。

「そう思いますよ」

 もしバレていたとしても、ファンナおばさんがビビの秘密を悪用するとは思えない。
 あの人は、そんなことを楽しまない人だ。

「信用してくださって、いいと思いますよ。ファンナおばさんのこと」

「そうね。警戒はしなくていいみたい。すごい、いい人そう」

 ただ、これ以上は広めないほうがいいかもしれない。

「あの、ベルさん。この件に関しては」

「わかってるわ。もちろん、黙っておくから」

 ちゃんと、ベルさんはビビのことを秘密にしてくれるようだ。

「でも、ゲーム開発者として、黙認しておくのは」

 ビビの会話能力は、バグかも知れないのだ。

 運営に報告すべきと、ベルさんは思ってしまうのでは?

「いいわよ、そんなの。報告しなくても」

 これはあくまでも、個人的な事情によるバグに過ぎない。報告の必要はないと、ベルさんは判断してくれた。

「ゲームバランスの根幹に関わるなら、その限りではないけど」
 
「この間のバグみたいに、進行が止まってしまう事態が起きるかもしれません」

「そのときは、そのときに考えましょう」

 ボクと違って、ベルさんは冷静だ。

「わかりました。なにかあったら、ご報告します」

「ありがとう。でも、ビビちゃんはどうして、ゲームがうまいのかしら?」

「そこなんですよね」

 ボクはたいして、ゲームが上手い部類ではない。どちらかというと、周りに合わせてしまうタイプである。

 トワさんほどではないが、ゲームが得意であるとは言いがたかった。

『操作方法だけは、ケントご主人の動きでわかったニャー』

「よく、ボクの手の甲に乗ってきていたもんね。ビビは」

 ビビは他のネコと同じように、プレイ中のボクの手によく乗ってきた。

 ボクとしても手が温かいから、ほっておいたけど。
 
 そのときの指の動きなどを、お腹で覚えてしまったらしい。

「タッチタイピングみたいな、覚え方だね」
 
『その感覚に近いニャン。覚えちゃったら、自分でもやってみたくなったニャン』

 ボクと遊びたくて、自分で操作法をマスターしたらしい。

「ホントに、人間の子どもと同じ発想なのね」

「まったく、ビビには驚かされてばかりですよ」
 
 ビビは、どこまで強くなるんだろう?


 さらに数日後、トワさんが戻ってきた。

「お久しぶりー。ケントくーん」

 ボクの家に来て早々に、新しい耐熱容器とおかずを用意してくれる。

「先日は、ごちそうさまでした」

 トワさんに、これまで使った耐熱容器を返す。ちゃんと、洗浄済みだ。

「いえいえー。それよりカゼだったんだってー? 鈴音りんねちゃんから聞いたよー」

「トワさんのお料理で、乗り切りましたので」

「そっかー。お役に立てたらよかったよー」

「ありがとうございました」

 もしおかずを作ってもらっていなかったら、カゼの期間を乗り切れなかったかもしれない。

 もちろん、鈴音さんの看病あってのことだけど。

 あのときは、本当に辛かった。

 なにより、ビビのお世話さえできない状態だったから。

 あのまま倒れたままだったら、鈴音さんが助けてくれなかったら。
 余計に悪化して、ビビにも迷惑をかけていただろう。
 

「いよいよ、ボス戦闘だねー」
 
 ボクらが戦うボスは、【ヴァンパイア】だとか。
 ゲーム内の街周辺のアンデッドを、すべて操っているという。
 
「なんか、強そうだねー」

「強いでしょうね。でも、ボクたちなら勝てますよ」

「おー。期待しているよー」

「一度、ゲームにログインしてみてください。レア度の高い鉱石などを見つけてきたので」

「ありがとー。見てみるねー」

 直後、ボクはゲームにログインした。

 ちゃんと、トワさんもいる。

「すごいねー。レア度七〇%を引き当てるなんてー」

 ボクが見つけたのは、【紫電の金剛石】だ。ヨロイとして加工が可能だという。
 
「これでとうかなー?」
 

~~~~~ ~~~~~ ~~~~~ 

  
【ダイヤアーマー】

 紫のイカヅチを帯びた、全身を覆う鉄のヨロイ。
 鉄製の全身ヨロイに、雷属性のダイヤモンド魔法石を散りばめた。
 雷属性魔法の力により、重い鉄製ヨロイでも機敏に動ける。
 
~~~~~ ~~~~~ ~~~~~ 

 
 これ、すごい! かなり重いはずなのに、重量をあまり感じないよ。

「ありがとうございます。これ、ビビのサポートにぴったりかもしれません」

「喜んでもらえたら、なによりだよー」

 トワさんと別れて、次はスキルの見直しをする。

「【ソニックカバー】だって。これを取るね」

 動きの早い味方がいても、瞬時にカバーができるスキルらしい。

『ニャアが動き回っても、ケントご主人のカバーが間に合うニャー』

「一心同体だね」
 
『ニャアは、【ピリオド・スラスト】を取るニャー』

 アンデッドにも有効な聖属性のクリティカル攻撃を、放つことができるらしい。
 大量の魔力を消耗するので、おそらく一度だけしか使えないだろう。大量のマジックポーションをガブ飲みすればいいんだけど、そんな余裕はないだろうし。

「これで、ボクとビビの準備は万端かな?」

『いけるニャ。次のパーティ合流が待ち遠しいニャ』
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