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第三章 大家さんと三毛猫が、参戦

第20話 鉱山バグの除去

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 ボクとビビも、魔物を撃退して回る。

 ビビが刀を振り、【ライトニング・スピア】で大トカゲを貫いた。

 みんなへの攻撃を、ボクが【カバーリング】で防ぐ。

「新技をくらえ。【シールド・プレス】!」

 固まっている集団に、ボクは盾を押し付ける。
 盾でアタックして、大トカゲを倒した。

「ボクだって、攻撃を受けっぱなしじゃないよ」
 
 しかし、どんどんと大トカゲは増えていく。 
 
「囲まれたわ!」
 
 たとえ魔物に周囲を塞がれても、すしおくんは動じない。ネコヒップアタックなど、肉弾戦で相手を倒していく。

 あれだけいた大トカゲの集団を、ほぼ一匹で倒してしまうとは。

 ふたりとも、前衛肉体派のようだけど……。

「おかしいなー。魔法使い寄りのモンクにしたはずなんだけど」

 そっか、たしかに。

「ちょっとすしおくん、チェックさせてねー」

 ボクはすしおくんのステータス表を、確認してみた。
 
 なるほど。すしおくんはヒップアタックで、土魔法の【アースクエイク】を起こしていたのか。

「ということは、すしおはちゃんと、魔法を使ってた?」

「魔力を消費しているから、間違いありません」 
 
 至近距離でヒップアタック土魔法とか、すごいね。

「ボクたちは総じて、全体攻撃の手段に乏しいから、全体攻撃魔法が使えるすしおくんは大活躍できますよ」

「そっかー。よかったねー、すしおー」

 トワさんがおやつ代わりに、チューブ型ポーションをすしおくんに舐めさせる。

 すしおくんも、おやつを食べているときだけは積極的だ。
 
「でもケント、これだけの魔物が現れたってことは」

「はい。魔物が溢れてくるバグの傾向かもしれません」

 この間、ベルさんを助けたときも、魔物が大量発生した。

 バグには、魔物を呼び寄せる作用があるのかもしれない。

「でも、バグが見当たらないわ」

 たしかに、バグは発生している。
 すり抜けられる壁も、見つけた。
 ボス部屋の前にいるのだが、入れない。
 本当に、進行不能バグは起きていた。
 
 ただ、原因がわからない。

 どこかにバグの元となる、モザイク状のエフェクトがあるはずなんだけど。

「適当に掘って、探そうか?」

 ツルハシを持って、トワさんがベルさんに語りかけた。

「そうしてもらえる?」

「おっけー。なにかあったら、よろしくね」

 さっそくトワさんは、ツルハシで地面や壁を掘り出す。

「異常はないわ」

 バグの出てきそうなポイントを、重点的に探した。
 
 トワさんがあちこちを掘り、ベルさんが掘った跡を警戒する。

 そういった作業を、繰り返す。

 みるみるうちに、トワさんの強化に必要な素材が集まってきた。

 おやつを食べてお腹がいっぱいになったすしおくんも、気まぐれに動き出す。なにか、ネコ独特の感覚が働いたみたい。

「すしおーっ、遠くに行ったらダメだよー」

「ボクとビビが見ていますから、安心してください」

 トワさんはベルさんに任せて、ボクはすしおくんの様子を伺った。

「ビビ、すしおくんは何かを感じたのかな?」

『かもしれないニャ。ここのバグは、かなり厄介な現象みたいニャ。すしおもできるだけ、大家さんを遠ざけたいみたいニャー』
 
 すしおくんなりに、飼い主を気遣っているみたいだね。

 突然、すしおくんがダッシュした。

 そこにはただ、岩壁があるだけ。
 
『ん、すしおが、なにかを見つけたみたいニャー』

 ビビも、一緒に走り出す。

「待って、ビビ!」

 ボクもつられて、駆け出した。

 すしおくんは、一心不乱に壁に爪を立てている。

「ここにバグがあると、すしおくんは睨んだんだね?」

『そうみたいニャー』

 一旦すしおくんをどかせて、ボクは壁に剣を突き立てた。

 出たぞ。モザイクだ!

「よし。出ました! ベルさん!」

 ボクが呼びかけると、ベルさんが駆けつける。

「見つけたのね、ケント!」

 ベルさんは手持ちの銃とは違った形の、拳銃を手にした。

「みんな、離れて! ナイン!」

 ナインくんがベルさんの合図に合わせて、ボクたちの壁になってくれる。

 ターンッ、と甲高い音が、ダンジョンに鳴り響く。

 白黒の銃弾が、モザイク状のエフェクトの中に消えていった。

 モザイクが光って、砕け散る。

「これで、バグは除去できたと思うわ」

 仕事を終えたベルさんが、ステータス画面からギルドへ報告のメールを打つ。

「ケントくん、すごいねー」

「すごいのは、すしおくんです」

 ボクは、すしおくんを撫でた。

「あら?」
 
 すしおくんはボクの手からすり抜けて、飼い主であるトワさんの元へ。

「おーっ。よしよし。甘えん坊さんだねー」
 
 終始ムスッとしながらも、トワさんに撫でられて気持ちよさそうだった。

 やっぱり、飼い主さんのほうがいいよね。

「たしかに、バグが除去された返答が来たわ。あとは、ボスだけよ」

「はい。あとベルさん、なにか変わったことはありませんか?」

「変わったこと?」

 バグを除去したことで、ビビはボクと話せる力を得た。

 ベルさんにも、そんな力が備わったのではないかと思っただけど。

「なんともないわ。ただ、大幅にレベルが上がったくらいかしら?」

 バグ取りは、ぶっちゃけボス撃破より大量の経験値をもらえるみたい。

 とはいえ、ベルさんにペットと話す能力は手に入らなかったようだ。
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