11 / 47
第二章 DT、JKと宿屋で二人きりに!?
JKとDTが二人きり。何も起きないはずもなく!?
しおりを挟む
「これ、食べていいの?」
ラタンチェアに座って、ヒナマルはチキンをつまむ。
「ルームサービスだって。部屋が空いてないお詫びにくれたの」
「やった。お夜食ってあんまり食べないんだけど、いただきまーす」
風呂上がりでポカポカしている身体に、冷えた果物はさぞおいしかろう。
「ボクもお風呂いただきます」
「食べてていい?」
「全部食べていいよ」
「わーい。ミニちゃん食べよ食べよ!」
リスと一緒に、チキンと果物を分け合う。
「うーん。このチキン香草で焼いてるね。口に入れると香りが鼻から抜ける」
さて、どうするか。
「あの、服を脱ぎたいんだけど?」
「どうぞどうぞ」
まあ、ロバートも見てしまったし。
若干隠しつつ服を脱いでいく。
自意識過剰すぎたか。二人はロバートの裸体なんかに関心がないらしい。チキンを食べるのに夢中だ。
ロバートも、身体の汚れをお湯で落とす。
頭の中は、ヒナマルの裸体でいっぱいだ。
どうしろというのだ?
ヒナマルはまだ若い。
それどころか、自分は許可なく呼び出してしまったのである。
人さらい同然に。
なのに、ヒナマルは平然として、祖母の魂が入ったリスとたわむれている。
怖くないのか?
「遅かったね」
「考え事をしていたから」
風呂から上がったロバートが、ヒナマルと向かいのラタンチェアに座る。
「お風呂上がりも、パーカーなんだね?」
「これが一番、落ち着くんだ。人の目を気にしなくていいから」
ロバートは、モコモコしたローブを着ている。
「寝るのに視線が気になるの?」
「ああ。誰が命を狙っているかわからない」
「あたしたち以外、誰もいないよ」
ヒナマルが、辺りを見回す。
「それでも、気になるんだよ」
「意外とビビりなんだね」
ヒナマルがマスカットを、ロバートに向けて放り投げる。
「用心深いだけさ」と、ロバートも口で受け止めた。
「いつもそんなに、張り詰めてるん?」
また、マスカットが飛んでくる。
「まあね」
再度、口でキャッチした。
「子供の頃って、どんなだったの?」
「ずっと、こんなんだったよ」
今度はチキンが飛んでくる。
さすがに手を使う。
ロバートは、子爵位を持つ騎士の次男として生まれた。
身内には祖母、両親と、二つ歳上の兄、五つ歳下の妹がいる。
元々、生身の世界より空想が好きで、英雄譚や魔王隆盛の時代などに思いを馳せることが多い子どもに育つ。
貴族の帝王学を学ぼうという時期に、魔導書やモンスター関連の書物ばかり読んでいた。
「無愛想な倅」
「私が産んだのに、誰にも似ていない」
「一人好きで、コミュニケーションが取れない弟」
「ヒーロー限界オタなお兄ちゃん」
肉親からも色々と言われてきたが、ロバートはまったく気にしていない。
家業は兄が継ぐ。
妹が婿を迎えてもいい。
そのため、出来損ないのロバートは放任された。
騎士道にあまり熱心ではないことに手を焼いた両親は、彼を祖母である魔女ミニムの元へ預ける。
水を得た魚のように、ロバートはメキメキと頭角を現す。
そんな彼が、魔王討伐するほどの腕前を持つのに、さして時間はかからなかった。
ただしその熱心さは、彼のコミュ障をさらに悪化させていく。
口を開けば、「ダンジョンの構造」や「モンスターの生態」などを話題にする。
そのため今でも、女性から避けられることが多い。
「キミはどうだったんだい? モテモテだったろうね」
卑屈気味に、ロバートは話をふる。
「あたし、友だちあんまりできなくてさ」
雇われ店長とはいえ、普通の家庭よりは裕福だ。
ヒナマルは周りから浮いていたという。
心を許せる相手は、さしていなかったらしい。
「中学の時に、親友は多少いたんだよ。けど、離れ離れになっちゃってさ」
また、高校で関係の作り直しになってしまった。
意外だったのは、誰とも交際経験がないことである。
「男からは結構、言い寄られたよ。男を紹介されたこともあった。でもさ、誰もピンとこなかった」
見る目があるというより、気を許せる相手でないと付き合う気にはなれなかったらしい。
「ただ付き合うなら、できたかもしれない。けど、なんか違うんだよなあってさ。考え方、古いかな?」
「いや。健全だと思うよ」
人付き合いに慎重なのは、悪いことじゃないと思う。
「でも、あんたは違うんだよねぇ。ビビッときちゃった」
「どうして、ボクは平気なんだよ?」
また祖母が、なにか仕掛けをしたのだろうか?
「なんかカワイイ」
「ボクが? まさか!」
ロバートは首を振る。
「師匠の手引じゃないでしょうね?」
『人聞きの悪い事を言うでない。今の言葉は、ヒナマルの本心じゃ』
気まずいながらも、ロバートは感謝の言葉を引っ張り出す。
「ごめんな。気を悪くする様な質問をした」
「いいって。もー、そういうとこがカワイイっての」
「ありがとう」
ここで下手に言い返すと、またボロが出そうだ。
素直に受け止めよう。
「じゃあ」
「もう、寝なさい」
「えー」
つまらなさそうに、ヒナマルは口を尖らせる。
「どうするかは、明日考えるから」
ダブルになっていたベッドを引き離し、シングルにした。
ロバートはヒナマルに背を向けて、わざとらしく寝息を立てる。
モゾモゾと、背中に温かいものを感じた。
「いやいや、自分のベッドで寝てね!」
ロバートが言うと、ヒナマルはピョンと飛び退く。
ラタンチェアに座って、ヒナマルはチキンをつまむ。
「ルームサービスだって。部屋が空いてないお詫びにくれたの」
「やった。お夜食ってあんまり食べないんだけど、いただきまーす」
風呂上がりでポカポカしている身体に、冷えた果物はさぞおいしかろう。
「ボクもお風呂いただきます」
「食べてていい?」
「全部食べていいよ」
「わーい。ミニちゃん食べよ食べよ!」
リスと一緒に、チキンと果物を分け合う。
「うーん。このチキン香草で焼いてるね。口に入れると香りが鼻から抜ける」
さて、どうするか。
「あの、服を脱ぎたいんだけど?」
「どうぞどうぞ」
まあ、ロバートも見てしまったし。
若干隠しつつ服を脱いでいく。
自意識過剰すぎたか。二人はロバートの裸体なんかに関心がないらしい。チキンを食べるのに夢中だ。
ロバートも、身体の汚れをお湯で落とす。
頭の中は、ヒナマルの裸体でいっぱいだ。
どうしろというのだ?
ヒナマルはまだ若い。
それどころか、自分は許可なく呼び出してしまったのである。
人さらい同然に。
なのに、ヒナマルは平然として、祖母の魂が入ったリスとたわむれている。
怖くないのか?
「遅かったね」
「考え事をしていたから」
風呂から上がったロバートが、ヒナマルと向かいのラタンチェアに座る。
「お風呂上がりも、パーカーなんだね?」
「これが一番、落ち着くんだ。人の目を気にしなくていいから」
ロバートは、モコモコしたローブを着ている。
「寝るのに視線が気になるの?」
「ああ。誰が命を狙っているかわからない」
「あたしたち以外、誰もいないよ」
ヒナマルが、辺りを見回す。
「それでも、気になるんだよ」
「意外とビビりなんだね」
ヒナマルがマスカットを、ロバートに向けて放り投げる。
「用心深いだけさ」と、ロバートも口で受け止めた。
「いつもそんなに、張り詰めてるん?」
また、マスカットが飛んでくる。
「まあね」
再度、口でキャッチした。
「子供の頃って、どんなだったの?」
「ずっと、こんなんだったよ」
今度はチキンが飛んでくる。
さすがに手を使う。
ロバートは、子爵位を持つ騎士の次男として生まれた。
身内には祖母、両親と、二つ歳上の兄、五つ歳下の妹がいる。
元々、生身の世界より空想が好きで、英雄譚や魔王隆盛の時代などに思いを馳せることが多い子どもに育つ。
貴族の帝王学を学ぼうという時期に、魔導書やモンスター関連の書物ばかり読んでいた。
「無愛想な倅」
「私が産んだのに、誰にも似ていない」
「一人好きで、コミュニケーションが取れない弟」
「ヒーロー限界オタなお兄ちゃん」
肉親からも色々と言われてきたが、ロバートはまったく気にしていない。
家業は兄が継ぐ。
妹が婿を迎えてもいい。
そのため、出来損ないのロバートは放任された。
騎士道にあまり熱心ではないことに手を焼いた両親は、彼を祖母である魔女ミニムの元へ預ける。
水を得た魚のように、ロバートはメキメキと頭角を現す。
そんな彼が、魔王討伐するほどの腕前を持つのに、さして時間はかからなかった。
ただしその熱心さは、彼のコミュ障をさらに悪化させていく。
口を開けば、「ダンジョンの構造」や「モンスターの生態」などを話題にする。
そのため今でも、女性から避けられることが多い。
「キミはどうだったんだい? モテモテだったろうね」
卑屈気味に、ロバートは話をふる。
「あたし、友だちあんまりできなくてさ」
雇われ店長とはいえ、普通の家庭よりは裕福だ。
ヒナマルは周りから浮いていたという。
心を許せる相手は、さしていなかったらしい。
「中学の時に、親友は多少いたんだよ。けど、離れ離れになっちゃってさ」
また、高校で関係の作り直しになってしまった。
意外だったのは、誰とも交際経験がないことである。
「男からは結構、言い寄られたよ。男を紹介されたこともあった。でもさ、誰もピンとこなかった」
見る目があるというより、気を許せる相手でないと付き合う気にはなれなかったらしい。
「ただ付き合うなら、できたかもしれない。けど、なんか違うんだよなあってさ。考え方、古いかな?」
「いや。健全だと思うよ」
人付き合いに慎重なのは、悪いことじゃないと思う。
「でも、あんたは違うんだよねぇ。ビビッときちゃった」
「どうして、ボクは平気なんだよ?」
また祖母が、なにか仕掛けをしたのだろうか?
「なんかカワイイ」
「ボクが? まさか!」
ロバートは首を振る。
「師匠の手引じゃないでしょうね?」
『人聞きの悪い事を言うでない。今の言葉は、ヒナマルの本心じゃ』
気まずいながらも、ロバートは感謝の言葉を引っ張り出す。
「ごめんな。気を悪くする様な質問をした」
「いいって。もー、そういうとこがカワイイっての」
「ありがとう」
ここで下手に言い返すと、またボロが出そうだ。
素直に受け止めよう。
「じゃあ」
「もう、寝なさい」
「えー」
つまらなさそうに、ヒナマルは口を尖らせる。
「どうするかは、明日考えるから」
ダブルになっていたベッドを引き離し、シングルにした。
ロバートはヒナマルに背を向けて、わざとらしく寝息を立てる。
モゾモゾと、背中に温かいものを感じた。
「いやいや、自分のベッドで寝てね!」
ロバートが言うと、ヒナマルはピョンと飛び退く。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話
赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)
女神の白刃
玉椿 沢
ファンタジー
どこかの世界の、いつかの時代。
その世界の戦争は、ある遺跡群から出現した剣により、大きく姿を変えた。
女の身体を鞘とする剣は、魔力を収束、発振する兵器。
剣は瞬く間に戦を大戦へ進歩させた。数々の大戦を経た世界は、権威を西の皇帝が、権力を東の大帝が握る世になり、終息した。
大戦より数年後、まだ治まったとはいえない世界で、未だ剣士は剣を求め、奪い合っていた。
魔物が出ようと、町も村も知った事かと剣を求める愚かな世界で、赤茶けた大地を畑や町に、煤けた顔を笑顔に変えたいという脳天気な一団が現れる。
*表紙絵は五月七日ヤマネコさん(@yamanekolynx_2)の作品です*
【完結】投げる男〜異世界転移して石を投げ続けたら最強になってた話〜
心太
ファンタジー
【何故、石を投げてたら賢さと魅力も上がるんだ?!】
(大分前に書いたモノ。どこかのサイトの、何かのコンテストで最終選考まで残ったが、その後、日の目を見る事のなかった話)
雷に打たれた俺は異世界に転移した。
目の前に現れたステータスウインドウ。そこは古風なRPGの世界。その辺に転がっていた石を投げてモンスターを倒すと経験値とお金が貰えました。こんな楽しい世界はない。モンスターを倒しまくってレベル上げ&お金持ち目指します。
──あれ? 自分のステータスが見えるのは俺だけ?
──ステータスの魅力が上がり過ぎて、神話級のイケメンになってます。
細かい事は気にしない、勇者や魔王にも興味なし。自分の育成ゲームを楽しみます。
俺は今日も伝説の武器、石を投げる!
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる