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第三章 過去との決別

最終話 引っ越しのマカイ

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 翌日、私は継母たちと、船で実母の墓参りをした。

 元気にやっていると、実母の墓に報告する。

「ついてきてくれて、ありがとう。母さん」

 数日の旅なのに、継母は付き添ってくれた。

「いいのよ、アンパロ。私だって、あの方にはお世話になったんだから」

 その後、継母の引越し先へ。

 母によると、私がもう働かなくていいくらい蓄えがあるらしい。

 弟と妹を学校から卒業させても、まだ余るほどだという。

「だから、あなたはなんの心配もないの」

 あと、祖父が残した遺産についても、弁護士と話し合ったそうである。

「あなたは、お義父さんの直接の子どもでしょ? だから相当入ってくるのよ。夫は、それを独占しようとしたけど、犯罪者になったから全部没収されたの」

 手続を済ませるだけで、私にはかなりの金額が入るという。

 でも、私は断った。

「いいよ。母さんと、兄と姉で分けてよ」
「なにもいらないの?」

 わたしは、祖父がくれた知識があるからいいのだ。お金より、ずっと大切なものである。

「ここが、引越し先よ」

 母は南の大陸に行って、小さな港のカフェをするとか。
 儲けを考えない、ほぼボランティア的な店だそうだ。

 問題ないのか聞いたら、不動産として商家向けの別荘を貸し出すのでそれで結構な額が出るとか。

「もう、お金を稼ぐのに疲れちゃったの。トントンでいいのよ」

 母はお金の心配をせず、つましく暮らしていきたいという。

 荷物をムーファンと整理しながら、ここで母が楽しく過ごすであろう日々を想像する。ささやかながら、きっと充実した日々を送るに違いない。

「準備できたよ」

 私がカウンターを拭いて、作業は終了した。事前に社長とムーファンで荷物をまとめていたので、私は母たち一家の私物を家に整理するだけだ。

「あなたはどう? 私についてくる気はない?」

 母の仕事は、手伝わなくてもいいという。


「私は、ここがいい」


 引っ越しのマカイこそ、私の居場所だ。


「大変なんじゃないの? お賃金だって」
「お金じゃないんだよ。私は、ここで色々と教わった。『底辺の仕事』だなんて、バカにされたことだって。でもさ、底辺の仕事なんて、ないんだよ」

 みんなそれぞれ関わっていて、繋がっている。

 だから、仕事に優劣なんてないのだ。

 祖父の仕事も、誰かを繋げていた。歴史を紐解くことによって、後世に何が大切化を伝えること。それが祖父のやりたかったことなのだろう。今になって、やっとわかった。

 私の仕事も、誰かを繋げていると知れたから。

 引っ越し業務をしている限り、私はひとりぼっちじゃない。

「それが、あなたの答えなのね? わかったわ。もう止めない。あなたは、あなたの道を行きなさい」
「はい。ありがとうお母さん」

 母との別れもあっさりと終えて、私は次の顧客に会いに行く。

「アンパロは、お母さんと分かれて寂しくないの?」
「ないっていったらウソになるよ。でも、今はこの仕事こそ、私がやりたいことだから」

 私は、引っ越しのマカイの従業員だ。

「アンパロ、馬車の用意や。次は寒い国やで」
「はいっ。今、準備します!」

                           (おしまい)
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