上 下
26 / 48
学食でお造り!? ヌシ釣り、二夜連続!

第26話 他校の事情と、塩ラーメン

しおりを挟む
「くはああ! イクタのおっちゃん、塩ラーメン最っ高!」

 ミュンが、丼の中身を飲み干した。

 ラーメンには程よい塩気と、ホタテのダシが凝縮されている。

「これはもう、ラーメンの可能性がまた広がるね!」

 ホントにラーメンが好きなんだな。

「つっても、まかないだぜ」

「本当においしいですわ。イクタも自慢なさって」

 デボラからも、太鼓判を押される。

「おじはさー。カレー以外を作らせても天才だよねー」

 プリティカまで。

 たしかに、うまい。魚介のダシと、細麺が絶妙に絡みつく。これは、病みつきになる味だ。

「ただ、これだけうまかったら、学食のラーメンなんて食えなくなるんじゃ?」

「あれは、あれでうまいんだよ。安いし、クセがない。その分、もう一度食べたくなる。何度も食べたいって気持ちにさせてくれる。それが、オーソドックスって味なんだ」

 そう言ってもらえると、こちらとしてもうれしい。

「おかわり!」

「試合前だろ? 大丈夫なのか?」

「今回は体調管理がバッチリだからな。ある程度、絞っている」

 力こぶを見せて、順調をアピールした。

 オレは、二杯目を用意する。

「おっ。毎度どうも、イクタ氏。みんなもお揃いだな?」

 店に現れたのは、キャロリネだ。ヒョウ柄のビキニを着ていると、アマゾネスっぽく見える。同じ柄の、腰蓑までつけていた。プリーストじゃなかったら、槍かモリを持っていそうだ。 

「キャロリネ、中学以来だな」

「おう。ペル・セポネではないか」

 二人が、あいさつをする。

「ペルとキャロリネの二人は、同じ中学なんだな? 親しいのか」

「そうでもない。クラスが離れていて、これといって接点はなかった。強いって話は聞いていたんだが。あたいはプリーストとして、修行中の身だ。親しくない相手とケンカなんて、してはならぬ」

 直接話したのは、今日が初めてだとか。

「お互い、緊張していてな。うまく話せなかったんだよな」

「会えてうれしいぞ、ペルよ」

「あーしもだ。よろしくな、キャロリネ」

 ペルとキャロリネが、握手を交わす。

「ちなみに、オイラは二人の一年先輩だったんだぞ」

 ふむ。エドラ、キャロリネと、ペルが同じ学校だったと。

「けど、キャロリネはエドラに敵わないって」

 さっき、プリーストの修行中は、ケンカしないと言っていたな。

「体育祭のかけっこも、体力検査も、全部負けたんだ」

 なるほど。そういう意味か。 

「ペルは今、共学の魔法学校に通っているんだよなー」

ミナミ安毘沙州アンビシャス学園』という、モンスター育成学校だという。

「わが地方屈指の、不良校でなぁ。常に諍いが耐えない」

 この間倒したスキュラも、その生徒らしい。

「殺したんだろ? 大丈夫なのか?」

「死んではいないさ。あれは召喚獣であり、術師の肉体の一部さ。本体の強さは、あんなもんじゃない」

 戦っていたら、ギリギリだったという。

「しょっちゅう、ケンカするのか?」

「まあね。昔はエイブラハム先輩……エイドリアン姐さんのお兄さんが学校を仕切っていたんだけど」

 エイブラハム卒業を期に、また学園内が荒れてしまったらしい。

「転校も、視野に入れている」

「そんなに、通っている学校がイヤか?」

「違う。見識を広めたいんだよ」

 こんな田舎学校で過ごしていたら、いつまでたってもエドラやキャロリネに追いつけない。ペルは、そう語る。

「立ち話もなんだ。ラーメンを食っていきな」

「そうさせてもらう。ズルズル……あはんっ」

 なぜか、キャロリネが喘ぎだす。

「キャロちゃん、メスの声が出てるー」

「ち、違う。これはラーメンが熱すぎて、変な声が出てしまったんだ!」

 必死で弁解するが、また「あはん」とキャロリネは艶っぽい声を出した。

「すごいですわ。イクタは料理でさえ、女性を魅了してしまうなんて」

「オーク族はすぐに臨戦態勢に入れるように、五感が発達しているのじゃ」

 デボラの疑問に、パァイが答える。

 おそらく、味覚が異常に敏感なのだろう、と。

「臨戦態勢になるとは、常に戦闘モードということですの?」

「まあ、オトナになれば、わかるじゃろうて」

 それ以上の追求に、パァイは言葉を濁した。 

「そうなんだ。おいしいものを食べると、嬌声が漏れてしまう」

 本人も、自覚があるようだな。

 プリーストになったのも、煩悩を捨て去ることが目的らしい。粗食をモットーにしているとか。しかしその分、美味に出会うと止まらなくなるそうだ。

「だからもし、主夫になりたいって男性がおいしいメシなんて作ってくれたら、あたいはもう、すぐに妊娠してしまうだろうな」

 腹が大きくなる様を想像して、キャロリネが自慢のシックスパックを撫でる。

「あたしは、アンタのたくましい肉体がうらやましいけどね」

 パピヨン・ミュンが、キャロリネのお腹をさすった。二人は、体格差が二倍近くある。

「ミュン先輩は、そのスピードと死角からの攻撃が売りだ。持ち味を活かすべきだろう」

「まあね。ないものねだりしても、仕方がないか」

「そうだ。うふ、ん」

 また感じてしまったのか。

「じゃあ、腹ごしらえも済んだし、ヌシ釣りに行くか」

 おやつ用のおにぎりを用意して、岩場まで向かうことになった。

 オレも保護者として、同伴する。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

家族全員異世界へ転移したが、その世界で父(魔王)母(勇者)だった…らしい~妹は聖女クラスの魔力持ち!?俺はどうなんですかね?遠い目~

厘/りん
ファンタジー
ある休日、家族でお昼ご飯を食べていたらいきなり異世界へ転移した。俺(長男)カケルは日本と全く違う異世界に動揺していたが、父と母の様子がおかしかった。なぜか、やけに落ち着いている。問い詰めると、もともと父は異世界人だった(らしい)。信じられない! ☆第4回次世代ファンタジーカップ  142位でした。ありがとう御座いました。 ★Nolaノベルさん•なろうさんに編集して掲載中。

伝説の魔術師の弟子になれたけど、収納魔法だけで満足です

カタナヅキ
ファンタジー
※弟子「究極魔法とかいいので収納魔法だけ教えて」師匠「Σ(゚Д゚)エー」 数十年前に異世界から召喚された人間が存在した。その人間は世界中のあらゆる魔法を習得し、伝説の魔術師と謳われた。だが、彼は全ての魔法を覚えた途端に人々の前から姿を消す。 ある日に一人の少年が山奥に暮らす老人の元に尋ねた。この老人こそが伝説の魔術師その人であり、少年は彼に弟子入りを志願する。老人は寿命を終える前に自分が覚えた魔法を少年に託し、伝説の魔術師の称号を彼に受け継いでほしいと思った。 「よし、収納魔法はちゃんと覚えたな?では、次の魔法を……」 「あ、そういうのいいんで」 「えっ!?」 異空間に物体を取り込む「収納魔法」を覚えると、魔術師の弟子は師の元から離れて旅立つ―― ――後にこの少年は「収納魔導士」なる渾名を付けられることになる。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

婚約破棄されて異世界トリップしたけど猫に囲まれてスローライフ満喫しています

葉柚
ファンタジー
婚約者の二股により婚約破棄をされた33才の真由は、突如異世界に飛ばされた。 そこはど田舎だった。 住む家と土地と可愛い3匹の猫をもらった真由は、猫たちに囲まれてストレスフリーなスローライフ生活を送る日常を送ることになった。 レコンティーニ王国は猫に優しい国です。 小説家になろう様にも掲載してます。

処理中です...