34 / 91
第二章 JKと幼なじみ人妻教師
第31話 文化祭は模擬店希望者ばかりでモメる問題
しおりを挟む
校長先生と、生徒指導の根本 里依紗を交え、取材の許可をもらう。
終業式を終えて、生徒はいないはずだ。いるとしても、文化祭の出し物を何にするか決めるクラスだけだろう。
「では、根本先生、よろしくお願いします」
「よろしくー」
孝明は営業スマイルで対処しているのに、里依紗はフレンドリーに接してくる。
幼なじみとは言え、度を超していた。
「それにしても、驚いちゃった。まさか、コーくんが記者さんなんてねー。サラリーマンだとは聞いていたけど」
「まあまあ。では、話を続けましょう」
「はいはいはーい」
咳払いして、里依紗を押さえ込む。
打ち合わせ自体は、スムーズに行われた。津村はあくまでも撮影係と天城の護衛役だ。
女性の天城がインタビュアーなら、相手も緊張しないだろうと。
主に里依紗が一方的に話しているだけだが。
この形式が組まれたのは、二〇一〇年代初期だ。
模擬店希望者があまりにも多すぎたため、生徒会が模擬店の商品にテーマを掲げた。
生徒会に採用されたら出店OKとしたそうである。
「各企業も注目しているとか」
「そうなんですよー。実際に企業へスカウトされて、そのまま就職しちゃった子もいるくらいでしてー」
里依紗がゴキゲンで、天城の質問に答えた。
「それでも学生のアイデアですからね。あまり過度に期待されても困るのですが。『老舗のまんじゅうを家庭で再現する方法』は、度肝を抜かれましたけど、その子は元料理人でしたし」
対照的に、校長は謙遜する。
「そうですねー。我々教師としては、『どれがすごかったか』よりも、『生徒が何かを考え、新しきを作り出すこと』こそ、大切かなと考えております」
里依紗も、口ではノリノリに語るが、本心は生徒の成長を何よりとしているらしい。
「ありがとうございます。ところで、我が社は新興の小さい編集社です。それなのに、快く取材に応じてくださったのは?」
「よその態度が大きかったのでー。お断りしているんですよー」
ため息と共に、里依紗が不満を漏らす。
事情は、孝明も知っていた。
某出版社の息子が来て、好意的な記事を書く代わりに生徒を紹介しろと強要してきたのである。不祥事が発覚して、出版社は営業を差し止め、そのバカ息子は警察に逮捕されたが。
「なので、信頼できる情報サイトを探しておりまして」
里依紗の期待を真っ向から裏切っている孝明は、気が気ではなかった。
「さ、左様でございますか」
まさか、生徒と親しくしている人物がいるとは思うまい。
「どうしたんです、先輩?」
「なんでもねえ」
天城の問いかけに、孝明は耳打ちで答える。
「では、次回は秋頃に数度ほどお伺い致します。よろしいでしょうか?」
「どうぞどうぞ。密着取材なさっても構いませんよー」
「それですと、生徒さんが緊張なさいます。あとですね……」
生徒の顔などは伏せると念を押す。
前回は、フリーライターの身内が身バレしてしまい、大事になった。
「もちろん、お願いします」
打ち合わせは、どうにか終わる。
車を取りに、校門へと歩く。
「こんにちはー」
大量の荷物を持った、お提げの女子生徒が、孝明の後ろを過ぎ去っていった。
「は、はい。こんにちは」
琴子と鉢合わせたくない。孝明はスタスタと早足になる。
「怯えてらっしゃいますね、先輩」
「バカ言え。不審者と思われたくないだけだ。用が済んだらさっさと出……!?」
目の前に、見知ったJKが走ってきた。
「好美《よしみ》ちゃん、持つよ」
琴子が現れ、孝明はサッと津村の影に隠れる。
お提げの少女の持つ手荷物を、琴子は半分持って上げていた。これから帰るのだろう。
「JK相手に緊張なさっていますか?」
「そんなんじゃねえよ! 帰るぞ」
知らぬ間に大声になってしまい、孝明はとっさに口を塞ぐ。
終業式を終えて、生徒はいないはずだ。いるとしても、文化祭の出し物を何にするか決めるクラスだけだろう。
「では、根本先生、よろしくお願いします」
「よろしくー」
孝明は営業スマイルで対処しているのに、里依紗はフレンドリーに接してくる。
幼なじみとは言え、度を超していた。
「それにしても、驚いちゃった。まさか、コーくんが記者さんなんてねー。サラリーマンだとは聞いていたけど」
「まあまあ。では、話を続けましょう」
「はいはいはーい」
咳払いして、里依紗を押さえ込む。
打ち合わせ自体は、スムーズに行われた。津村はあくまでも撮影係と天城の護衛役だ。
女性の天城がインタビュアーなら、相手も緊張しないだろうと。
主に里依紗が一方的に話しているだけだが。
この形式が組まれたのは、二〇一〇年代初期だ。
模擬店希望者があまりにも多すぎたため、生徒会が模擬店の商品にテーマを掲げた。
生徒会に採用されたら出店OKとしたそうである。
「各企業も注目しているとか」
「そうなんですよー。実際に企業へスカウトされて、そのまま就職しちゃった子もいるくらいでしてー」
里依紗がゴキゲンで、天城の質問に答えた。
「それでも学生のアイデアですからね。あまり過度に期待されても困るのですが。『老舗のまんじゅうを家庭で再現する方法』は、度肝を抜かれましたけど、その子は元料理人でしたし」
対照的に、校長は謙遜する。
「そうですねー。我々教師としては、『どれがすごかったか』よりも、『生徒が何かを考え、新しきを作り出すこと』こそ、大切かなと考えております」
里依紗も、口ではノリノリに語るが、本心は生徒の成長を何よりとしているらしい。
「ありがとうございます。ところで、我が社は新興の小さい編集社です。それなのに、快く取材に応じてくださったのは?」
「よその態度が大きかったのでー。お断りしているんですよー」
ため息と共に、里依紗が不満を漏らす。
事情は、孝明も知っていた。
某出版社の息子が来て、好意的な記事を書く代わりに生徒を紹介しろと強要してきたのである。不祥事が発覚して、出版社は営業を差し止め、そのバカ息子は警察に逮捕されたが。
「なので、信頼できる情報サイトを探しておりまして」
里依紗の期待を真っ向から裏切っている孝明は、気が気ではなかった。
「さ、左様でございますか」
まさか、生徒と親しくしている人物がいるとは思うまい。
「どうしたんです、先輩?」
「なんでもねえ」
天城の問いかけに、孝明は耳打ちで答える。
「では、次回は秋頃に数度ほどお伺い致します。よろしいでしょうか?」
「どうぞどうぞ。密着取材なさっても構いませんよー」
「それですと、生徒さんが緊張なさいます。あとですね……」
生徒の顔などは伏せると念を押す。
前回は、フリーライターの身内が身バレしてしまい、大事になった。
「もちろん、お願いします」
打ち合わせは、どうにか終わる。
車を取りに、校門へと歩く。
「こんにちはー」
大量の荷物を持った、お提げの女子生徒が、孝明の後ろを過ぎ去っていった。
「は、はい。こんにちは」
琴子と鉢合わせたくない。孝明はスタスタと早足になる。
「怯えてらっしゃいますね、先輩」
「バカ言え。不審者と思われたくないだけだ。用が済んだらさっさと出……!?」
目の前に、見知ったJKが走ってきた。
「好美《よしみ》ちゃん、持つよ」
琴子が現れ、孝明はサッと津村の影に隠れる。
お提げの少女の持つ手荷物を、琴子は半分持って上げていた。これから帰るのだろう。
「JK相手に緊張なさっていますか?」
「そんなんじゃねえよ! 帰るぞ」
知らぬ間に大声になってしまい、孝明はとっさに口を塞ぐ。
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
聖女戦士ピュアレディー
ピュア
大衆娯楽
近未来の日本!
汚染物質が突然変異でモンスター化し、人類に襲いかかる事件が多発していた。
そんな敵に立ち向かう為に開発されたピュアスーツ(スリングショット水着とほぼ同じ)を身にまとい、聖水(オシッコ)で戦う美女達がいた!
その名を聖女戦士 ピュアレディー‼︎
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる