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第二章 JKと幼なじみ人妻教師

第26話 焼き鳥はタレと塩のどっち問題 その3

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「あの子、その女優の若い頃にそっくりなんだよ。同じ黒髪ストレートでさ、性格は明るい子で」
「それでも、覚えていないと」
「たしかに可愛かった。だけどな、その女優って俺の趣味じゃなかったもん。大人! って感じじゃなくてさ」

 建一の視線が、孝明に移る。



「お前さ、この出会いは大事にしろよ。応援してる」



「いいって。そんなんじゃないから」


「JKと付き合えるって、そうそうないぞ。めんどくさいけど」
 確信を突くような発言を、建一が投げかけてきた。


「そんなに面倒くさいのか?」
「知らんけど」

 孝明のヒジが、テーブルの上でずっこける。

「とにかく、お前がうまくいくことを願ってる。俺はもうあそこへは行かない。うまそうじゃなかったし」
「実際、料理は普通だぞ。家庭料理メインだし。そこが落ち着くんだが」
「俺が寄ったのも、ただの気まぐれだしな」

 瓶ビールを飲みたくなって、入っただけだという。
 あの店の雰囲気なら、割烹着を着たママがおでんを出しつつビールを継いでくれるぞ、と。

「実際は同僚がJKとイチャイチャしながら、お好み焼きを焼いていたシーンを目撃しただけだったな」

 当てが外れたのだ。

「見間違いだ! イチャイチャなんてしてない!」
「してましたー」

 へへ、と笑いながら、建一はまたハイボールを口にする。

「それにあそこの大将はオヤジだぜ。ママなんて幻想だ」
「だったら尚更、用はねえ。うまくやれよ」
「気遣いは無用だ。付き合ってないから」

 建一が「んだよ」とヒジで孝明をつつく。

「顔に書いてるんだよ。JKを眺めながら食うメシはうまいって」
「ば、バカ!」

「へへーん。じゃあごちそうさん」
 建一が、孝明の肩を叩く。

「孝明、あの子のこと傷つけるなよ」
 店を出るなり、建一がまじめな顔になる。

「それは、心得ているつもりだ。前にやらかしたからな」

 以前、孝明は琴子を傷つけてしまった。
 あそこまで、琴子が心配してくれていたなんて。無神経だった。

「事情は知らんが、一回お互いに打ちのめされて、それでも関係続けようってんだろ? だったら脈ありじゃねえか。この期を逃すなよ」
「なんで、オマエはオレの恋愛事情を応援するんだよ?」

「いい顔になってきたからな」
 意外な回答が、建一の口から返ってきた。

「前に言ったよな。俺のことを見ていられないって。昔のお前こそ、見ていられなかったんだぜ。終始暗い顔で、何かをなくした顔になっていた。ゾンビかと思ったよ」

 友人がリストラを受けた当時か。

 孝明は、自覚していなかった。

「だから、俺は酒と美食に逃げたんだよ」
「そうだったのか」
「でも無理だった。根本的な解決にならなくて。けど、いつの間にかお前は、清々しい顔になっていた。自分で解決したとは思えない。誰か、心の支えになる人ができたんだろうなって」


 それが、琴子だと?


「あの子は、お前にとっても支えになってるんだよ」

 言葉が出ない。

「焦らず、それでいて放置せずいけよ。タイミングを逃したら、付き合いづらくなるぞ」
「別に、そこまでは」

「てことは、お前も意識してるってコトだぜ」
 建一が茶化してくる。

「んじゃま、俺は軽く飲み直すわ。ここで」
「おやすみ」


 一緒に食事をして、琴子の寂しさが紛れるならと、孝明は思っていた。

 でも、建一は違うという。孝明の方が救われているのだと。

 否定できない。孝明にとって、確かに琴子の存在は大きくなっている。
 一人で食事して分かった。
 孝明も、琴子を欲しているのだと。
 どういう感情なのかはともかく。
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