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第七問 甘酒は、夏の季語である。○か×か? ~僕たちの行く末は、○×なんかでは決められない~
問題 甘酒は、夏の季語?
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ルール上、番組研は相談してもいいことにしていた。
「○じゃないのか?」
「わたしも○かな、って」
のん、嘉穂さんの意見を、湊は腕を組みながら聞く。
「うーん。○率が高かったから、そろそろ×っぽいんだよね」
湊の推理も有り得る。これが○×の怖いところなのだ。
確率でも当てられてしまうだけに、迷いが生じる問題となると、思考が麻痺してしまう。
ここでいかに知識に裏付けされた解答を出せるか。
それも、クイズ解答者としての資質が問われる。
「ワタシも、×だと思います」
やなせ姉が、青いゼッケンのレスラーを選び、運んでもらう。
見た目よりも軽いのか、レスラーは軽々とやなせ姉を運ぶ。
やなせ姉が、ギャラリーに手を振る。
「さて、来住選手は×を選択しました。果たして正解かどうか? あーっと!」
「きゃああ!」
やなせ姉に待っていたのは、泥のプールだった。
茶色くなったやなせ姉が泥から這い出る。
正解は○だ。拳銃の所持は一九四八年、つまり昭和二三年まで適用されていた。残念。
「うーんごめーん」
ビキニを泥まみれにして、やなせ姉が帰ってくる。なのに、美しさは全く損なわれていない。泥が滴ってもいい女とはこのことだ。
ここに来て、番組研が始めて土を付けた。聖城先輩が一歩リードである。
「どんまい、先輩。ウチらも間違ってたんだから」
「気にするな、やなせ姉。間違いは誰にでもあるものなのだ」
「先輩、落ち込まないで下さい」
一人失格したとはいえ、番組研の様子は明るいものだ。
「早く海へ行きましょう。泥を落とさないと」
嘉穂さんが、やなせ姉を海へ連れて行く。
「ありがとーねー」
浅瀬から海へとダイブし、やなせ姉は身体を洗う。
「さて、これでまず一人が脱落しました。聖城先輩、今の心境はいかがなものでしょう?」
先輩は首を振る。
「特に、気にしていません」
そういう割には、妙にソワソワしている。
緊張しているだけか? はたまた余裕が生まれて早く終わらせようとしている?
僕には、聖城先輩の心理は分かりかねた。
だが、容赦なく問題は出題される。
「お見事。扇子は昔、メモ帳として使われていました。正解は○」
先輩は次の問題で難なく正解を出し、マットに身体を預けた。
番組研は未だ、先輩というクイズの巨獣との対決を余儀なくされる。
またも、のんの出番となる。
「問題。『鳩が豆鉄砲を食ったような』ということわざは、鉄砲が伝来する以前からあった」
○ゼッケンのレスラーへ向けて、のんが走って行く。
「さあ○へ行った。しかし、赤いレスラーは真っ先に泥の中へ!」
運ばれていった先は泥プールだ。のんの軽い身体が、泥のプールへと投げ飛ばされた。勢いが強すぎたのか、レスラーまで泥の中へ落ちてしまう。
「のわーっ!」
レスラーの下敷きになり、のんが泥の中でもがく。だが、起き上がれない。
「そんなわけねーだろ! 当然、正解は×です!」
レスラーに手を引かれ、ようやくのんが泥から這い上がる。
全身泥まみれで、のんは退場していく。やなせ姉と並んで、バシャバシャと海水を浴びた。まるで犬の水浴びだ。レスラーと一緒に、陸へと上がっていく。
ここで、一気に二人が脱落した。とはいえ、番組研の面々に悲壮感はない。
「問題、禁酒法時代を描いた映画『アンタッチャブル』に登場する、実在の捜査官エリオット・ネスは……アルコール中毒だった。○か×か?」
先輩は、これも悩む。腰に手を当てて、意を決したかのように駆け出した。駆け足で○のレスラーの元へ。
その通り。正解は○だ。
先輩が、白いマットの上でホッとした表情を見せた。
「聖城先輩、今の心境は?」
安堵した顔が、一瞬にして緊張した面持ちへと戻る。
「いやぁ、難しいです」
思わずといった感じで、苦笑いが浮かぶ。コメントにまで頭が働かないらしい。
今のは運で正解を勝ち取ったのか。はたまた知識を絞り出して正解を得たのか。
僕には分からない。しかし、先輩の首が繋がったのは確かである。
「正解です。たしかに、任天堂の人気キャラ、マリオの本名は、『マリオ・マリオ』です」
湊が正解し、番組研の望みを繋いだ。
「問題 モナコの街並みを再現した超豪華客船、ストリート・オブ・モナコに設置されている施設はどれ? A、ゴルフ場。B、レース場。さあどっち?」
時間いっぱいまで思案した結果、聖城先輩はBを選ぶ。
放り投げられた身体は、マットの上へ。
「正解しました。ゴーカートができる会場があります」
限られた面積でレースなんてできるのかに、悩んでいた模様である。
嘉穂さんの手番となった。
「問題。甘酒は、夏の季語である。○か×か?」
これには、聖城先輩も立ち尽くす。本当に分からないらしい。一歩一歩考え込みながら、○のゼッケンを付けたレスラーの前に。
レスラーが嘉穂さんを乱暴に担ぐ。まるで不正解一直線かのように。
「あっとこれは、勝負あったか?」
皆が、不正解なのか? と固唾を飲んで見守る。
悲鳴を上げながら、嘉穂さんが涙目になった。
しかし、無事マットへ。正解ということだ。
「甘酒は江戸時代、夏に飲まれていました。夏バテ防止の効果があるとされています。よって正解は○です。いよいよ、三巡目に突入致します。勝負はまだ分かりません!」
「○じゃないのか?」
「わたしも○かな、って」
のん、嘉穂さんの意見を、湊は腕を組みながら聞く。
「うーん。○率が高かったから、そろそろ×っぽいんだよね」
湊の推理も有り得る。これが○×の怖いところなのだ。
確率でも当てられてしまうだけに、迷いが生じる問題となると、思考が麻痺してしまう。
ここでいかに知識に裏付けされた解答を出せるか。
それも、クイズ解答者としての資質が問われる。
「ワタシも、×だと思います」
やなせ姉が、青いゼッケンのレスラーを選び、運んでもらう。
見た目よりも軽いのか、レスラーは軽々とやなせ姉を運ぶ。
やなせ姉が、ギャラリーに手を振る。
「さて、来住選手は×を選択しました。果たして正解かどうか? あーっと!」
「きゃああ!」
やなせ姉に待っていたのは、泥のプールだった。
茶色くなったやなせ姉が泥から這い出る。
正解は○だ。拳銃の所持は一九四八年、つまり昭和二三年まで適用されていた。残念。
「うーんごめーん」
ビキニを泥まみれにして、やなせ姉が帰ってくる。なのに、美しさは全く損なわれていない。泥が滴ってもいい女とはこのことだ。
ここに来て、番組研が始めて土を付けた。聖城先輩が一歩リードである。
「どんまい、先輩。ウチらも間違ってたんだから」
「気にするな、やなせ姉。間違いは誰にでもあるものなのだ」
「先輩、落ち込まないで下さい」
一人失格したとはいえ、番組研の様子は明るいものだ。
「早く海へ行きましょう。泥を落とさないと」
嘉穂さんが、やなせ姉を海へ連れて行く。
「ありがとーねー」
浅瀬から海へとダイブし、やなせ姉は身体を洗う。
「さて、これでまず一人が脱落しました。聖城先輩、今の心境はいかがなものでしょう?」
先輩は首を振る。
「特に、気にしていません」
そういう割には、妙にソワソワしている。
緊張しているだけか? はたまた余裕が生まれて早く終わらせようとしている?
僕には、聖城先輩の心理は分かりかねた。
だが、容赦なく問題は出題される。
「お見事。扇子は昔、メモ帳として使われていました。正解は○」
先輩は次の問題で難なく正解を出し、マットに身体を預けた。
番組研は未だ、先輩というクイズの巨獣との対決を余儀なくされる。
またも、のんの出番となる。
「問題。『鳩が豆鉄砲を食ったような』ということわざは、鉄砲が伝来する以前からあった」
○ゼッケンのレスラーへ向けて、のんが走って行く。
「さあ○へ行った。しかし、赤いレスラーは真っ先に泥の中へ!」
運ばれていった先は泥プールだ。のんの軽い身体が、泥のプールへと投げ飛ばされた。勢いが強すぎたのか、レスラーまで泥の中へ落ちてしまう。
「のわーっ!」
レスラーの下敷きになり、のんが泥の中でもがく。だが、起き上がれない。
「そんなわけねーだろ! 当然、正解は×です!」
レスラーに手を引かれ、ようやくのんが泥から這い上がる。
全身泥まみれで、のんは退場していく。やなせ姉と並んで、バシャバシャと海水を浴びた。まるで犬の水浴びだ。レスラーと一緒に、陸へと上がっていく。
ここで、一気に二人が脱落した。とはいえ、番組研の面々に悲壮感はない。
「問題、禁酒法時代を描いた映画『アンタッチャブル』に登場する、実在の捜査官エリオット・ネスは……アルコール中毒だった。○か×か?」
先輩は、これも悩む。腰に手を当てて、意を決したかのように駆け出した。駆け足で○のレスラーの元へ。
その通り。正解は○だ。
先輩が、白いマットの上でホッとした表情を見せた。
「聖城先輩、今の心境は?」
安堵した顔が、一瞬にして緊張した面持ちへと戻る。
「いやぁ、難しいです」
思わずといった感じで、苦笑いが浮かぶ。コメントにまで頭が働かないらしい。
今のは運で正解を勝ち取ったのか。はたまた知識を絞り出して正解を得たのか。
僕には分からない。しかし、先輩の首が繋がったのは確かである。
「正解です。たしかに、任天堂の人気キャラ、マリオの本名は、『マリオ・マリオ』です」
湊が正解し、番組研の望みを繋いだ。
「問題 モナコの街並みを再現した超豪華客船、ストリート・オブ・モナコに設置されている施設はどれ? A、ゴルフ場。B、レース場。さあどっち?」
時間いっぱいまで思案した結果、聖城先輩はBを選ぶ。
放り投げられた身体は、マットの上へ。
「正解しました。ゴーカートができる会場があります」
限られた面積でレースなんてできるのかに、悩んでいた模様である。
嘉穂さんの手番となった。
「問題。甘酒は、夏の季語である。○か×か?」
これには、聖城先輩も立ち尽くす。本当に分からないらしい。一歩一歩考え込みながら、○のゼッケンを付けたレスラーの前に。
レスラーが嘉穂さんを乱暴に担ぐ。まるで不正解一直線かのように。
「あっとこれは、勝負あったか?」
皆が、不正解なのか? と固唾を飲んで見守る。
悲鳴を上げながら、嘉穂さんが涙目になった。
しかし、無事マットへ。正解ということだ。
「甘酒は江戸時代、夏に飲まれていました。夏バテ防止の効果があるとされています。よって正解は○です。いよいよ、三巡目に突入致します。勝負はまだ分かりません!」
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