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第四章 王都の闇のあとしまつ
第26話 ドワーフのお店を見学させてもらった
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イーサクさんのお店を色々見せてもらった。
「なんでもあるんですね?」
「作業中はヒマでしょ? この店だけでも、王都に何があるかがわかるようにしているんだ」
金槌を振り下ろしながら、イーサクさんは答える。今作ってもらっているのは、新しい盾だ。
たしかに、お店の陳列具合がマップ状になっていた。
釣り竿の場所は港、魔導書の置き場所は本屋、お菓子が陳列してあるスペースは、市場だ。
ここは、小さな王都である。いきなり街なかを見て回る前に、行き先の目星をつけてもらうのが目的らしい。考えてあるんだなぁ。
「冒険者って、ガイドマップなんて見ないからさぁ。この店にいれば、自然とどの方角になにがあるか覚えるわけ」
「なるほど」
お客さんの目を引きつつ、何がしたいときにどこへいけばいいかの案内にもなっているのか。
となると、この下着類が置かれている場所は。
「これなんだ?」
マルちゃんが、ゴム風船のようなものを手に取った。
「それは……」
言いづらそうに、エリちゃんがマルちゃんに耳打ちする。
「すごいな。こんなものまであるのか」
わかりやすく、マルちゃんが赤面した。
「一個サービスしようか?」
イーサクさんが聞くと、マルちゃんはブンブンと首を横に振る。
「いや避妊具じゃなくて。アイテムを一つおまけしてやる、って言ったんだけど?」
変な誤解をしてしまって、ますますマルちゃんは苦笑いを浮かべた。
「ヘヌリおじさんを助けてくれたお礼だ。なんでも持っていっていいよ」
「じゃあ、これを」
エリちゃんは、攻撃魔法の書物を。
「あたしは、これかな」
シノビ装束を、マルちゃんは手に入れた。スリットが入って胸も足回りも際どいながら、鋼鉄より防御力が高い。
イーサクさんは作業を進める。
「あんたは?」
「タダで装備一式を作ってもらっているので、僕はいいです」
「そっか。じゃ、まずはこれを」
もうできあがったのか。
「早いですね」
「そういうスキル持ちだからさ。他の装備は時間がかかりそうだね。予備として、こいつを持っていきな」
予備のヨロイとショートソードを、僕は受け取った。これだけでも、今までの装備と比べて数倍の強さがある。
「ささ、お城へ行く時間じゃないのかい?」
そうだ。王様に呼ばれているんだよね。
「ありがとうございます。行ってきます」
「気をつけてね」
イーサクさんの工房を後にした。
「エリちゃん、いい?」
王族の血を引いているエリちゃんが、お城でどう思われるか。僕はそれが心配だ。
「ええ。ここまで来たら、どうにでもなれよ」
それにしても。
「気をつけて」、か。
「なんでもあるんですね?」
「作業中はヒマでしょ? この店だけでも、王都に何があるかがわかるようにしているんだ」
金槌を振り下ろしながら、イーサクさんは答える。今作ってもらっているのは、新しい盾だ。
たしかに、お店の陳列具合がマップ状になっていた。
釣り竿の場所は港、魔導書の置き場所は本屋、お菓子が陳列してあるスペースは、市場だ。
ここは、小さな王都である。いきなり街なかを見て回る前に、行き先の目星をつけてもらうのが目的らしい。考えてあるんだなぁ。
「冒険者って、ガイドマップなんて見ないからさぁ。この店にいれば、自然とどの方角になにがあるか覚えるわけ」
「なるほど」
お客さんの目を引きつつ、何がしたいときにどこへいけばいいかの案内にもなっているのか。
となると、この下着類が置かれている場所は。
「これなんだ?」
マルちゃんが、ゴム風船のようなものを手に取った。
「それは……」
言いづらそうに、エリちゃんがマルちゃんに耳打ちする。
「すごいな。こんなものまであるのか」
わかりやすく、マルちゃんが赤面した。
「一個サービスしようか?」
イーサクさんが聞くと、マルちゃんはブンブンと首を横に振る。
「いや避妊具じゃなくて。アイテムを一つおまけしてやる、って言ったんだけど?」
変な誤解をしてしまって、ますますマルちゃんは苦笑いを浮かべた。
「ヘヌリおじさんを助けてくれたお礼だ。なんでも持っていっていいよ」
「じゃあ、これを」
エリちゃんは、攻撃魔法の書物を。
「あたしは、これかな」
シノビ装束を、マルちゃんは手に入れた。スリットが入って胸も足回りも際どいながら、鋼鉄より防御力が高い。
イーサクさんは作業を進める。
「あんたは?」
「タダで装備一式を作ってもらっているので、僕はいいです」
「そっか。じゃ、まずはこれを」
もうできあがったのか。
「早いですね」
「そういうスキル持ちだからさ。他の装備は時間がかかりそうだね。予備として、こいつを持っていきな」
予備のヨロイとショートソードを、僕は受け取った。これだけでも、今までの装備と比べて数倍の強さがある。
「ささ、お城へ行く時間じゃないのかい?」
そうだ。王様に呼ばれているんだよね。
「ありがとうございます。行ってきます」
「気をつけてね」
イーサクさんの工房を後にした。
「エリちゃん、いい?」
王族の血を引いているエリちゃんが、お城でどう思われるか。僕はそれが心配だ。
「ええ。ここまで来たら、どうにでもなれよ」
それにしても。
「気をつけて」、か。
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