上 下
26 / 63
第四章 王都の闇のあとしまつ

第26話 ドワーフのお店を見学させてもらった

しおりを挟む
 イーサクさんのお店を色々見せてもらった。

「なんでもあるんですね?」
「作業中はヒマでしょ? この店だけでも、王都に何があるかがわかるようにしているんだ」

 金槌を振り下ろしながら、イーサクさんは答える。今作ってもらっているのは、新しい盾だ。

 たしかに、お店の陳列具合がマップ状になっていた。

 釣り竿の場所は港、魔導書の置き場所は本屋、お菓子が陳列してあるスペースは、市場だ。

 ここは、小さな王都である。いきなり街なかを見て回る前に、行き先の目星をつけてもらうのが目的らしい。考えてあるんだなぁ。

「冒険者って、ガイドマップなんて見ないからさぁ。この店にいれば、自然とどの方角になにがあるか覚えるわけ」
「なるほど」

 お客さんの目を引きつつ、何がしたいときにどこへいけばいいかの案内にもなっているのか。

 となると、この下着類が置かれている場所は。

「これなんだ?」

 マルちゃんが、ゴム風船のようなものを手に取った。

「それは……」

 言いづらそうに、エリちゃんがマルちゃんに耳打ちする。

「すごいな。こんなものまであるのか」

 わかりやすく、マルちゃんが赤面した。

「一個サービスしようか?」

 イーサクさんが聞くと、マルちゃんはブンブンと首を横に振る。

「いや避妊具じゃなくて。アイテムを一つおまけしてやる、って言ったんだけど?」

 変な誤解をしてしまって、ますますマルちゃんは苦笑いを浮かべた。

「ヘヌリおじさんを助けてくれたお礼だ。なんでも持っていっていいよ」
「じゃあ、これを」

 エリちゃんは、攻撃魔法の書物を。

「あたしは、これかな」

 シノビ装束を、マルちゃんは手に入れた。スリットが入って胸も足回りも際どいながら、鋼鉄より防御力が高い。

 イーサクさんは作業を進める。

「あんたは?」
「タダで装備一式を作ってもらっているので、僕はいいです」
「そっか。じゃ、まずはこれを」

 もうできあがったのか。

「早いですね」
「そういうスキル持ちだからさ。他の装備は時間がかかりそうだね。予備として、こいつを持っていきな」

 予備のヨロイとショートソードを、僕は受け取った。これだけでも、今までの装備と比べて数倍の強さがある。

「ささ、お城へ行く時間じゃないのかい?」

 そうだ。王様に呼ばれているんだよね。

「ありがとうございます。行ってきます」
「気をつけてね」

 イーサクさんの工房を後にした。

「エリちゃん、いい?」

 王族の血を引いているエリちゃんが、お城でどう思われるか。僕はそれが心配だ。

「ええ。ここまで来たら、どうにでもなれよ」
 
 それにしても。

「気をつけて」、か。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

【完結】ガラクタゴミしか召喚出来ないへっぽこ聖女、ゴミを糧にする大精霊達とのんびりスローライフを送る〜追放した王族なんて知らんぷりです!〜

櫛田こころ
ファンタジー
お前なんか、ガラクタ当然だ。 はじめの頃は……依頼者の望み通りのものを召喚出来た、召喚魔法を得意とする聖女・ミラジェーンは……ついに王族から追放を命じられた。 役立たずの聖女の代わりなど、いくらでもいると。 ミラジェーンの召喚魔法では、いつからか依頼の品どころか本当にガラクタもだが『ゴミ』しか召喚出来なくなってしまった。 なので、大人しく城から立ち去る時に……一匹の精霊と出会った。餌を与えようにも、相変わらずゴミしか召喚出来ずに泣いてしまうと……その精霊は、なんとゴミを『食べて』しまった。 美味しい美味しいと絶賛してくれた精霊は……ただの精霊ではなく、精霊王に次ぐ強力な大精霊だとわかり。ミラジェーンを精霊の里に来て欲しいと頼んできたのだ。 追放された聖女の召喚魔法は、実は精霊達には美味しい美味しいご飯だとわかり、のんびり楽しく過ごしていくスローライフストーリーを目指します!!

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

異世界召喚されましたが私…勇者ではありませんが?

お団子
ファンタジー
21歳OL趣味は料理 そんな私がある日突然召喚された。 勇者様?いえ、人違いです。 私勇者様ではありません。 なんだそのゴミスキルはって スキルってなんだよ!! さっさと元の世界に戻せーーー!! え?帰れない? ふざけんなーーーーー!!! こうなったら大好きな料理をしながら 便利スキルで快適に過ごしてやる!! **************** 自由すぎる感じで書いている為 色々と説明不足です なのでゆる~く見て貰えればと思います 宜しくお願いします_(。_。)_

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

無能テイマーと追放されたが、無生物をテイムしたら擬人化した世界最強のヒロインたちに愛されてるので幸せです

青空あかな
ファンタジー
テイマーのアイトは、ある日突然パーティーを追放されてしまう。 その理由は、スライム一匹テイムできないから。 しかしリーダーたちはアイトをボコボコにした後、雇った本当の理由を告げた。 それは、単なるストレス解消のため。 置き去りにされたアイトは襲いくるモンスターを倒そうと、拾った石に渾身の魔力を込めた。 そのとき、アイトの真の力が明らかとなる。 アイトのテイム対象は、【無生物】だった。 さらに、アイトがテイムした物は女の子になることも判明する。 小石は石でできた美少女。 Sランクダンジョンはヤンデレ黒髪美少女。 伝説の聖剣はクーデレ銀髪長身美人。 アイトの周りには最強の美女たちが集まり、愛され幸せ生活が始まってしまう。 やがてアイトは、ギルドの危機を救ったり、捕らわれの冒険者たちを助けたりと、救世主や英雄と呼ばれるまでになる。 これは無能テイマーだったアイトが真の力に目覚め、最強の冒険者へと成り上がる物語である。 ※HOTランキング6位

俺だけステータスが見える件~ゴミスキル【開く】持ちの俺はダンジョンに捨てられたが、【開く】はステータスオープンできるチートスキルでした~

平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人はクラスメイトたちと異世界へ召喚されてしまう。 異世界より召喚された者は神からスキルを授かるが、直人のスキルは『物を開け閉めする』だけのゴミスキルだと判明し、ダンジョンに廃棄されることになった。 途方にくれる直人は偶然、このゴミスキルの真の力に気づく。それは自分や他者のステータスを数値化して表示できるというものだった。 しかもそれだけでなくステータスを再分配することで無限に強くなることが可能で、更にはスキルまで再分配できる能力だと判明する。 その力を使い、ダンジョンから脱出した直人は、自分をバカにした連中を徹底的に蹂躙していくのであった。

転生 上杉謙信の弟 兄に殺されたくないので全力を尽くします!

克全
ファンタジー
上杉謙信の弟に転生したウェブ仮想戦記作家は、四兄の上杉謙信や長兄の長尾晴景に殺されないように動く。特に黒滝城主の黒田秀忠の叛乱によって次兄や三兄と一緒に殺されないように知恵を絞る。一切の自重をせすに前世の知識を使って農業改革に産業改革、軍事改革を行って日本を統一にまい進する。

処理中です...