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試験最終日 「食欲に勝てないとか、魔王として恥ずかしくないの?」「よわよわ胃袋❤」
協会長の煽り
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「おい、二人とも」
「は、はいっ。なんでしょう?」
「腹減ったろ? 冷めないうちに食えよ」
シチサブローが、フリオとケットシーにてんこ盛りのお肉を差し出す。
「食べていいの?」
まだ試験が続いていると思っているのか、フリオは箸を付けようとしない。
「もうガマンしなくていい。思う存分食え。お前らなら、大丈夫だ」
「うむ。おめでと。二人は立派なバディ。これからも、仲良くして欲しい」
テルルも、小さく拍手して二人を称えた。
「ありがとうございます!」
「ありがとーっ! いっただっきまーす!」
片方のフォークで、ケットシーはフリオに「あーん」する。フォーク二刀流で、自分も肉を喰らう。
フリオも、おいしそうに肉を頬張った。
「じゃああボクも、あーん」
「ありがとご主人! もぐもぐ」
フォークをケットシーから持たせてもらい、フリオはケットシーに肉をあげる。
「終わりだ。勝者は出たぜ」
「ならん! 皿を持った時点で、フリオ・ニールセンの敗北は決定だ!」
召喚士の親たちが、ケチを付け始めた。
親に煽られ、子どもたちも「そうだそうだ」と煽り立てる。
往生際の悪い野郎共だ。ああいうお偉いさんにはなりたくない。これだから貴族は。
「あうう」
皿を持ったまま、フリオはシュンとなる。
ただ一部の子どもたちは、フリオを祝福していた。王女と友人の姫騎士たちだ。数名の上位ランカーも同様である。
とはいえ、フリオに嫌悪感を示す貴族は少なくない。
「オレに任せろ」
フリオの頭に、シチサブローはポンと手を置いた。
「なんだてめえら。往生際の悪いのはどっちだ? フリオたちは、ちゃんとガマンできたのに。お貴族様ともあろう者が、平民相手に嫉妬してしまったか?」
ここぞとばかりに、シチサブローは彼らのプライドをズタズタにする。
「どんな気持ちだ? こんな形で平民に負けた気分は? テメエらは、他人を蹴落とすことしか考えていない。あの二人を見てみろよ。清々しい勝ちっぷりじゃねえか。しかも、テメエらに一瞥もくれてない。あいつらからすれば、お前らなんて存在価値もねえ。うらやましくもなんともねえんだよ!」
邪悪な笑みを浮かべながら、シチサブローは幼き召喚士たちの心を砕く。
「しかし、皿を持った時点で敗北は決定! よって、再試験を要求する」
どうしても、彼らは再試合で決着を付けたいらしい。我が子が試練を超えられないという現実を受け入れられない様子だった。
親に賛同していた子どもたちも、さすがに呆れかえっている。まだ腐りきってはいないようだった。
「そこまでにしないかっ!」
親共がヒートアップしてきたところで、老召喚士のお出ましだ。
「此度のふがいなさ、子どもが大衆に惨めな姿をさらしたこと、ゆめゆめ忘れるではない」
本当なら、これだけオープンな場で恥をかかせることはトラウマになるだけ。ガキたちからすれば、なんの成長もない。
だから協会長は、「親たちに」言って聞かせる。
協会長が真に恥をかかせたかったのは、親たちだった。
我が子を手塩に掛けた「フリをしている」親たちを「わからせる」ために、協会長はこの大会を仕組んだ。
「貴様らは、子どもに辛抱を教えてこなかった! その結果がこれ! 無様極まりない敗北! 魅了魔法に弱いも同じだ! そんな子どもに育てたのは、貴様ら親の責任ではないか!」
「子が成果を出せないのは、親の教育のせいだというのですか!?」
「親を見て、子は育つ! 貴様らのような毒親の元で育っては、子の教育にも影響が出てしまう! 彼らはより高みを目指そうと、せっかく真剣になっているというのにだ!」
それは、シチサブローにだってわかる。
「お主たち、フリオとケットシーの二人を見て、よくわかったな?」
誰しも、答えはかっている様子だ。が、言語化ができなかった。幼さ故か。
「よく育成されているとは、思いますよ?」
召喚士の親たち、その誰かが代弁する。
「平民でありながら、よくここまで従えているかと――」
「召喚士と召喚獣は、決して主従関係などではない!」
電流が走ったかのように、子どもたちの間に緊張が走る。
「いつから召喚士は、召喚した魔物を『使役』するようになったのじゃ? いつから対等の存在ではなくなったのじゃ? 言うてみい!」
さっきの発言者が、ささっと引っ込む。
誰一人として、協会長に言い返す者はいなかった。
「あの二人を見てみろ。フリオとケットシーとの間にあるのはただ一つ。友情じゃ。共に歩み、共に生き、共に死んでいく。そんな関係こそが、今の召喚士に足りぬ要素である! お主たちに、彼らの尊さが理解できるかのう?」
少年少女たちは、自分たちを省みている様子である。協会長に罵倒されながらも、瞳だけは未来に向かっていた。
しかし、親の目は曇っている。結果しか見ていない。
これでは、どれだけ成長したところで認めてもらえないだろう。あるいは、子どもの成果は自分の実力だと勘違いする。「召喚獣の強さを召喚士の実力と思っていた」、幼い召喚士のように。
もう、そんな勘違いをしている子どもたちは、いなかった。
「は、はいっ。なんでしょう?」
「腹減ったろ? 冷めないうちに食えよ」
シチサブローが、フリオとケットシーにてんこ盛りのお肉を差し出す。
「食べていいの?」
まだ試験が続いていると思っているのか、フリオは箸を付けようとしない。
「もうガマンしなくていい。思う存分食え。お前らなら、大丈夫だ」
「うむ。おめでと。二人は立派なバディ。これからも、仲良くして欲しい」
テルルも、小さく拍手して二人を称えた。
「ありがとうございます!」
「ありがとーっ! いっただっきまーす!」
片方のフォークで、ケットシーはフリオに「あーん」する。フォーク二刀流で、自分も肉を喰らう。
フリオも、おいしそうに肉を頬張った。
「じゃああボクも、あーん」
「ありがとご主人! もぐもぐ」
フォークをケットシーから持たせてもらい、フリオはケットシーに肉をあげる。
「終わりだ。勝者は出たぜ」
「ならん! 皿を持った時点で、フリオ・ニールセンの敗北は決定だ!」
召喚士の親たちが、ケチを付け始めた。
親に煽られ、子どもたちも「そうだそうだ」と煽り立てる。
往生際の悪い野郎共だ。ああいうお偉いさんにはなりたくない。これだから貴族は。
「あうう」
皿を持ったまま、フリオはシュンとなる。
ただ一部の子どもたちは、フリオを祝福していた。王女と友人の姫騎士たちだ。数名の上位ランカーも同様である。
とはいえ、フリオに嫌悪感を示す貴族は少なくない。
「オレに任せろ」
フリオの頭に、シチサブローはポンと手を置いた。
「なんだてめえら。往生際の悪いのはどっちだ? フリオたちは、ちゃんとガマンできたのに。お貴族様ともあろう者が、平民相手に嫉妬してしまったか?」
ここぞとばかりに、シチサブローは彼らのプライドをズタズタにする。
「どんな気持ちだ? こんな形で平民に負けた気分は? テメエらは、他人を蹴落とすことしか考えていない。あの二人を見てみろよ。清々しい勝ちっぷりじゃねえか。しかも、テメエらに一瞥もくれてない。あいつらからすれば、お前らなんて存在価値もねえ。うらやましくもなんともねえんだよ!」
邪悪な笑みを浮かべながら、シチサブローは幼き召喚士たちの心を砕く。
「しかし、皿を持った時点で敗北は決定! よって、再試験を要求する」
どうしても、彼らは再試合で決着を付けたいらしい。我が子が試練を超えられないという現実を受け入れられない様子だった。
親に賛同していた子どもたちも、さすがに呆れかえっている。まだ腐りきってはいないようだった。
「そこまでにしないかっ!」
親共がヒートアップしてきたところで、老召喚士のお出ましだ。
「此度のふがいなさ、子どもが大衆に惨めな姿をさらしたこと、ゆめゆめ忘れるではない」
本当なら、これだけオープンな場で恥をかかせることはトラウマになるだけ。ガキたちからすれば、なんの成長もない。
だから協会長は、「親たちに」言って聞かせる。
協会長が真に恥をかかせたかったのは、親たちだった。
我が子を手塩に掛けた「フリをしている」親たちを「わからせる」ために、協会長はこの大会を仕組んだ。
「貴様らは、子どもに辛抱を教えてこなかった! その結果がこれ! 無様極まりない敗北! 魅了魔法に弱いも同じだ! そんな子どもに育てたのは、貴様ら親の責任ではないか!」
「子が成果を出せないのは、親の教育のせいだというのですか!?」
「親を見て、子は育つ! 貴様らのような毒親の元で育っては、子の教育にも影響が出てしまう! 彼らはより高みを目指そうと、せっかく真剣になっているというのにだ!」
それは、シチサブローにだってわかる。
「お主たち、フリオとケットシーの二人を見て、よくわかったな?」
誰しも、答えはかっている様子だ。が、言語化ができなかった。幼さ故か。
「よく育成されているとは、思いますよ?」
召喚士の親たち、その誰かが代弁する。
「平民でありながら、よくここまで従えているかと――」
「召喚士と召喚獣は、決して主従関係などではない!」
電流が走ったかのように、子どもたちの間に緊張が走る。
「いつから召喚士は、召喚した魔物を『使役』するようになったのじゃ? いつから対等の存在ではなくなったのじゃ? 言うてみい!」
さっきの発言者が、ささっと引っ込む。
誰一人として、協会長に言い返す者はいなかった。
「あの二人を見てみろ。フリオとケットシーとの間にあるのはただ一つ。友情じゃ。共に歩み、共に生き、共に死んでいく。そんな関係こそが、今の召喚士に足りぬ要素である! お主たちに、彼らの尊さが理解できるかのう?」
少年少女たちは、自分たちを省みている様子である。協会長に罵倒されながらも、瞳だけは未来に向かっていた。
しかし、親の目は曇っている。結果しか見ていない。
これでは、どれだけ成長したところで認めてもらえないだろう。あるいは、子どもの成果は自分の実力だと勘違いする。「召喚獣の強さを召喚士の実力と思っていた」、幼い召喚士のように。
もう、そんな勘違いをしている子どもたちは、いなかった。
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