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試験最終日 「食欲に勝てないとか、魔王として恥ずかしくないの?」「よわよわ胃袋❤」
天使マジ天使
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『さて、これまでの召喚士試験、通過できた人は一人もいません。しかし、この方なら突破できるに違いない! 彼女こそ歩く奇跡! 現代の救世主! さて、お入りください!』
現れたのは、純白のドレスに身を包んだ少女である。歩く姿には、気品が溢れていた。
彼女を見守っているのは、貴族席にはいない。この試験場の超VIP観覧席にいる。ここは本来、王族しか入れない。つまり、次の挑戦者は……。
『お待たせ致しました! 現れたぞ大本命! S級召喚士認定試験に超大物が登場だ! 本試験会場のあるサミュエリック王国の姫君、ベロニカ・フォン・サミュエリック第一王女が参戦致しますっ!』
王女は、市民たちに笑顔を送る。それだけで、試験会場が浄化されていくかのようだ。
「姫様ぁ!」
「あいしてるぅ!」
「キャーッ! 絶対試験合格してよぉ!」
ギャラリーの熱気が凄まじい。よほど、王女は民に慕われているのだろう。
「ベロニカ王女……」
「お初にお目に掛かります、シチサブロー審査員様」
他の挑戦者のように、挑発したりはしてこない。また、王女もこちらの煽りに乗ってこなさそうだ。
「え、ええ」
さすがのプレッシャーに、シチサブローも気圧されている。
「よろしくお願い致します。テルル様」
テルルは、王女からのあいさつにお辞儀で答えた。
「我が友であるシア、フローレンシアのカタキ、取らせていただきます」
フローレンシアとは、一日目に倒したユニコーンの飼い主か。王女と友人だったとは。
「あなたが油断ならない人だとは、シアから聞いております。全力で挑ませていただきます。そちらもお覚悟を!」
「おう。相手にとって不足はねえぜ」
王女のやる気に、こちらも本気になる。
『あら~。麗しき友情でございます! では、召喚をお願いします』
「承知しました」
王女が、杖を真一文字に構える。
杖の底で、王女が円を描いた。
王女の前に、魔方陣が浮き上がる。ビジュアル的に風車をイメージしているようだ。魔方陣の風車が回り出す。
「契約をもって、我が前においでませ。機甲天使ミカーサス!」
左手の平は腰の位置に、右の手の平を杖の上から下に這わせた。手首が当たった瞬間、王女はクルッと手を回す。風車のように。
――自由の羽根を広げて舞い上がれ、ミカーサスゥ♪――
『おっと、魔方陣から天使を称える賛美歌が流れ出して、それが詠唱の合図となっております』
カブトムシの甲殻をヨロイにしたような女性が、王女を守るように立った。装甲は黄金の如く輝き、透明な羽根からは光が差し込む。
「機甲天使、ミカーサス!」
天使が、大仰なヒロイックポーズを決める。
モデルのように立ち、右手の指をゆっくりと上げて天を指さす。
「ほほう、最近の魔方陣は歌うんだな?」
「歌は……お気になさらず」
シチサブローが茶化すと、王女はすました顔で返してきた。首に掛けたアクセサリに、目を移す。
アクセはロケットかなにかで、家族か恋人の写真でも入っているのか?
……いや、懐中時計のようだ。ダークエルフの聴覚で、針の動く音が聞こえた。
『現れました。現れてしまいました。王女が操る召喚獣は、なんと天使! 古来より恐れられた、神の兵隊であります!』
煽りVTRが、飛空挺のモニターに映し出される。
『ご覧ください。こちらは、A級の召喚士試験、当時の映像であります』
昇格のルールは、カンタンだ。召喚士協会が用意した、幻獣に勝つこと。
映像に映った王女の顔は、若干幼さが抜けていない。それでも、眼光の鋭さは健在である。
天使と戦うのは、身体の各部分を砲台で武装したクジラの幻獣だ。リヴァイアサンは、協会長が持つ召喚獣の中でも相当の実力者である。
『対するはクラーケンの上位種、リヴァイアサンです!』
しかも、彼女だけ特別ルールだった。実力が高すぎる故に、並の幻獣では力を推し量れないと、召喚獣界で二番目に強い相手を手配したのである。しかも、自分から。
その勝負は、さながら人間と戦艦、アリが像に挑む程の無謀さだった。
序盤にて、リヴァイアサンはツララを雨のように降らせる。氷魔法を立て続けに浴びせ、飛び回る天使を止めようとした。
「エンジェル・バーストウオゥ!」
天使は炎魔法を身体に纏って、ツララによる刺突を防ぐ。全身を炎で覆っているため、相手が仕掛けていた「羽根を凍らせる作戦」も防いでいた。
「エンジェル・パーンチィ!」
体格差すらものともせず、天使は終始リヴァイアサンを圧倒する。リヴァイアサンの死角を常に突き続け、パンチやキックを何度も繰り出す。
「とどめだ。エンジェル・スマッシュゥ!」
天使の跳び蹴りによって、リヴァイアサンのノドが打ち抜かれた。強烈なレッグラリアットを喰らって、リヴァイアサンは消滅する。
「シチサブロー、コイツめっちゃ強い。それに、コイツも食事を摂らなくても生きていけるタイプ。お肉にも反応してない」
シチサブローの裾を引っ張り、テルルは心配を口にした。
が、シチサブローはニヤリと笑う。
「わかってる。それだけに弱点もわかった。オレを信じてくれ」
「うん。わかった。言うとおりにする」
焦っていたテルルが、落ち着きを取り戻した。
「九〇秒もあれば、十分だ」
現れたのは、純白のドレスに身を包んだ少女である。歩く姿には、気品が溢れていた。
彼女を見守っているのは、貴族席にはいない。この試験場の超VIP観覧席にいる。ここは本来、王族しか入れない。つまり、次の挑戦者は……。
『お待たせ致しました! 現れたぞ大本命! S級召喚士認定試験に超大物が登場だ! 本試験会場のあるサミュエリック王国の姫君、ベロニカ・フォン・サミュエリック第一王女が参戦致しますっ!』
王女は、市民たちに笑顔を送る。それだけで、試験会場が浄化されていくかのようだ。
「姫様ぁ!」
「あいしてるぅ!」
「キャーッ! 絶対試験合格してよぉ!」
ギャラリーの熱気が凄まじい。よほど、王女は民に慕われているのだろう。
「ベロニカ王女……」
「お初にお目に掛かります、シチサブロー審査員様」
他の挑戦者のように、挑発したりはしてこない。また、王女もこちらの煽りに乗ってこなさそうだ。
「え、ええ」
さすがのプレッシャーに、シチサブローも気圧されている。
「よろしくお願い致します。テルル様」
テルルは、王女からのあいさつにお辞儀で答えた。
「我が友であるシア、フローレンシアのカタキ、取らせていただきます」
フローレンシアとは、一日目に倒したユニコーンの飼い主か。王女と友人だったとは。
「あなたが油断ならない人だとは、シアから聞いております。全力で挑ませていただきます。そちらもお覚悟を!」
「おう。相手にとって不足はねえぜ」
王女のやる気に、こちらも本気になる。
『あら~。麗しき友情でございます! では、召喚をお願いします』
「承知しました」
王女が、杖を真一文字に構える。
杖の底で、王女が円を描いた。
王女の前に、魔方陣が浮き上がる。ビジュアル的に風車をイメージしているようだ。魔方陣の風車が回り出す。
「契約をもって、我が前においでませ。機甲天使ミカーサス!」
左手の平は腰の位置に、右の手の平を杖の上から下に這わせた。手首が当たった瞬間、王女はクルッと手を回す。風車のように。
――自由の羽根を広げて舞い上がれ、ミカーサスゥ♪――
『おっと、魔方陣から天使を称える賛美歌が流れ出して、それが詠唱の合図となっております』
カブトムシの甲殻をヨロイにしたような女性が、王女を守るように立った。装甲は黄金の如く輝き、透明な羽根からは光が差し込む。
「機甲天使、ミカーサス!」
天使が、大仰なヒロイックポーズを決める。
モデルのように立ち、右手の指をゆっくりと上げて天を指さす。
「ほほう、最近の魔方陣は歌うんだな?」
「歌は……お気になさらず」
シチサブローが茶化すと、王女はすました顔で返してきた。首に掛けたアクセサリに、目を移す。
アクセはロケットかなにかで、家族か恋人の写真でも入っているのか?
……いや、懐中時計のようだ。ダークエルフの聴覚で、針の動く音が聞こえた。
『現れました。現れてしまいました。王女が操る召喚獣は、なんと天使! 古来より恐れられた、神の兵隊であります!』
煽りVTRが、飛空挺のモニターに映し出される。
『ご覧ください。こちらは、A級の召喚士試験、当時の映像であります』
昇格のルールは、カンタンだ。召喚士協会が用意した、幻獣に勝つこと。
映像に映った王女の顔は、若干幼さが抜けていない。それでも、眼光の鋭さは健在である。
天使と戦うのは、身体の各部分を砲台で武装したクジラの幻獣だ。リヴァイアサンは、協会長が持つ召喚獣の中でも相当の実力者である。
『対するはクラーケンの上位種、リヴァイアサンです!』
しかも、彼女だけ特別ルールだった。実力が高すぎる故に、並の幻獣では力を推し量れないと、召喚獣界で二番目に強い相手を手配したのである。しかも、自分から。
その勝負は、さながら人間と戦艦、アリが像に挑む程の無謀さだった。
序盤にて、リヴァイアサンはツララを雨のように降らせる。氷魔法を立て続けに浴びせ、飛び回る天使を止めようとした。
「エンジェル・バーストウオゥ!」
天使は炎魔法を身体に纏って、ツララによる刺突を防ぐ。全身を炎で覆っているため、相手が仕掛けていた「羽根を凍らせる作戦」も防いでいた。
「エンジェル・パーンチィ!」
体格差すらものともせず、天使は終始リヴァイアサンを圧倒する。リヴァイアサンの死角を常に突き続け、パンチやキックを何度も繰り出す。
「とどめだ。エンジェル・スマッシュゥ!」
天使の跳び蹴りによって、リヴァイアサンのノドが打ち抜かれた。強烈なレッグラリアットを喰らって、リヴァイアサンは消滅する。
「シチサブロー、コイツめっちゃ強い。それに、コイツも食事を摂らなくても生きていけるタイプ。お肉にも反応してない」
シチサブローの裾を引っ張り、テルルは心配を口にした。
が、シチサブローはニヤリと笑う。
「わかってる。それだけに弱点もわかった。オレを信じてくれ」
「うん。わかった。言うとおりにする」
焦っていたテルルが、落ち着きを取り戻した。
「九〇秒もあれば、十分だ」
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