上 下
1 / 1

赤リップで挑発

しおりを挟む
「チ、チエ先輩!」


 私は思い切って、チエ先輩にルージュを塗った自分を見せる。

 
 小説の小道具に使えるかなって、紅いリップを買ってみた。 
 デパートで売ってる本格的なやつだと、使いきれるかわからない。
 だから、コンビニでゲットした。すっごい小さいやつを。

 チエ先輩が、困っている。
 首を傾げて、「うーん」とうなった。

「シホ、あんたさあ」
「な、なんでしょう?」



「カレシできた?」


「ふわ!?」


 顔が、ルージュより赤くなる。

「違います! 断じてカレシなんてできていません!」
「だってさー、ドヤ顔で見せつけてんじゃん。すっごい似合ってるよ」
「ふわああああああ! 違いますってぇ!」


 必死で弁解した。
 男っ気なんて、これっぽっちもありません。

 弟にだって色目なんて使ったことないのに。
 あ、でもコンビニ限定カップ麺買ってきてもらったとき、甘えた声を使ったことは認めます。

「ほんっとに違います。誓ってオトコなんてできてません!」
「そうなんだ。でも、どうしてリップなんて買ったの?」
「小説で使えるかなって思って使ってみたんですけど、変ですか?」

 私は正直、顔に自身がない。
 自分では、中の下くらいだと思っている。
 化粧したって、きっと変わらない。
 むしろ、バカ面をさらしたようなものだろう。
 
「変じゃないよ。さっきも言ったじゃん。めっちゃ似合ってるって」
「ありがとうございますっ」

 なんか誤解されたけど、褒められたからプラマイゼロってことでOK!

「シホ、そのリップ見せて」
「あ、はい。どうぞ」
「あんがと」

 チエ先輩が、なにやら後ろを向いた。
 鏡に向かって何かをしている。

「シホ」

 先輩が振り返った。

「ひゃわわあああ!」
 
 なんと、チエ先輩がわたしのリップでお化粧をしていらっしゃるうううう!

 お化粧の魔法ってすごい。
 こんなに、人って変わるんだ。

「どうかな? 初めて化粧ってしてみたんだけど?」
「すっごいキレイです!」
 
 似合っているなんて、レベルではない。
 芸術品とお話しているみたいだ。

「そっか。あ、ありがと、ね」

 照れてる! めっちゃ照れてるやん! チエ先輩かわいい! 
 なんか、こっちまでニヤけてくる。

「じゃあ、落としてくるね」
「ああちょっと、一緒にお写真でも」
「そうだね。せっかくだもんね」

 二人で自撮りした。

 その後、二人で洗面所へ。

「シホさあ」
「なんですか?」

 すっぴんになった私に、チエ先輩が声をかけてきた。

「やっぱシホってさ、なにもしてない方がカワイイね」


 過去イチで、私は顔面が赤くなる。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

雌犬、女子高生になる

フルーツパフェ
大衆娯楽
最近は犬が人間になるアニメが流行りの様子。 流行に乗って元は犬だった女子高生美少女達の日常を描く

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

童貞くんのお兄ちゃんはモテないから、カップル見るとブチきれます

味噌村 幸太郎
青春
 勘違いが酷い童貞くん……の兄、モテないくん。  モテないくんは、いつも女の子に異性として見てもらえません。  だから、カノジョがいない時は、情緒不安定です。  モテないくんの前で、イチャつかないでください。  絡まれてしまいます。

転校初日

はちみつ電車
青春
中学3年生の10月に親の都合で突然転校することになった僕。僕は今世界一不幸な15歳だ。 だが、転校初日の登校中に、僕は積乱雲のように何発もの激しい雷を放ち容赦なく僕の体を貫く彼女に出会った。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

夜の公園、誰かが喘いでる

ヘロディア
恋愛
塾の居残りに引っかかった主人公。 しかし、帰り道に近道をしたところ、夜の公園から喘ぎ声が聞こえてきて…

処理中です...