14 / 48
第一章 ウザい後輩に弱みを握られ、交際を迫られた。
ウザ彼女と、提案 2
しおりを挟む
「以上です、生徒会長」
クルミが、話し終えた。
「やけに本格的ですね。正式種目にしてもいいくらいに」
「正式種目にすると、景品がもらえなる危険があります。そうなれば、娯楽性を損なうかと。これはあくまでも、生徒たちの肩を温める息抜き。違いますか?」
さすが妹だ。姉の攻撃にすら物怖じしない!
「分かりました。では、娯楽部門は的抜きに決定します。解散」
生徒たちが退席すると、またアンズ会長はぐでーっとなる。
「はー、つーかーれーたー」
会長は、机にへばりつくスライムになってしまった。
「もうなんなのあいつらー。めんどくさいー。アイデア出さないくせにー」
「よしよし、よくできました」
飼い主の誠太郎が、スライム会長の頭を撫でる。
「アンズさんの気持ちも分かるよ。でも、こんなに早いスピードで案なんて出せないのが普通さ。普通は、ここまで進むのに二、三日は見ておかないと。アンズちゃんは的確さを求めすぎなんだよ」
「そーかなー誠ちゃん? パパパッとアイデアくらいは出ないものかなぁ?」
「誰も出せないアイデアを書記くんに求めたのは、どこのどなた様でしたっけ?」
諭すように、誠太郎がアンズ会長を責めた。
「あーそっかーっ。そうだったー。ごめんねー、リクトくん。面倒くさい女でー」
手を合わせながら、アンズ会長は反省している。
「でも、クルミって、あんなに家でしゃべる子だったかなー?」
「クル……妹さんって、普段どんな感じなんだ?」
妹が話題に上ると、アンズ会長は肩をすくめた。
「チヒロちゃんとは全然印象が違うよー」
アンズ会長は、チヒロと面識がある。
「あんな楽しそうにしてるクルミって、初めて見たかもしれない」
ちょっと待ってくれ。変なワードが出てきたぞ。
「え、あれって、楽しんでいたのか?」
「そうだよー。わかんなかった?」
わかんなかったです!
「ウソだろ、マシーンみたいだったぞ」
「自分の意見なんて、ほとんど言わないもん。いっつも私の後ろに隠れて、黙って人のお話を聞いているの。つまらなさそうに」
意外だ。俺は楽しげなクルミしか知らない。
「気になる? リクトくん」
会長からの疑惑の目が、俺に向けられる。
「まあ、な。これからも生徒会にいるんだから、変なストレスを抱え込まないように、俺たちがちゃんと後輩をサポートしないとな」
「えらい! えらいぞー。えらいからお菓子あげちゃう」
背伸びをして、棚の上にあるお菓子の缶をパカッと開ける。
「てっきりさ、クルミちゃんのよくしゃべるところとか、知ってるのかなーって思ってさ」
さとい! さすが姉、実にさといぜ。
「とんでもない。まともに会話するシーンを今日始めてみたくらいだぜ」
どうにかごまかす。
「おせんべいでいい?」
「おう。サンキュ。じゃあまた月曜だな」
アソートのせんべいを開けて、口に入れる。
そのまま立ち去ろうとした。
「妹と仲良くしてね」
後ろから、アンズ会長に声をかけられる。
「え、なんだよ?」
何か、意味深な感じに聞こえたが。
「さっきのクルミちゃん、リクトくんのことをかばってたみたいだから」
「そ、そうか」
「クルミちゃん、リクトくんのこと、気になってるのかなって」
「そ、そんなわけないじゃん」
苦笑いで返す。
「気をつけて帰ってね」
「じゃあな」
アンズ会長と誠太郎に見送られながら、俺は生徒会室を出た。
真横にクルミがいるのも知らずに。
「ひい!」
思わず、小さな悲鳴をあげてしまう。
クルミが、とっさに口を抑えた。笑いをこらえているのだろう。
「どうした? Gでもいたか?」
ドアの向こうから、誠太郎が呼びかけてくる。
「あ、ああ! そうだ! 足で踏み潰したから見に来るなよ」
何もない廊下を、足で踏みつけた。
「おー。ちゃんと処理してくれよな」
特にアンズ会長は、Gが苦手だからな。
「じゃあ帰るわ」
ドアの向こうの誠太郎に声をかけた。
「気をつけてな」
誠太郎の言葉を確認し、俺は小走りで廊下を歩く。
「せーんぱい」と、クルミは競歩のような速度でついてくる。ちゃんと音を立てずに。
「一緒に帰りましょ」
学校を少し抜けるまでは少し間をおいて、クルミは学校が見えなくなった辺りでくっついてくる。
「先輩、出過ぎたマネをしてすいませんッス」
さっきの会話を聞いていたのだろう。
「いや、なんだ。ありがとな」
「でもでも、発言したのは先輩なのに。あたしが出しゃばったせいで」
アイデアを出しただけの俺より、具体的な案を提供したクルミの方が、生徒からの印象は強い。
「別に、生徒会でポイント稼ごうなんて思ってねえよ」
俺はただ、退屈な学生生活を送りたくないだけ。
「球技大会さ、盛り上げようぜ」
そう言いながら、歩道橋を渡る。
「じゃあ、俺こっちだから」
先に歩道橋を渡り、スーパーのある方へ。あとは夕飯を買ってくるだけだ。
「先輩、今度のデートスポット、あたし決めちゃいますね」
「あ、待った。一緒に言ってみようぜ」
俺とクルミは、同時に微笑んだ。
「はい。せーのっ」
「「ゲーセン!」」
二人の声が、重なった。
クルミが、話し終えた。
「やけに本格的ですね。正式種目にしてもいいくらいに」
「正式種目にすると、景品がもらえなる危険があります。そうなれば、娯楽性を損なうかと。これはあくまでも、生徒たちの肩を温める息抜き。違いますか?」
さすが妹だ。姉の攻撃にすら物怖じしない!
「分かりました。では、娯楽部門は的抜きに決定します。解散」
生徒たちが退席すると、またアンズ会長はぐでーっとなる。
「はー、つーかーれーたー」
会長は、机にへばりつくスライムになってしまった。
「もうなんなのあいつらー。めんどくさいー。アイデア出さないくせにー」
「よしよし、よくできました」
飼い主の誠太郎が、スライム会長の頭を撫でる。
「アンズさんの気持ちも分かるよ。でも、こんなに早いスピードで案なんて出せないのが普通さ。普通は、ここまで進むのに二、三日は見ておかないと。アンズちゃんは的確さを求めすぎなんだよ」
「そーかなー誠ちゃん? パパパッとアイデアくらいは出ないものかなぁ?」
「誰も出せないアイデアを書記くんに求めたのは、どこのどなた様でしたっけ?」
諭すように、誠太郎がアンズ会長を責めた。
「あーそっかーっ。そうだったー。ごめんねー、リクトくん。面倒くさい女でー」
手を合わせながら、アンズ会長は反省している。
「でも、クルミって、あんなに家でしゃべる子だったかなー?」
「クル……妹さんって、普段どんな感じなんだ?」
妹が話題に上ると、アンズ会長は肩をすくめた。
「チヒロちゃんとは全然印象が違うよー」
アンズ会長は、チヒロと面識がある。
「あんな楽しそうにしてるクルミって、初めて見たかもしれない」
ちょっと待ってくれ。変なワードが出てきたぞ。
「え、あれって、楽しんでいたのか?」
「そうだよー。わかんなかった?」
わかんなかったです!
「ウソだろ、マシーンみたいだったぞ」
「自分の意見なんて、ほとんど言わないもん。いっつも私の後ろに隠れて、黙って人のお話を聞いているの。つまらなさそうに」
意外だ。俺は楽しげなクルミしか知らない。
「気になる? リクトくん」
会長からの疑惑の目が、俺に向けられる。
「まあ、な。これからも生徒会にいるんだから、変なストレスを抱え込まないように、俺たちがちゃんと後輩をサポートしないとな」
「えらい! えらいぞー。えらいからお菓子あげちゃう」
背伸びをして、棚の上にあるお菓子の缶をパカッと開ける。
「てっきりさ、クルミちゃんのよくしゃべるところとか、知ってるのかなーって思ってさ」
さとい! さすが姉、実にさといぜ。
「とんでもない。まともに会話するシーンを今日始めてみたくらいだぜ」
どうにかごまかす。
「おせんべいでいい?」
「おう。サンキュ。じゃあまた月曜だな」
アソートのせんべいを開けて、口に入れる。
そのまま立ち去ろうとした。
「妹と仲良くしてね」
後ろから、アンズ会長に声をかけられる。
「え、なんだよ?」
何か、意味深な感じに聞こえたが。
「さっきのクルミちゃん、リクトくんのことをかばってたみたいだから」
「そ、そうか」
「クルミちゃん、リクトくんのこと、気になってるのかなって」
「そ、そんなわけないじゃん」
苦笑いで返す。
「気をつけて帰ってね」
「じゃあな」
アンズ会長と誠太郎に見送られながら、俺は生徒会室を出た。
真横にクルミがいるのも知らずに。
「ひい!」
思わず、小さな悲鳴をあげてしまう。
クルミが、とっさに口を抑えた。笑いをこらえているのだろう。
「どうした? Gでもいたか?」
ドアの向こうから、誠太郎が呼びかけてくる。
「あ、ああ! そうだ! 足で踏み潰したから見に来るなよ」
何もない廊下を、足で踏みつけた。
「おー。ちゃんと処理してくれよな」
特にアンズ会長は、Gが苦手だからな。
「じゃあ帰るわ」
ドアの向こうの誠太郎に声をかけた。
「気をつけてな」
誠太郎の言葉を確認し、俺は小走りで廊下を歩く。
「せーんぱい」と、クルミは競歩のような速度でついてくる。ちゃんと音を立てずに。
「一緒に帰りましょ」
学校を少し抜けるまでは少し間をおいて、クルミは学校が見えなくなった辺りでくっついてくる。
「先輩、出過ぎたマネをしてすいませんッス」
さっきの会話を聞いていたのだろう。
「いや、なんだ。ありがとな」
「でもでも、発言したのは先輩なのに。あたしが出しゃばったせいで」
アイデアを出しただけの俺より、具体的な案を提供したクルミの方が、生徒からの印象は強い。
「別に、生徒会でポイント稼ごうなんて思ってねえよ」
俺はただ、退屈な学生生活を送りたくないだけ。
「球技大会さ、盛り上げようぜ」
そう言いながら、歩道橋を渡る。
「じゃあ、俺こっちだから」
先に歩道橋を渡り、スーパーのある方へ。あとは夕飯を買ってくるだけだ。
「先輩、今度のデートスポット、あたし決めちゃいますね」
「あ、待った。一緒に言ってみようぜ」
俺とクルミは、同時に微笑んだ。
「はい。せーのっ」
「「ゲーセン!」」
二人の声が、重なった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?
おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。
『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』
※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる