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第一章 ウザい後輩に弱みを握られ、交際を迫られた。
ウザ後輩と、メッセアプリ 1
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スーパーで買い物を終えて、一軒家に帰る。
「ただいま、チヒロ」
「おかえりお兄ちゃん」
リビングから、妹のチヒロがトテトテと走ってきた。靴下でブレーキをかける。中学の制服のままだ。顔が幼い上に背も低い。何度、小学生と間違えられたか。言動も、まだあどけなさが残る。
「お前も今帰ったところか?」
「そう。部活上がり」
チヒロがニコニコと返答した。
「今日は、モンスターの名前をつけるゲームで遊んだよ」
妹は、アナログゲーム同好会に入っている。
「楽しかったか?」
「うん!」
元気よく、チヒロはうなずく。
「親父とお袋は?」
「また遅くなるって。お風呂湧いてる」
「ありがとな。チヒロが先に入ってろよ。その間にメシを作る」
エコバッグを二つテーブルに置いて、俺はエプロンをした。食材を一つ一つ、袋から出す。
「ありがとうな。今日はいいから風呂に入ってきな」
「分かった。ゴハンを作っている間、可愛い妹の入浴シーンを妄想してて」
「しねえから。早くいけ」
「はーい」
トテトテと、チヒロは浴室へ向かう。
「なんで、俺の周りにはヘンタイばっかりが集まってくるのかねえ……」
ニンジンの皮をピーラーで剥く。
早速、メッセアプリが起動したぞ。
[せーんぱいっ]
案の定、送信相手はクルミだ。スルーしたい。
[何してます? あたし、ゴハンまだなんでお腹がペコちゃんです]
調理のタイミングでその発言とは。どこの貿易商だよ。
[メシの支度中。ていうか、風呂でも入ってろ]
[もう入っちゃいました]
画像には、バスタオル以外身につけていないクルミの画像が。
「ブーッ!」
危うく、ピーラーで手の皮を剥くところだった。
「お兄ちゃん、どうしたの?」
大慌てで、妹が走ってくる。脱いでいる途中だったのか、キャミソール一枚でこっちを見た。
「ななな、なんでもねえ。いいから入ってろ。風邪引くぞ」
「はーい」
また、妹は風呂場へ。
足を組んでベッドに座るクルミの画像には、こう書かれている。
[オカズになさっても構いませんよーゲヘヘ]
悩ましげな瞳で、クルミはこちらを覗き込んでいた。見た目は美少女なのだが、文面はただのスケベオヤジだ。
[今まさに、オカズを作ってるところだよ]
[なんと! 自分をオカズになさるので? まさか先輩にそんな女装趣味が!]
「してねーよ!」
思わず、スマホに向けて怒鳴ってしまった。
また、トテトテと足音が。
「お兄ちゃんどうしたの? すごい怒鳴り声が聞こえてきたけど」
バスタオルをマントにして、全裸の妹がキッチンに顔を出す。兄に肢体を見せびらかすのを楽しんでいるのか?
「なんでもありません。ずぶ濡れで廊下を歩くんじゃありませんっ。ちゃんと拭きながら戻りなさい」
「はーいごめんなさーい」
妹はちゃんとバスタオルを踏んづけて、廊下をすり足で拭き始める。いい子だ。
[筑前煮を作ってるんだよ。邪魔すんな]
再び、メッセをクルミに送る。
[なぬ? お料理できるんスね]
猫が『詳しく!』と受話器に叫んでいるスタンプが。
[てっきり、ご両親のお手伝い程度だと思ってたッス。エライッッス!]
[別に。簡単なものなら。今日の食事当番は俺なんだ]
文章を返しつつ、鶏肉、椎茸、大豆、大根を鍋にぶち込む。
好き嫌いの多い妹のために、俺は色々と試行錯誤していた。
味付けを変えてみたり、肉の中に野菜を仕込んでみたり。
おかげで、妹は豆腐は食えないが、豆腐ハンバーグは大好物になった。
[エラいッス。筑前煮って、チョイスが随分と渋いッスね]
メッセが返ってくる。バスタオル一枚で腕組みをする写真同封で。いいから服を着ろ。
[あたし、料理ってダメなんスよー。魚が触れないッス]
まあ、イマドキの女子なら魚はキツかろう。
[いきなり攻めすぎだろ。カレーでいいのにな]
[ウチはカレーッス。いいニオイしてるッス。このスメルをおすそ分けしたいッスね。クンカクカ]
何の匂いを嗅いでるんだよ?
[手際いいッスね?]
[手順も味付けも適当だ。ほめられたもんじゃない。言うほど上手じゃないぞ。さっきから誰かさんがメッセで話しかけてくるから、鶏肉を焦がしたしな]
[ふてえヤロウッスね。とっちめてやりましょッス]
[お前だよ]
本格的に料理が得意なヤツが見たら卒倒しそうな手際だろう。
だが、ちゃんとしすぎると料理自体が嫌になる。
だから、俺は妹のヘタクソ料理にも愚痴をこぼさない。
作ってくれただけでうれしいのだ。
おいしくいただきたいなら、手伝えばいいだけ。
手順なんて知るか。
ガチの丁寧さを求められる料理なんて、経験上ではスイーツくらいだ。
[いいなぁ、先輩手作りのゴハンかー。超ウマイだろうなー]
メッセージつきの写真の中で、クルミは腹を押さえている。
[写真くださいッス]
[ほらよ]
でき上がった筑前煮を、カメラに収める。
[うっわー。おいしそーッス! 妹さんがうらやま]
[食いたいか? 適当オブ適当だぜ]
[愛する先輩が作ってくれたってだけで、ゴハン三倍いけるッス]
[わかった。じゃあ作ってきてやるよ]
突然、メッセが沈黙した。
その間に味付けを。
「ただいま、チヒロ」
「おかえりお兄ちゃん」
リビングから、妹のチヒロがトテトテと走ってきた。靴下でブレーキをかける。中学の制服のままだ。顔が幼い上に背も低い。何度、小学生と間違えられたか。言動も、まだあどけなさが残る。
「お前も今帰ったところか?」
「そう。部活上がり」
チヒロがニコニコと返答した。
「今日は、モンスターの名前をつけるゲームで遊んだよ」
妹は、アナログゲーム同好会に入っている。
「楽しかったか?」
「うん!」
元気よく、チヒロはうなずく。
「親父とお袋は?」
「また遅くなるって。お風呂湧いてる」
「ありがとな。チヒロが先に入ってろよ。その間にメシを作る」
エコバッグを二つテーブルに置いて、俺はエプロンをした。食材を一つ一つ、袋から出す。
「ありがとうな。今日はいいから風呂に入ってきな」
「分かった。ゴハンを作っている間、可愛い妹の入浴シーンを妄想してて」
「しねえから。早くいけ」
「はーい」
トテトテと、チヒロは浴室へ向かう。
「なんで、俺の周りにはヘンタイばっかりが集まってくるのかねえ……」
ニンジンの皮をピーラーで剥く。
早速、メッセアプリが起動したぞ。
[せーんぱいっ]
案の定、送信相手はクルミだ。スルーしたい。
[何してます? あたし、ゴハンまだなんでお腹がペコちゃんです]
調理のタイミングでその発言とは。どこの貿易商だよ。
[メシの支度中。ていうか、風呂でも入ってろ]
[もう入っちゃいました]
画像には、バスタオル以外身につけていないクルミの画像が。
「ブーッ!」
危うく、ピーラーで手の皮を剥くところだった。
「お兄ちゃん、どうしたの?」
大慌てで、妹が走ってくる。脱いでいる途中だったのか、キャミソール一枚でこっちを見た。
「ななな、なんでもねえ。いいから入ってろ。風邪引くぞ」
「はーい」
また、妹は風呂場へ。
足を組んでベッドに座るクルミの画像には、こう書かれている。
[オカズになさっても構いませんよーゲヘヘ]
悩ましげな瞳で、クルミはこちらを覗き込んでいた。見た目は美少女なのだが、文面はただのスケベオヤジだ。
[今まさに、オカズを作ってるところだよ]
[なんと! 自分をオカズになさるので? まさか先輩にそんな女装趣味が!]
「してねーよ!」
思わず、スマホに向けて怒鳴ってしまった。
また、トテトテと足音が。
「お兄ちゃんどうしたの? すごい怒鳴り声が聞こえてきたけど」
バスタオルをマントにして、全裸の妹がキッチンに顔を出す。兄に肢体を見せびらかすのを楽しんでいるのか?
「なんでもありません。ずぶ濡れで廊下を歩くんじゃありませんっ。ちゃんと拭きながら戻りなさい」
「はーいごめんなさーい」
妹はちゃんとバスタオルを踏んづけて、廊下をすり足で拭き始める。いい子だ。
[筑前煮を作ってるんだよ。邪魔すんな]
再び、メッセをクルミに送る。
[なぬ? お料理できるんスね]
猫が『詳しく!』と受話器に叫んでいるスタンプが。
[てっきり、ご両親のお手伝い程度だと思ってたッス。エライッッス!]
[別に。簡単なものなら。今日の食事当番は俺なんだ]
文章を返しつつ、鶏肉、椎茸、大豆、大根を鍋にぶち込む。
好き嫌いの多い妹のために、俺は色々と試行錯誤していた。
味付けを変えてみたり、肉の中に野菜を仕込んでみたり。
おかげで、妹は豆腐は食えないが、豆腐ハンバーグは大好物になった。
[エラいッス。筑前煮って、チョイスが随分と渋いッスね]
メッセが返ってくる。バスタオル一枚で腕組みをする写真同封で。いいから服を着ろ。
[あたし、料理ってダメなんスよー。魚が触れないッス]
まあ、イマドキの女子なら魚はキツかろう。
[いきなり攻めすぎだろ。カレーでいいのにな]
[ウチはカレーッス。いいニオイしてるッス。このスメルをおすそ分けしたいッスね。クンカクカ]
何の匂いを嗅いでるんだよ?
[手際いいッスね?]
[手順も味付けも適当だ。ほめられたもんじゃない。言うほど上手じゃないぞ。さっきから誰かさんがメッセで話しかけてくるから、鶏肉を焦がしたしな]
[ふてえヤロウッスね。とっちめてやりましょッス]
[お前だよ]
本格的に料理が得意なヤツが見たら卒倒しそうな手際だろう。
だが、ちゃんとしすぎると料理自体が嫌になる。
だから、俺は妹のヘタクソ料理にも愚痴をこぼさない。
作ってくれただけでうれしいのだ。
おいしくいただきたいなら、手伝えばいいだけ。
手順なんて知るか。
ガチの丁寧さを求められる料理なんて、経験上ではスイーツくらいだ。
[いいなぁ、先輩手作りのゴハンかー。超ウマイだろうなー]
メッセージつきの写真の中で、クルミは腹を押さえている。
[写真くださいッス]
[ほらよ]
でき上がった筑前煮を、カメラに収める。
[うっわー。おいしそーッス! 妹さんがうらやま]
[食いたいか? 適当オブ適当だぜ]
[愛する先輩が作ってくれたってだけで、ゴハン三倍いけるッス]
[わかった。じゃあ作ってきてやるよ]
突然、メッセが沈黙した。
その間に味付けを。
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