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第四章 因縁の地下遺跡へ

第38話 ダンジョン消滅

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 ボクはエレオノル姫といっしょに、ダンジョンの九層に転送される。

「あ、ヒューゴ!」

「ボクは大丈夫。みんなは無事!?」

「ええ。無事というか、なんというか……」

 ソーニャさんが、足元を指差す。
 
 ギソが、うつ伏せに倒れていた。息をしていない。

「死んでる?」

「死んだっていうか、急に止まった感じ」

 邪神ギソを倒したことで、ホムンクルスの機能が停止したのだろう。

「ホムンクルスは、術師が倒されると動かなくなります。今度こそ、危機は去ったといえるでしょう」

 エレオノル姫が、このダンジョンの無事を宣言する。

「姫様!」

 ザスキアさんが、エレベータの作動を確認した。
 ちゃんと、九層に止まっている。

「それじゃあ、本当に」

「はい。ダンジョンは、元に戻ったようです」

 切り取られた空間が、正常に戻ったようだ。


 ダンジョンが正常に戻ったことで、ボクたちはようやく長いダンジョンを抜ける。

 すごい、長い旅だった。兄の無念を晴らす旅とはいえ、時間がかかったなぁ。

 久しぶりに、外の空気を吸った気がする。
 


 ボクたちは、戦利品を確認する。

「ボクが手に入れたのは、ロングソードだった」

 ヘッテピさんに調べてもらったところ、【デュランダル】というロングソードらしい。片手でも、両手でも使える。今度は、雷の力を帯びているそうだ。
 今まで使っていたフレイムタンより、遥かに激レアアイテムだという。
 
「あたしは【ジョワユーズ】って杖を、手に入れたわ」

 ソーニャさんは、聖なる杖ジョワユーズを得たらしい。これを持つ者は、王になる器だと、ヘッテピさんから説明を受けていた。

「この杖自体が強いってわけじゃないの。持っていると、【賢者】に転職ができるのよ」

 魔法使いだけではなく、僧侶の神聖魔法まで獲得できるという。

「ほう。もはや無敵ですな」

「おじいさまを超えて強くなっちゃう? まあ、それもいいけどね」

 ボーゲンさんを超えても強くなったら、ソーニャさんはどうなっちゃうんだろう?

「祖父を超えても、祖父の偉大さは消えないわ。あたしは祖父よりちょっと強い、ただの魔法使いになるだけよ。彼の偉業は、覆されないから」

 そうだよね。冒険者の基準は、どれだけ強いかではない。どれだけ世界に貢献したかだ。
 
 他にも、キルシュは【オートクレール】という槍をゲットしたそうだ。飛ばしても、戻って来る槍型斧だとか。

「ヴィクは?」

「聖典ですな。といっても、ワタシは神に仕える身。無報酬でも、文句は言いませんよ」

 邪悪を追い払う強烈な魔法障壁を放つ、経典だという。これがあれば広い範囲をカバーでき、治癒魔法詠唱中でも襲われない。

 

 後日、ボクたちはまたお城にお呼ばれした。

 しかも、今回はシュタルクホン国王直々にお礼を言いたいそうだ。


 ボクたちがダンジョンを出たと同時に、ギソのダンジョンが世界から消滅した。邪神ギソの力が、世界に影響しなくなったからだろう。

 冒険者たちが、頭を抱えている。レアアイテムを、掘ろうとしていたのだろう。実際あそこは、いい狩り場だったし。
 どのみちあのダンジョンは、消さなければならなかったのだ。それが早まっただけのこと。

 忌々しいダンジョンが消滅したことで、街の雰囲気もよくなった気がする。治安がよくなり、陰気な淀んだ気配も消えていった。街の中にダンジョンがあるだけで、あそこまで雰囲気が悪くなっていたとは。

 
 あの後、姫様はザスキアさんと、死んでいった部下の埋葬をしていたという。
 ギソのお墓も作って、祈りを捧げたそうだ。
「事件の元凶である人物の墓など」と、ザスキアさんは反対したらしい。
 それでも、エレオノル姫は埋葬せずにはいられなかったそうだ。彼の一族が受けた仕打ちを、少しでも和らげようと。
 
「此度の働き、感謝する」

 報酬として、大量の金塊をもらう。この金貨の山は、セニュト・バシュにあったお宝だという。

「恐れ多くも国王、聞きたいことがございます。ギソの扱いは、なんだったのでしょうか?」

「……歴史を調べた結果、ギソに不当な扱いを行っていたのは、事実だった。情けないことにな」

 かなり昔のことになるが、ギソが魔王討伐部隊から帰った後も、実験動物のような仕打ちを受けていたらしい。しかも、王族自らが率先して、ギソをモルモットにしていたという。

「ひどい話ね」

「まったくだ。我々の代では、そのようなことはなかったのだが」

 ギソは自分の歴史を調べていた際に、先代ギソの書物から、邪神の禁忌に触れてしまったそうだ。それにより、邪神の操り人形にされてしまったという。

「代は変わっても、ギソの憎しみは消えなかったのだ」

 このお金は、ギソの故郷であるセニュト・バシュの復興に充てるという。

 眼の前にある金塊も、その一部でしかない。

「その金は自由だ。気に食わなければ、我が王国で補填させてもらう」

「よろしいので?」

「息子のことを思えば、これでも足りぬくらいなのだ。我が息子エルンストを看取ってくれて、礼をいう」

 ボクは、これでもいいと思っている。十分すぎるくらいだ。

 しかし、これで黙っていない人がいた。

「全然足りないわ」

 ソーニャさんである。
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