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第四章 因縁の地下遺跡へ

第36話 VSデーモンプリンス

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 まずは、デーモンプリンスを。操られているエルンスト王子を、倒さないと。

 だが、もうヒザが動かない。

 と思ったら、ヴィクが回復魔法を施してくれた。

「この、バカヒューゴ!」
 
 同時に、ソーニャさんに杖で小突かれる。

「あいた! こんなときになにするんだよ、ソーニャさんっ」

「こんなときだからよ! あたしが何も知らないと思ったの!? このバカ!」

 まずは、デーモンプリンスを。操られているエルンスト王子を、倒さないと。

 だが、もうヒザが動かない。

 と思ったら、ヴィクが回復魔法を施してくれた。

「この、バカヒューゴ!」
 
 同時に、ソーニャさんに杖で小突かれる。

「あいた! こんなときになにするんだよ、ソーニャさんっ」

「こんなときだからよ! あたしが何も知らないと思ったの!? このバカ!」

 やはりソーニャさんは、ボクの異変に気づいていたか。

「まったく。【身体強化レインフォース】で上がった程度の身体速度に、我が神の治癒魔法が間に合わないとでも?」

「ついてこられるの? ボクの動きに」

「あのねえ、あたしだって、ボーゲンの弟子なのよ! 孫娘ってだけじゃないの。ボーゲンにできるなら、あたしにだって!」

 ボクは、ソーニャさんを見くびっていたかもしれない。

「ヴィクは? 大丈夫?」

「この、ヴィクドインヌ。鳥神サヴィニャックに仕えるプリーストですよ? 我が崇拝する神サヴィニャックに、不可能はありません」
 
 なんだか、二人とも頼もしい。

「相手だって、ギソが裏でバフを掛けているのです。こちらも、バフのマシマシでまいりましょう」 

「そうよ。一人でやっててもしょうがないでしょうが」

 二人の言うとおりだ。ボクはいつの間にか、自分だけで戦わなくちゃって思っていた。他人に、身を任せてもいいんだ。パーティなんだから。

「身体強化はあたしが唱えてあげるわ。あんたの中途半端なパワーアップより、幾分かマシなはずよ」

 ソーニャさんが、ボクにレインフォースをかけてくれた。

 すごい。身体能力も、魔法の持続時間も、ボクより高い。

「これで、アンタは武器への付与魔法に全力を注げるでしょ? やっちゃいなさいよ」

「この二人は、ウチがしっかりカバーしておくから。二人も守らなくちゃって、思わなくていいからねっ」

 キルシュが、二人の前で槍を構えている。ボクがしくじったら、キルシュが補助してくれるみたいだ。

「ありがとう。ソーニャさんとヴィクをお願い、キルシュ!」

「あいよ」

 キルシュが、セーコさんと合図をした。

「セーコ、いざとなったら煙幕。あと、敵の動きの見極めをお願いね」

「任せな。ヒューゴ、左!」

 さっそく、セーコさんから指摘が飛んだ。

 ボクは、デーモンプリンスの剣を弾き飛ばす。
 ソーニャさんがレインフォースで強化してくれたおかげで、ちっとも痛くない。自分だけで剣を受け止めていたら、腕が粉々になっていただろう。

「お返しだ!」

 受け流した拍子に、剣で敵のノドを突く。

 しかし、これは相手に止められてしまった。
 
「打ち込みが甘いよ、ヒューゴ! まだ、相手が応じだと思っていないかい?」

「はい! やらかしました!」

「反省は後! 前に立てているだけでも、アンタはすごいからね! かち上げが来るよ!」

 デーモンプリンスが、下からすくい上げるように剣を振るってくる。

「この動き、利用させてもらうよ。【ツバメ返し】!」

 相手の剣戟を受け止めつつ、振り下ろす力に変えた。

 さしものデーモンプリンスも、かわしきれなかったようである。肩に、深い傷が入った。

 とはいえ、まったく安心できない。相手はまだ、腕が死んでいなかった。

「浅かったか!」

「いや。ダメージは通っているよ。アンデッドだから、ムリヤリ動かされている」

「浄化魔法などは、効かないですよね?」

「ギソに操られている、だけだからね。ギソを探したほうが早い。今、やってる」

 セーコさんは、後ろからアドバイスをしているだけじゃない。ギソの気配を、王女やザスキアさんと探り合っているのだ。

「このフロアのどこかにいるのは、確実なのです。しかし、どこにいるのか……!?」

 エレオノル王女が、急に総毛立つ。

「ヒューゴさん、ザスキア!」

 ボクとザスキアさんに、エレオノル姫が合図を送った。

 ザスキアさんと、ボクはうなずき合う。

 狙うは、デーモンプリンスの足元だ。

 ボクは前、ザスキアさんが後ろから、足に向けて攻撃した。

 ザスキアさんの刀を、デーモンプリンスが跳躍して回避する。

 そのスキに、ボクが剣で王子の腹を突く。

「今です、姫!」

 ボクは、王子から飛び退く。

 エレオノル姫が、王子の足元を撃った。王子の影に、魔法の銃弾を浴びせる。

「ギュオ!?」
 
 目を押さえながら、ギソが王子の影から実体化した。

「やはり、そこにいましたか。ボボル・ギソ」

 ボボル・ギソは、空間を操る魔法使いだ。ならば、空間を捻じ曲げでどこかに潜んでいる可能性がある。まして王子に対して強力なバフをかけるなら、至近距離でなければならない。
 となれば、可能性は一つ。王子の影となって張り付いていればいい。

 王子の身体が、壊れた人形のように崩れ去る。

「見事だな、エレオノル。さすが王家の血を引く者だ。しかしお前は、自らの手で兄を葬ったことになるのだ」

 ギソが、不愉快な笑い声を上げた。

 しかし姫は、毅然とした態度をとる。

「構いません。わたくしは兄を殺したのではない。兄を天に返したのです」

「……王家の最強伝説も、今日で終わる。兄妹もろとも、あの世に送ってくれる!」

 いよいよ、ギソとの本格的な戦いが始まろうとしていた。
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