14 / 302
1-1 謎ジョブ「玉座」に再就職!?
第14話 世界を間借り
しおりを挟む
いわれてみれば、チサちゃんは可愛さの中に、妖艶さが漂う。
しかし、ボクはどちらかというと、父性が勝った。
チサちゃんと変な関係になりたいとは思わない。
「チャームに耐性があるのも、あなたが選ばれた理由です。他の玉座候補たちは、チサ様を性的な対象として見ていました」
案外、女の子はそういう視線に敏感である。年齢を問わず。
「マナは強かったのですが、性格や性欲に問題が多すぎて。本人たちも自覚していましたたので、お引き取り願いました」
「そうでしたか」
ボクがここに呼ばれた理由の中で、一番納得できた。
それは、ボクにしか無理だろう。
「あと、気になったのは、意外と質素なんだなってことですかね」
「そうおっしゃると、思っておりました」
期待していた答えが来たと言わんばかりに、セイさんは顔をほころばせた。
「チサ様は魔王の中でもめずらしく、倹約家なのです」
普通はもっと『支配してやるぞ!』という気満々で侵略行為を行う。
けれども、チサちゃんは『自分だけ潤っても仕方がない』と、あまり手を広げすぎない。
「民を潤わせれば、勝手に資産が増える、それがチサ様の経営理念です」
『まず村人ありき』と考えているようだ。
「この世界も、元々魔王がいたんですよね」
ボクは、頭にあった可能性を、セイさんにぶつける。
チサちゃんは興味がないのか、ずっとカボチャのパイを食べていた。
よほど疲れたのだろう。
オレンジジュースを飲んで、即爆睡する。
「そうです。なぜ、そう思われたので?」
「この土地で働いている人々って、先住民ですよね? 人間まで作ったわけじゃないんでしょ?」
もし、そうではないとしたら、あの農民たちも、チサちゃんの創造物だと言うことになる。
だが、そんな気配はしなかった。
彼らには血が通っていて、自分の意志を持っている。
「その通りです」
ならば、元々あった世界に、チサちゃんを送り込んだわけだ。
ということは、前にも魔王が住んで、発展させた形跡だってあるはず。
「前の魔王は、随分と前に亡くなりました」
だから、土地が痩せ始めていたらしい。
その魔王が築いた文明も、森の中に沈んでいるという。
「土地再生は、あなたがくるまで本当に大変でした」
マナの質は高いがすぐガス欠になるチサちゃん、進まない土地再生、住民の不満をなだめる秘書のセイさん。
魔力回復装置である玉座の存在が急がれた。
「あやうく、世界が崩壊するところでした」
そこまでだったのか。
「たった数年でここまで発展したのは、奇跡なのです。チサ様のがんばりあってこそでした。人を集めて働き口を増やし、領土を豊かにする。それがチサ様の願いなのです」
チサちゃんは、どこまでも人のことを考えていた。
「ボクもお手伝いさせてください」
「よろしくお願いします。あら? うふふ」
セイさんが微笑む。
ボクの決意に答えてくれているのだろう。
寝ていながらも、チサちゃんはボクの手を握ってくれている。
ボクも握り返した。
しかし、ボクはどちらかというと、父性が勝った。
チサちゃんと変な関係になりたいとは思わない。
「チャームに耐性があるのも、あなたが選ばれた理由です。他の玉座候補たちは、チサ様を性的な対象として見ていました」
案外、女の子はそういう視線に敏感である。年齢を問わず。
「マナは強かったのですが、性格や性欲に問題が多すぎて。本人たちも自覚していましたたので、お引き取り願いました」
「そうでしたか」
ボクがここに呼ばれた理由の中で、一番納得できた。
それは、ボクにしか無理だろう。
「あと、気になったのは、意外と質素なんだなってことですかね」
「そうおっしゃると、思っておりました」
期待していた答えが来たと言わんばかりに、セイさんは顔をほころばせた。
「チサ様は魔王の中でもめずらしく、倹約家なのです」
普通はもっと『支配してやるぞ!』という気満々で侵略行為を行う。
けれども、チサちゃんは『自分だけ潤っても仕方がない』と、あまり手を広げすぎない。
「民を潤わせれば、勝手に資産が増える、それがチサ様の経営理念です」
『まず村人ありき』と考えているようだ。
「この世界も、元々魔王がいたんですよね」
ボクは、頭にあった可能性を、セイさんにぶつける。
チサちゃんは興味がないのか、ずっとカボチャのパイを食べていた。
よほど疲れたのだろう。
オレンジジュースを飲んで、即爆睡する。
「そうです。なぜ、そう思われたので?」
「この土地で働いている人々って、先住民ですよね? 人間まで作ったわけじゃないんでしょ?」
もし、そうではないとしたら、あの農民たちも、チサちゃんの創造物だと言うことになる。
だが、そんな気配はしなかった。
彼らには血が通っていて、自分の意志を持っている。
「その通りです」
ならば、元々あった世界に、チサちゃんを送り込んだわけだ。
ということは、前にも魔王が住んで、発展させた形跡だってあるはず。
「前の魔王は、随分と前に亡くなりました」
だから、土地が痩せ始めていたらしい。
その魔王が築いた文明も、森の中に沈んでいるという。
「土地再生は、あなたがくるまで本当に大変でした」
マナの質は高いがすぐガス欠になるチサちゃん、進まない土地再生、住民の不満をなだめる秘書のセイさん。
魔力回復装置である玉座の存在が急がれた。
「あやうく、世界が崩壊するところでした」
そこまでだったのか。
「たった数年でここまで発展したのは、奇跡なのです。チサ様のがんばりあってこそでした。人を集めて働き口を増やし、領土を豊かにする。それがチサ様の願いなのです」
チサちゃんは、どこまでも人のことを考えていた。
「ボクもお手伝いさせてください」
「よろしくお願いします。あら? うふふ」
セイさんが微笑む。
ボクの決意に答えてくれているのだろう。
寝ていながらも、チサちゃんはボクの手を握ってくれている。
ボクも握り返した。
0
お気に入りに追加
97
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。
勇者としての役割、与えられた力。
クラスメイトに協力的なお姫様。
しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。
突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。
そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。
なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ!
──王城ごと。
王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された!
そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。
何故元の世界に帰ってきてしまったのか?
そして何故か使えない魔法。
どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。
それを他所に内心あわてている生徒が一人。
それこそが磯貝章だった。
「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」
目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。
幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。
もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。
そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。
当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。
日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。
「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」
──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。
序章まで一挙公開。
翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。
序章 異世界転移【9/2〜】
一章 異世界クラセリア【9/3〜】
二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】
三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】
四章 新生活は異世界で【9/10〜】
五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】
六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】
七章 探索! 並行世界【9/19〜】
95部で第一部完とさせて貰ってます。
※9/24日まで毎日投稿されます。
※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。
おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。
勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。
ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。
【R18】僕の異世界転性記!【挿絵付】
サマヨエル
ファンタジー
【閲覧注意!】性的描写多数含みます。苦手な方はご遠慮ください。
ふと気がつくと見知らぬ場所で倒れていた少年。記憶の一切が無く、自分の名前すら思い出せない少年の本能は告げていた。ここは自分の居るべき世界ではない、異世界であると。
まるでゲームのような世界に胸を高める中ひょんなことから出現したステータスウィンドウには驚愕の一言が!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
特殊スキル:異世界転性
種族問わず。性交の数だけ自身のステータス上昇とスキル取得ができる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
誰もがうらやむ異世界性活が幕を開ける!
【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。
飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。
ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。
そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。
しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。
自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。
アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!
魔王の娘な陰キャロリ巨乳トラップマスターが罠で勇者を発情させ過ぎて、オナニーに夢中な姿を発見されて襲われ連続敗北イキして裏切り幸せ堕ちする話
フォトンうさぎ
ファンタジー
魔王の三女、ダルクネス・ユビドラ・フォーレンゲルス。通称、トラップマスターのダルクネス。彼女は魔王の子として生まれたとはいえ、魔力も体力も弱くて扱いも酷い一人ぼっちの根暗魔族であった。
貧弱でロリ巨乳な彼女がやることといえば、自分が作ったトラップだらけのダンジョンを監視しながら、哀れに散る冒険者達を観察しながらの引きこもりオナニー。
そんな彼女は今回、ダンジョンを攻略しにきた勇者クオンたちへ、特殊な催淫トラップを使用してその様子と快感を楽しんでいた。
しかし、勇者はいつの間にか催淫トラップを乗り越えて監視を潜り抜け、のけぞるほど激しい自慰をしているダルクネスの元までたどり着いていて……。
表紙は『NovelAI』に出力していただきました。
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
オークションで競り落とされた巨乳エルフは少年の玩具となる。【完結】
ちゃむにい
恋愛
リリアナは奴隷商人に高く売られて、闇オークションで競りにかけられることになった。まるで踊り子のような露出の高い下着を身に着けたリリアナは手錠をされ、首輪をした。
※ムーンライトノベルにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる