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第25話 チャーシューを作ろう

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「当然、そのような浅ましいゲスは即刻始末されますが、それでもマナの過剰放出によって滅びの道を歩んでしまった魔王は後を絶ちません」

 魔王の中には、土地を発展させすぎて、破滅の道を辿った輩も多い。
 人の土地の養分さえ欲しがって、人の手に滅ぼされた者もいる。

「耐えられるだけで奇跡なのですよ? 大毅様は、文字通り賢者なのかも知れません」

「いや、そんな」

 チサちゃんに性的な視線を送るのは、倫理的にヤバいと思っているだけだ。

「だから、チサちゃんは倹約家なんでしょうね」

 先を読む力に長けているのかも知れない。
 頂点にいる者は、多少臆病なくらいがちょうどいいと、ボクもビジネス書で読んだ。

「チサ様が降り立った土地は、前任者が大地を活性化しすぎて、逆に土地を殺してしまったのです。それが、荒野スタートたる理由でした」

 国土発展って難しい。正解なんてないんだろう。

 気がつくと、ちゃんこ級の食材が、あっという間になくなっていた。

「ごちそうさまでした」
 締めのうどんまで食べ終わり、チサちゃんが手を合わせる。

「ボクもごちそうさまです。いやー、おいしかった」

 こんなに肉を食べたのは、いつぶりだろう? 

「まだ、こんなにもイノシシ肉は残っています。当分、肉食には困らないかと」

 漬物石のようなブロック肉を、セイさんが見せつけた。

「ですが、レパートリーをどうしようかと」

 鍋以外には、燻製にするくらいしかないらしい。

 としたら。ちょっとやってみたいことがある。

「後で台所を貸してください」

 食後、ボクはチャーシューを作ってみることに。
 といっても、素人の見よう見まねだけど。

 イノシシのバラ肉ブロックを、タコ糸で縛る。くくったブロック肉を、鉄の鍋に放り込む。ワインをドボドボ、ネギとショウガをトッピングした。

「しょう油があれば、よかったんだけど」

 豆がこんなにもあるが、しょう油の文化はないらしい。

「魚醤がありますが」
「おお、これは使えます」

 魚を使用したしょう油を加えて、あとは煮込むだけ。

 チャーシューができるのを待ちながら、この世界についてセイさんに問いかける。

「じゃあ、もう一つ。この世界には、魔王以外の支配階級はないのですか?」

「人や亜種族が納める王国が多数あります。自治は一応、認められています」

 この世界で魔王というのは、いわゆる「大統領」のような各国の代表なんだとか。
 よって、一人ではない。

 魔族の王という血統があれば、どんな人物でもなれる。

 各国の人類と敵対などしていない。
 なので、討伐対象にもならないそうだ。
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