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第五章 敵の総大将が動き出しました!
第72話 これが私の……全力だ!
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「やはり、気づいていたか」
「貴公が負傷していることは、盗賊団壊滅のときに知った。貴公の周辺に漂う魔力量を見ていれば分かる。アガリアレプトとの戦が、どれだけの死闘だったか」
騙し通せるはずもないか。
「あの小娘に加勢してもらえばよかろう」
「リッコか。確かにあの子なら、お前など一撃で葬り去ろう」
誇張ではない。リッコなら、本当にできる。
「それほどかあの娘。シトリーに指一本触れさせなかっただけはある。あの娘、どこで拾ってきた?」
「気づけば側にいた。正体は、私も知らん」
確かに、リッコは不思議な子だった。それでも。
「キエフ伝統の紋章を持っていた。秘法のカギを蘇らせたほどだ。何か重大な秘密があるに違いない」
「あれこれ詮索するつもりはないよ」
「ならば、我々が調査するとしよう」
「だったら、止めるしかあるまいね」
リッコに危害を加えるというなら、こちらも全力でいかせてもらう。
キャンディケインに雷を纏わせ、斬りかかる。
二度打ち込み、相手の防御を崩す。
ガードが開いた箇所に、ステッキの先端を向けて、火炎の弾を発砲した。
刀の鞘で、グシオンは受け止める。
それでも、飛び散った火炎がグシオンの頬をかすめた。
「太刀筋に熱が籠もってきたではないか。それだけあの娘が大事か?」
頬から流れる血を、グシオンは手の甲で拭う。
「私は、お前たちを始末するだけさ」
「生き返った貴様に、こちらも応えるとしよう」
刀を上段に構え、グシオンが力を込める。
隙だらけのはずなのに、ソランジュは踏み込めない。
不用意に近づけば、こちらがやられてしまう。
「誠の忠義、ご覧にいれよう」
グシオンが、刀に黒い気迫を纏わせる。
いよいよ、最大級の攻撃が来る、とソランジュは身構えた。
「そうだ。貴公も本気を出すがよい。でなければ、張り合いがないというもの」
さすがに、魔力障壁では防ぎきれない。それでも、被害を最小限に抑えねば。
ありったけの魔力を、キャンディケインに圧縮する。
衝撃波で、建物は多少崩れるかも知れない。
が、人的被害は防がねばならぬ。
住む人々こそ、国の財産だ。
クテイの繁栄は、人あってこそ。
被害を食い止めるには、グシオンそのものを消滅させる必要があった。
しかし、そんなことを許す相手か?
手加減して勝てる相手でもなく、こちらも万全ではない。
身を挺してかばうだけで手一杯だ。
敵は待ってくれない。
やるか。
全て魔力を防御へ回し、キャンディケインを横へ持つ。広範囲に、障壁を形成した。
「無駄なことを!」
怨念の籠もった黒い刃が、障壁に衝突する。
周りの商品や人々が、衝撃によって軽く吹っ飛ぶ。
焼き付く程の邪念を、ソランジュはその身一つで受け止めた。
少しでも気を抜くと、押し戻されてしまう。
障壁に、ヒビが入った。ニワカ仕込みでは、これが限界か。
「がああああ!」
グシオンの袈裟斬りを、まともに浴びる。
致命傷とはいかなかったが、ダメージは大きい。
地面に叩き付けられ、ソランジュは起き上がれない。
「まだ息があるか。せめて介錯をしてやるが情けか」
地に降りたグシオンが、ソランジュの首に照準を合わせ、刀を振り上げた。
しかし、ソランジュは諦めていない。
聞こえるのだ。大地の響きが。
こちらに向かってくる。
オオカミの疾走が。
「ソランジュさんから、離れなさぁい!」
リッコが、聖剣を構える。
「今だ、リッコ! 横に撃て!」
「はい!」
地面と水平に、リッコが衝撃波を放った。
「ぬう、これは!」
「聖剣の一撃だ! 受け止められまい!」
さしものグシオンも、避けざるを得ない。跳躍してかわす。
ソランジュのチャンスは、そこだった。
キャンディケインに、残りの魔力を全て注ぎ込む。
「貴公、こうなることも全て読んで!」
「切り札は見せぬモノだ! 紅焔波《プロミネンス・ブラスト》!」
ソランジュは、上空へ跳んだグシオンに向けて、朱い煉獄を撃ち放った。
「ごおおおおあああああ!」
灰になるまで、グシオンを焼き尽くす。
暗雲が立ちこめていたクテイに、一瞬光が差し込む。
それほどまで、朱い火柱は空高く突き抜けていった。
「どうにか、勝ったな」
グシオンが消滅したのを確認し、ソランジュは立ち上がった。
「貴公が負傷していることは、盗賊団壊滅のときに知った。貴公の周辺に漂う魔力量を見ていれば分かる。アガリアレプトとの戦が、どれだけの死闘だったか」
騙し通せるはずもないか。
「あの小娘に加勢してもらえばよかろう」
「リッコか。確かにあの子なら、お前など一撃で葬り去ろう」
誇張ではない。リッコなら、本当にできる。
「それほどかあの娘。シトリーに指一本触れさせなかっただけはある。あの娘、どこで拾ってきた?」
「気づけば側にいた。正体は、私も知らん」
確かに、リッコは不思議な子だった。それでも。
「キエフ伝統の紋章を持っていた。秘法のカギを蘇らせたほどだ。何か重大な秘密があるに違いない」
「あれこれ詮索するつもりはないよ」
「ならば、我々が調査するとしよう」
「だったら、止めるしかあるまいね」
リッコに危害を加えるというなら、こちらも全力でいかせてもらう。
キャンディケインに雷を纏わせ、斬りかかる。
二度打ち込み、相手の防御を崩す。
ガードが開いた箇所に、ステッキの先端を向けて、火炎の弾を発砲した。
刀の鞘で、グシオンは受け止める。
それでも、飛び散った火炎がグシオンの頬をかすめた。
「太刀筋に熱が籠もってきたではないか。それだけあの娘が大事か?」
頬から流れる血を、グシオンは手の甲で拭う。
「私は、お前たちを始末するだけさ」
「生き返った貴様に、こちらも応えるとしよう」
刀を上段に構え、グシオンが力を込める。
隙だらけのはずなのに、ソランジュは踏み込めない。
不用意に近づけば、こちらがやられてしまう。
「誠の忠義、ご覧にいれよう」
グシオンが、刀に黒い気迫を纏わせる。
いよいよ、最大級の攻撃が来る、とソランジュは身構えた。
「そうだ。貴公も本気を出すがよい。でなければ、張り合いがないというもの」
さすがに、魔力障壁では防ぎきれない。それでも、被害を最小限に抑えねば。
ありったけの魔力を、キャンディケインに圧縮する。
衝撃波で、建物は多少崩れるかも知れない。
が、人的被害は防がねばならぬ。
住む人々こそ、国の財産だ。
クテイの繁栄は、人あってこそ。
被害を食い止めるには、グシオンそのものを消滅させる必要があった。
しかし、そんなことを許す相手か?
手加減して勝てる相手でもなく、こちらも万全ではない。
身を挺してかばうだけで手一杯だ。
敵は待ってくれない。
やるか。
全て魔力を防御へ回し、キャンディケインを横へ持つ。広範囲に、障壁を形成した。
「無駄なことを!」
怨念の籠もった黒い刃が、障壁に衝突する。
周りの商品や人々が、衝撃によって軽く吹っ飛ぶ。
焼き付く程の邪念を、ソランジュはその身一つで受け止めた。
少しでも気を抜くと、押し戻されてしまう。
障壁に、ヒビが入った。ニワカ仕込みでは、これが限界か。
「がああああ!」
グシオンの袈裟斬りを、まともに浴びる。
致命傷とはいかなかったが、ダメージは大きい。
地面に叩き付けられ、ソランジュは起き上がれない。
「まだ息があるか。せめて介錯をしてやるが情けか」
地に降りたグシオンが、ソランジュの首に照準を合わせ、刀を振り上げた。
しかし、ソランジュは諦めていない。
聞こえるのだ。大地の響きが。
こちらに向かってくる。
オオカミの疾走が。
「ソランジュさんから、離れなさぁい!」
リッコが、聖剣を構える。
「今だ、リッコ! 横に撃て!」
「はい!」
地面と水平に、リッコが衝撃波を放った。
「ぬう、これは!」
「聖剣の一撃だ! 受け止められまい!」
さしものグシオンも、避けざるを得ない。跳躍してかわす。
ソランジュのチャンスは、そこだった。
キャンディケインに、残りの魔力を全て注ぎ込む。
「貴公、こうなることも全て読んで!」
「切り札は見せぬモノだ! 紅焔波《プロミネンス・ブラスト》!」
ソランジュは、上空へ跳んだグシオンに向けて、朱い煉獄を撃ち放った。
「ごおおおおあああああ!」
灰になるまで、グシオンを焼き尽くす。
暗雲が立ちこめていたクテイに、一瞬光が差し込む。
それほどまで、朱い火柱は空高く突き抜けていった。
「どうにか、勝ったな」
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