68 / 92
第五章 敵の総大将が動き出しました!
第69話 友が守った街は、私が守る。
しおりを挟む
「致命傷どころか、かすり傷にもならぬか。化物め」
「どうしたグシオン、ここからが本番だ!」
グシオンの振り降ろした刀を、ソランジュはキャンディケインで受け流す。
威力までは殺しきれず、衝撃波が地面を抉った。
ステッキの先端から、ソランジュが煉獄の炎を集結させる。熱の球体として放射した。もはや、小型の太陽である。並の剣なら受け止めただけで溶解してしまう。
だが、グシオンの刀は小型太陽炉すら容易く切断した。
熱の球が分裂し、店舗に衝突しかける。
キャンディケインから雷を放ち、熱球の片方を破裂させた。もう片方は自分で受け止める。魔法障壁で止めたが、衝撃は殺し切れてなかった。
左手に氷の刃を作り出し、二刀流でグシオンに斬りかかる。飛び道具を相殺するのなら、直接魔法を叩き込む。
剣に溢れる執念、剣を振るう腕にまとう気迫が、ダメージすらものともしない。
ソランジュの頬には、無数の傷ができていた。服は破れ、伝説の魔女といった余裕はない。グシオンも同様に、火炎弾の爆撃を喰らって、全身に炎症を起こしている。
互いに満身創痍であった。
歴戦の侍にしては、戦が泥臭い。
「どうしたソランジュ? 攻めが幾分か消極的ぞ」
グシオンのいうとおり、街を見捨てて全力で戦えば、グシオンなど瞬殺できる。
だが、ソランジュは街の被害を最小限に押さえ、衝撃をすべてグシオンに浴びせていた。
コンパクトな攻撃ながら、その破壊力は街の消滅すら可能だろう。それを、両者が互いに浴びせているのだ。
街を守るため、気を使いながら戦っている。自分でも甘い考えだと思う。
しかし、命をかけられるならかける。
コジモは、命をかけることすらできずに死んだ。
今のソランジュは、心がコジモと共にあった。
「それほどまで、救う価値のある街ぞな? 我にはそう思えぬが?」
「お前ら魔族には、一生分からぬさ。人間の守っている街が以下に尊いかなど」
自分の身体で街をかばえるなら、いくらでも差し出す。
コジモが愛した街を、この男は平然と壊せるのだ。
彼にとっては、魔王だけが全てだから。
魔王は両性だった。
女として抱かれる側がソランジュであり、グシオンは男として抱く側だ。
愛着、執着はグシオンの方が上か。
「そんなに愛していたか、魔王を?」
「黙れ。気安く愛を語るな。忠義の意味さえ知らぬ卑しきダークエルフが」
愛、か。持った覚えはなかった。
魔法で全身を加速させて、ようやくグシオンの動きについてこれらるレベルだった。
会わないうちに、相当鍛えていたようである。
「どうした、ソランジュ。その程度か?」
「格下だという自覚はないのか?」
「その格下と見下している相手に、えらく苦戦しているではないか」
ソランジュの強がりは、見抜かれているらしい。
やはり、街を防衛しながら、最上位の魔族に挑むのは無理がある。
「知っているぞ、ソランジュ・オルセンよ。貴公、弱体化しているな?」
「どうしたグシオン、ここからが本番だ!」
グシオンの振り降ろした刀を、ソランジュはキャンディケインで受け流す。
威力までは殺しきれず、衝撃波が地面を抉った。
ステッキの先端から、ソランジュが煉獄の炎を集結させる。熱の球体として放射した。もはや、小型の太陽である。並の剣なら受け止めただけで溶解してしまう。
だが、グシオンの刀は小型太陽炉すら容易く切断した。
熱の球が分裂し、店舗に衝突しかける。
キャンディケインから雷を放ち、熱球の片方を破裂させた。もう片方は自分で受け止める。魔法障壁で止めたが、衝撃は殺し切れてなかった。
左手に氷の刃を作り出し、二刀流でグシオンに斬りかかる。飛び道具を相殺するのなら、直接魔法を叩き込む。
剣に溢れる執念、剣を振るう腕にまとう気迫が、ダメージすらものともしない。
ソランジュの頬には、無数の傷ができていた。服は破れ、伝説の魔女といった余裕はない。グシオンも同様に、火炎弾の爆撃を喰らって、全身に炎症を起こしている。
互いに満身創痍であった。
歴戦の侍にしては、戦が泥臭い。
「どうしたソランジュ? 攻めが幾分か消極的ぞ」
グシオンのいうとおり、街を見捨てて全力で戦えば、グシオンなど瞬殺できる。
だが、ソランジュは街の被害を最小限に押さえ、衝撃をすべてグシオンに浴びせていた。
コンパクトな攻撃ながら、その破壊力は街の消滅すら可能だろう。それを、両者が互いに浴びせているのだ。
街を守るため、気を使いながら戦っている。自分でも甘い考えだと思う。
しかし、命をかけられるならかける。
コジモは、命をかけることすらできずに死んだ。
今のソランジュは、心がコジモと共にあった。
「それほどまで、救う価値のある街ぞな? 我にはそう思えぬが?」
「お前ら魔族には、一生分からぬさ。人間の守っている街が以下に尊いかなど」
自分の身体で街をかばえるなら、いくらでも差し出す。
コジモが愛した街を、この男は平然と壊せるのだ。
彼にとっては、魔王だけが全てだから。
魔王は両性だった。
女として抱かれる側がソランジュであり、グシオンは男として抱く側だ。
愛着、執着はグシオンの方が上か。
「そんなに愛していたか、魔王を?」
「黙れ。気安く愛を語るな。忠義の意味さえ知らぬ卑しきダークエルフが」
愛、か。持った覚えはなかった。
魔法で全身を加速させて、ようやくグシオンの動きについてこれらるレベルだった。
会わないうちに、相当鍛えていたようである。
「どうした、ソランジュ。その程度か?」
「格下だという自覚はないのか?」
「その格下と見下している相手に、えらく苦戦しているではないか」
ソランジュの強がりは、見抜かれているらしい。
やはり、街を防衛しながら、最上位の魔族に挑むのは無理がある。
「知っているぞ、ソランジュ・オルセンよ。貴公、弱体化しているな?」
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
ガタリアの図書館で
空川億里
ファンタジー
(物語)
ミルルーシュ大陸の西方にあるガタリア国内の東の方にあるソランド村の少女パムは両親を亡くし伯母の元へ引き取られるのだが、そこでのいじめに耐えかねて家を出る。
そんな彼女の人生には、思わぬ事件が待ち受けていた。
最初1話完結で発表した本作ですが、最初の話をプロローグとして、今後続けて執筆・発表いたしますので、よろしくお願いします。
登場人物
パム
ソランド村で生まれ育った少女。17歳。
チャーダラ・トワメク
チャーダラ伯爵家の長男で、準伯爵。
シェンカ・キュルン
女性の魔導士。
ダランサ
矛の使い手。ミルルーシュ大陸の海を隔てて南方にあるザイカン大陸北部に住む「砂漠の民」の出身。髪は弁髪に結っている。
人間以外の種族
フィア・ルー
大人の平均身長が1グラウト(約20センチ)。トンボのような羽で、空を飛べる。男女問わず緑色の髪は、短く刈り込んでいる。
地名など
パロップ城
ガタリア王国南部にある温暖な都市。有名なパロップ図書館がある。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。
婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ
あげは
ファンタジー
「私は、ユミエラとの婚約を破棄する!」
学院卒業記念パーティーで、婚約者である王太子アルフリードに突然婚約破棄された、ユミエラ・フォン・アマリリス公爵令嬢。
家族にも愛されていなかったユミエラは、王太子に婚約破棄されたことで利用価値がなくなったとされ家を勘当されてしまう。
しかし、ユミエラに特に気にした様子はなく、むしろ喜んでいた。
これまでの生活に嫌気が差していたユミエラは、元孤児で転生者の侍女ミシェルだけを連れ、その日のうちに家を出て人のいない森の奥に向かい、森の中でカフェを開くらしい。
「さあ、ミシェル! 念願のスローライフよ! 張り切っていきましょう!」
王都を出るとなぜか国を守護している神獣が待ち構えていた。
どうやら国を捨てユミエラについてくるらしい。
こうしてユミエラは、転生者と神獣という何とも不思議なお供を連れ、優雅なスローライフを楽しむのであった。
一方、ユミエラを追放し、神獣にも見捨てられた王国は、愚かな王太子のせいで混乱に陥るのだった――。
なろう・カクヨムにも投稿
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
淫らなお姫様とイケメン騎士達のエロスな夜伽物語
瀬能なつ
恋愛
17才になった皇女サーシャは、国のしきたりに従い、6人の騎士たちを従えて、遥か彼方の霊峰へと旅立ちます。
長い道中、姫を警護する騎士たちの体力を回復する方法は、ズバリ、キスとH!
途中、魔物に襲われたり、姫の寵愛を競い合う騎士たちの様々な恋の駆け引きもあったりと、お姫様の旅はなかなか困難なのです?!
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる