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第五章 敵の総大将が動き出しました!

第69話 友が守った街は、私が守る。

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「致命傷どころか、かすり傷にもならぬか。化物め」
「どうしたグシオン、ここからが本番だ!」 

 グシオンの振り降ろした刀を、ソランジュはキャンディケインで受け流す。

 威力までは殺しきれず、衝撃波が地面を抉った。

 ステッキの先端から、ソランジュが煉獄の炎を集結させる。熱の球体として放射した。もはや、小型の太陽である。並の剣なら受け止めただけで溶解してしまう。

 だが、グシオンの刀は小型太陽炉すら容易く切断した。

 熱の球が分裂し、店舗に衝突しかける。

 キャンディケインから雷を放ち、熱球の片方を破裂させた。もう片方は自分で受け止める。魔法障壁で止めたが、衝撃は殺し切れてなかった。

 左手に氷の刃を作り出し、二刀流でグシオンに斬りかかる。飛び道具を相殺するのなら、直接魔法を叩き込む。

 剣に溢れる執念、剣を振るう腕にまとう気迫が、ダメージすらものともしない。 

 ソランジュの頬には、無数の傷ができていた。服は破れ、伝説の魔女といった余裕はない。グシオンも同様に、火炎弾の爆撃を喰らって、全身に炎症を起こしている。

 互いに満身創痍であった。

 歴戦の侍にしては、戦が泥臭い。

「どうしたソランジュ? 攻めが幾分か消極的ぞ」
 グシオンのいうとおり、街を見捨てて全力で戦えば、グシオンなど瞬殺できる。
 だが、ソランジュは街の被害を最小限に押さえ、衝撃をすべてグシオンに浴びせていた。

 コンパクトな攻撃ながら、その破壊力は街の消滅すら可能だろう。それを、両者が互いに浴びせているのだ。

 街を守るため、気を使いながら戦っている。自分でも甘い考えだと思う。

 しかし、命をかけられるならかける。

 コジモは、命をかけることすらできずに死んだ。

 今のソランジュは、心がコジモと共にあった。

「それほどまで、救う価値のある街ぞな? 我にはそう思えぬが?」
「お前ら魔族には、一生分からぬさ。人間の守っている街が以下に尊いかなど」

 自分の身体で街をかばえるなら、いくらでも差し出す。

 コジモが愛した街を、この男は平然と壊せるのだ。
 彼にとっては、魔王だけが全てだから。

 魔王は両性だった。
 
 女として抱かれる側がソランジュであり、グシオンは男として抱く側だ。

 愛着、執着はグシオンの方が上か。

「そんなに愛していたか、魔王を?」
「黙れ。気安く愛を語るな。忠義の意味さえ知らぬ卑しきダークエルフが」

 愛、か。持った覚えはなかった。

 魔法で全身を加速させて、ようやくグシオンの動きについてこれらるレベルだった。
 会わないうちに、相当鍛えていたようである。

「どうした、ソランジュ。その程度か?」
「格下だという自覚はないのか?」
「その格下と見下している相手に、えらく苦戦しているではないか」

 ソランジュの強がりは、見抜かれているらしい。

 やはり、街を防衛しながら、最上位の魔族に挑むのは無理がある。

「知っているぞ、ソランジュ・オルセンよ。貴公、弱体化しているな?」
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