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第四章 本格的な宝探しです!

第62話 ソランジュさんの修羅場が見られますよ!

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 紋章は消えて、リッコの手は宝石を掴んでいた。

「これが、キエフとクテイを結んだ、秘宝?」

 リッコが持っているのは、金細工の装飾に包まれた、虹色の宝石である。価値がある美術品だと、素人のリッコにも分かるほど、立派な代物だ。

「これは、キエフオパールだニャ!」

 キエフで採れる、魔力の籠もったオパールのことを指す。
 通常のオパールより、ややオレンジがかっている。
 太陽を閉じ込めているからだ、という言い伝えまであった。

「やったなリッコ。お宝ゲットしたニャ」
「はい。でも……」
「どうかしたのか?」

 ソランジュの問いかけにも、「いえ、別に」と空返事で済ませる。



 なぜか、腑に落ちない。

 まだ、なにかある気がする。



「しかし、この秘宝を見つけ出すカギを持っていたとは。いったい、キミは何者だ?」

 それを一番知りたいのは、他ならぬリッコだった。コジモ王女と顔が似ていないから、血縁というわけでもないだろう。
 
 ますます、リッコは自分が誰なのか分からない。

「さて、早く戻ろう」



 ソランジュが転移魔法を唱えようとした瞬間、長い髪がリッコの宝石を捕らえた。




「そうはいかないわ! 宝石をいただくのはこのアタシよ!」
 タンドック夫人が、宝石を奪おうと髪をたぐり寄せる。

 まだ、男爵夫人が残っていた。どこに消えていたのか。

「剣で切れません!」

 リッコが刃を当てるが、髪は複雑な繊維質らしく、刃を通さない。

「どけリッコ、私の魔法で焼き尽くす」
「あなたたちの相手はこいつらにさせるわ。出ておいで!」




 リッコたちを、大量の魔族が取り囲む。




「どれもグレーターデーモン級か。厄介だな」
 ソランジュが戦況を確かめる。

 ここは死火山の火口部分で、一度登らないと行けない。転移魔法と言えど、このポイントから跳躍する必要がある。よって、上を遮られると魔法は使えなかった。


「囲まれちゃってます!」

 リッコも応戦したいが、シールドまで髪が巻き付いてきて、身動きが取れなくなっていく。

「ダメだニャ。ワイのクナイも通らないニャ!」
 チヨメが、手裏剣を男爵夫人めがけて放つ。

 だが、髪でガードされた。

「心配は無用だ。お前も逃がさん。宝石も取り戻す」



「呆れた。この状況で、まだそんなことが言えるの?」


「コレを見てから言うんだな」


 突然、ソランジュの魔力が膨れあがる。これまでにない熱量が、ソランジュの身体から溢れ出す。

「朱砂の魔女の本気、見せてやろう。『紅焔衝《プロミネンス・ブレイズ》!』

 キャンディケインの赤色から、炎がヘビのように巻き起こった。
 ソランジュの起こした火砕流は、周辺にを取り囲んでいた高位の魔族たちを喰らい、焼き尽くす。リッコとチヨメをうまくよけて。

「なんなの!?」

 さすがの男爵夫人も、髪の毛を解いて脱出しなければならないほどの、魔力衝撃だった。

「うわー噴火か!」「山火事だ!」
 外で、冒険者たちが騒いでいる。

「山の表面がマグマのように溶け出して、冒険者たちに降り注いでいるらしいな。これで連中も、少しは頭が冷えるだろう」
 ソランジュが息を整える。



 辺りが再び、静けさを取り戻す。


「敵の反応なし。よし。戻るか」
 そういうソランジュの足音は、ふらついていた。

「かまわないニャ。ありがとうニャ、ソランジュ」
「帰りは、わたしがお守りします!」

 右にチヨメ、左にリッコが肩を貸す。

「じゃあ、お言葉に甘えて」

 魔力を空にした魔法使いを担いでいるが、リッコの足取りは軽い。
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