上 下
18 / 92
第二章 魔女さんと二人旅なのに、トラブル続出ですか!?

第18話 壮絶な昔話です!

しおりを挟む
 寄り合い馬車に乗って、ワーンスから南東にあるクテイへ向かう。
 馬車の数は三台だ。
 最後尾の二台には、クテイへ運ぶ資材が入っている。

 二人は、先頭を進むホロなし馬車の荷台に乗っていた。

 荷台にもたれながら、ソランジュは辺りを見渡す。

「ホントは、イグルにでも乗っていれば、一晩で着くんだけどね」
「イグルちゃんって、乗れるんですか?」
「乗ろうと思えば。けど、あの子は野生が好きだからね。ほったらかしにしているんだ」

 それに、とソランジュは付け加えた。

「この旅は、護衛任務も兼ねている。警戒を怠らないようにしよう」

「はい」
 リッコは背筋を伸ばす。

 クテイまでの道のりには、盗賊が出るらしい。

「まあ、そこまで気張らずに、ゆったり行こう」

 そういわれても、リッコはソワソワしてしまう。

 いつどこで襲われるか、分かったものではない。
 自分たちは自衛できるが、馬車には小さな子どもも乗っているのだ。襲われたら大変である。

「ほれ」
 ソランジュが、おやつのナッツを数粒、投げてきた。
 リッコは口でキャッチする。

「ありがとうございます」

「いいさ。キミには、私の依頼も手伝ってもらうんだからな」

「宝探し、ですよね?」

 遙か昔に地中へと沈んだという、クテイの秘宝。

「君の話は聞いたから、私の話をしよう。『真紅の魔女』の誕生秘話だよ」

「昔から強くてみんなの憧れだったんですか?」

「いいや。当初の私は最下層の貧民で、エルフ族の中でも最弱さったよ」

 一〇〇年前、ソランジュは弱いダークエルフだった。


 えっ、とリッコは絶句する。



「驚きです。今のソランジュさんからは、想像もできません」
「本当さ。エルフの里で、私は下働きをしている身分だったんだよ」

 普通のエルフに比べ、魔族の血を引くダークエルフは身分が低い。
 不貞の子として、ソランジュは肩身の狭い思いをしたという。

「でも、そんな私を救ってくれた人物がいた。魔王だよ」
「そ、そんな話を往来でしていいんですか?」

「構わないさ。『原語認識の阻害』魔法を周辺に掛けている。私たちの会話は『恋バナ』として他の客には聞こえているよ」

「えらい場違いなチョイスですね」

「話を戻そう。私はスカウトされ、村を離れることとなった」

 エルフの里を抜けるとき、魔方訓練用の石盤を、バカにしてきたライバルの顔面に叩き付けてやったらしい。

「光になった『pedicabo ego  vos omnes』という文字が、ライバルの歯と共に飛び散ったのを、よーく覚えているよ」

「あ、あはは……これ、笑っていいんでしょうか」

 バカ笑いするソランジュに合わせてみたが。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ

あげは
ファンタジー
「私は、ユミエラとの婚約を破棄する!」 学院卒業記念パーティーで、婚約者である王太子アルフリードに突然婚約破棄された、ユミエラ・フォン・アマリリス公爵令嬢。 家族にも愛されていなかったユミエラは、王太子に婚約破棄されたことで利用価値がなくなったとされ家を勘当されてしまう。 しかし、ユミエラに特に気にした様子はなく、むしろ喜んでいた。 これまでの生活に嫌気が差していたユミエラは、元孤児で転生者の侍女ミシェルだけを連れ、その日のうちに家を出て人のいない森の奥に向かい、森の中でカフェを開くらしい。 「さあ、ミシェル! 念願のスローライフよ! 張り切っていきましょう!」 王都を出るとなぜか国を守護している神獣が待ち構えていた。 どうやら国を捨てユミエラについてくるらしい。 こうしてユミエラは、転生者と神獣という何とも不思議なお供を連れ、優雅なスローライフを楽しむのであった。 一方、ユミエラを追放し、神獣にも見捨てられた王国は、愚かな王太子のせいで混乱に陥るのだった――。 なろう・カクヨムにも投稿

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい

梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。

性格が悪くても辺境開拓できますうぅ!

エノキスルメ
ファンタジー
ノエイン・アールクヴィストは性格がひねくれている。 大貴族の妾の子として生まれ、成人するとともに辺境の領地と底辺爵位を押しつけられて実家との縁を切られた彼は考えた。 あのクソ親のように卑劣で空虚な人間にはなりたくないと。 たくさんの愛に包まれた幸福な人生を送りたいと。 そのためにノエインは決意した。誰もが褒め称える理想的な領主貴族になろうと。 領民から愛されるために、領民を愛し慈しもう。 隣人領主たちと友好を結び、共存共栄を目指し、自身の幸福のために利用しよう。 これはちょっぴり歪んだ気質を持つ青年が、自分なりに幸福になろうと人生を進む物語。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載させていただいています

淫らなお姫様とイケメン騎士達のエロスな夜伽物語

瀬能なつ
恋愛
17才になった皇女サーシャは、国のしきたりに従い、6人の騎士たちを従えて、遥か彼方の霊峰へと旅立ちます。 長い道中、姫を警護する騎士たちの体力を回復する方法は、ズバリ、キスとH! 途中、魔物に襲われたり、姫の寵愛を競い合う騎士たちの様々な恋の駆け引きもあったりと、お姫様の旅はなかなか困難なのです?!

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

処理中です...