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第一章 ボッチ聖騎士です。魔女さん、友達になりませんか?
第16話 どこに宿を取ってるんです!?
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宿に戻ってからも、リッコはソランジュと話し込んだ。
人とこんなに長く話すなんて、本当にいつ振りだろうか。
「おっ。内湯ではないか」
部屋に、露天風呂があった。
空に浮かぶ月が、朱砂のようにキレイである。まるでソランジュのために作られたような宿だった。
……妙に艶っぽい声さえ聞こえてこなければ。
「なんですか? えらくお盛んな、ってぇええええ!?」
隣室の露天風呂で、中年の男と若い女が「いたして」いた。
「はわーっ!」というリッコの声に女が気づく。
女性を抱えたまま、カップルが室内に引っ込んだ。
どの部屋からも、外から丸聞こえなほどの大合唱である。
リッコは顔が熱くなった。
「ていうかここ、ラブホじゃないですか!?」
裏手にある上に、遊郭も近いから、おかしいとは思っていたのだ。いい値段もしたから。
「失敬だな。ちゃんとしたホテルだぞ。貴族が不倫に使っているだけだ」
「一緒じゃないですか! わたしまだ一六ですよ! なんてところに連れてきたんですか!」
「こんな宿、一五歳から入れるよ」
「入れますけどね!?」
ツッコミが追いつかない。
かといって荷物をまとめてまだ空いている宿を探すわけにも行かず。疲労がたまっているからら野宿も嫌だ。
なにより、風呂の湯加減が最高で。
「大浴場では人が多くてゆったりできん。どうだろう、入浴は一緒に」
ソランジュが脱ぎ出すと、リッコは自分の身体を抱きしめて拒絶した。
「お風呂は別々です!」
「よいではないか」
「おっさんですか! まったく油断もスキもありませんね!」
「東洋には裸の付き合いなるモノがあるではないか」
確かに、あるにはある。
「それは殿方です! あなたには何をされるか」
「何を言うか。純潔を失うと聖職を失うなどの迷信を信じているネンネでもあるまいて」
「そうですよ! ヒラクちゃんを手籠めにしようとした司教をぶっ飛ばしてやりましたよ!」
上位の僧侶が、生娘に貞淑を守らせる方便であると。
純粋に信じた少女は、哀れ老獪なる高僧に身体を許すのだ。
「神に認められた」とかそそのかされて。
「ソランジュさんからどうぞ!」
「残念」
ソランジュは行水で終了、リッコは長湯を楽しんだ。
湯浴みで眠気が出はじめ、リッコの瞼が開閉を続ける。
なんだか、凄く眠い。面倒な女性を相手にしたせいだろう。
「じゃあ、おやすみ。明日が楽しみだ」
「わたしもです。ソランジュさんは、まだ寝ないんですか?」
「少し飲んでから、眠ることにするよ」
「あっ、変なことはしないでください」
「分かっているよ。同意なき夜這いをするほど、飢えちゃいないよ」
寝間着に着替えたリッコは、横になるとすぐ眠りについた。
新しい友人が、幻ではないことを祈りつつ。
人とこんなに長く話すなんて、本当にいつ振りだろうか。
「おっ。内湯ではないか」
部屋に、露天風呂があった。
空に浮かぶ月が、朱砂のようにキレイである。まるでソランジュのために作られたような宿だった。
……妙に艶っぽい声さえ聞こえてこなければ。
「なんですか? えらくお盛んな、ってぇええええ!?」
隣室の露天風呂で、中年の男と若い女が「いたして」いた。
「はわーっ!」というリッコの声に女が気づく。
女性を抱えたまま、カップルが室内に引っ込んだ。
どの部屋からも、外から丸聞こえなほどの大合唱である。
リッコは顔が熱くなった。
「ていうかここ、ラブホじゃないですか!?」
裏手にある上に、遊郭も近いから、おかしいとは思っていたのだ。いい値段もしたから。
「失敬だな。ちゃんとしたホテルだぞ。貴族が不倫に使っているだけだ」
「一緒じゃないですか! わたしまだ一六ですよ! なんてところに連れてきたんですか!」
「こんな宿、一五歳から入れるよ」
「入れますけどね!?」
ツッコミが追いつかない。
かといって荷物をまとめてまだ空いている宿を探すわけにも行かず。疲労がたまっているからら野宿も嫌だ。
なにより、風呂の湯加減が最高で。
「大浴場では人が多くてゆったりできん。どうだろう、入浴は一緒に」
ソランジュが脱ぎ出すと、リッコは自分の身体を抱きしめて拒絶した。
「お風呂は別々です!」
「よいではないか」
「おっさんですか! まったく油断もスキもありませんね!」
「東洋には裸の付き合いなるモノがあるではないか」
確かに、あるにはある。
「それは殿方です! あなたには何をされるか」
「何を言うか。純潔を失うと聖職を失うなどの迷信を信じているネンネでもあるまいて」
「そうですよ! ヒラクちゃんを手籠めにしようとした司教をぶっ飛ばしてやりましたよ!」
上位の僧侶が、生娘に貞淑を守らせる方便であると。
純粋に信じた少女は、哀れ老獪なる高僧に身体を許すのだ。
「神に認められた」とかそそのかされて。
「ソランジュさんからどうぞ!」
「残念」
ソランジュは行水で終了、リッコは長湯を楽しんだ。
湯浴みで眠気が出はじめ、リッコの瞼が開閉を続ける。
なんだか、凄く眠い。面倒な女性を相手にしたせいだろう。
「じゃあ、おやすみ。明日が楽しみだ」
「わたしもです。ソランジュさんは、まだ寝ないんですか?」
「少し飲んでから、眠ることにするよ」
「あっ、変なことはしないでください」
「分かっているよ。同意なき夜這いをするほど、飢えちゃいないよ」
寝間着に着替えたリッコは、横になるとすぐ眠りについた。
新しい友人が、幻ではないことを祈りつつ。
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