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第一章 ボッチ聖騎士です。魔女さん、友達になりませんか?

第12話 おめかしです!

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「これからどこへ?」
「まずは、キミの身なりを整える。街中でもアーマー姿では、さすがに近寄りがたいからね」
「えー。これの方が落ち着くのですよ」

 ヨロイは頭までカバーしている。
 他人と視線を合わせなくていいからだ。

「もっと人に慣れろ。このままでは、私のように引きこもることになる。イヤだろ」
「確かに。わたし、やってみます」
「手頃な服屋がある。行ってみよう」

 値段がお手頃な洋服店を見つけた。

 いきなり全身ヨロイ姿の女が入ってきたせいだろう。
 店員の顔が引きつっている。

「我々は、怪しい者ではない。服を買いに来たのだ」

「そうです。よろしく」
 ヨロイ姿のまま、リッコは頭を下げた。
 長年の鍛錬で、音を立てずにヨロイ姿のまま歩くことには長けている。しかし、インパクトまでは消せない。

 唐突に、ソランジュがリッコのカブトを脱がせた。

「ひいいっ、人の目がありますぅ」
 とっさに、リッコは目を隠してしまう。

「よさんか、みっともない。ほれ」
 リッコの両手首をソランジュが掴む。

「もっと顔を見せんか。顔を隠されては、何が似合うか分からないではないか」

 目一杯、ソランジュに腕を広げられた。

 店員と目が合ってしまう。
「何かお探しですか?」

「あばあばば」
 緊張して、思わず赤ん坊のような口調になった。

「騒がしくて済まない。この子に見合う服を見繕ってくれ。あと、私の分も」
 慣れた様子で、ソランジュは店員に指示を出す。

「かしこまりました。そちらのお客様は、東洋のお生まれですか?」

 黒髪と茶色い目の色で、判断したか。

「はい。父が東洋人だったらしく」

「らしい? どういうことだ、リッコ?」
 店員に代わって、ソランジュが尋ねてきた。

「師匠がわたしを拾ったとき、父らしき人物がわたしを抱えていたらしくて。その人は東洋人だったらしいです。『彼女はリッコという。この子を頼む』と。母の生まれた国で『豊かに育つ』という意味だとかで」

 東洋風の男性は、師にリッコを託したあと、安心して息絶えたそうだ。

「申し訳ございません。お客様の私的な事情を」
「いえいえ、どれも素敵なお召し物ですね。着るのが楽しみです」

 暗いムードになりそうだったので、話題を変えた。

「ぜひご試着下さい。では」

 店員を待っている間に、二人は店のモノを物色する。

「どれもこれもカワイイですね」
「ふむ。普段使いの服にはもってこいだな」

 こういうときは、さすがの魔女も単なる女子のような表情になるのだな。

 そう、リッコは思った。

「何か? 私が洋服を物色する姿は変かな?」

「いえ」と、リッコはソランジュから視線をそらす。 
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