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第一章 ボッチ聖騎士です。魔女さん、友達になりませんか?
第7話 わたしはボッチ聖騎士です!
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わたしが着ていた鎧を、ソランジュさんがなで回す。匂いまで嗅ぎだすのでは、という勢いだ。
ともあれ、緊急事態から脱出できたので、よしとする。ヨロイたちには、貴い犠牲になったもらう。
「剣も盾も一級品だ。これだけの数を揃えるのには、時間が掛かっただろう」
「一ヶ月ほど」
ソランジュさんが、一瞬固まった。
「冗談だろ? ヨロイの素材なんて、エンシェントドラゴンのウロコではないか。どこで手に入れた?」
「飼い主を殴ったら、ドラゴンの方からくれました」
「殴った?」
「ドラゴンの飼い主が、冒険者学校の校長だったんです。司祭様だったんですけど、実はその校長、冒険者の資格をチラつかせて生徒に性的なイタズラをしていまして」
もし逆らっても、飼っていたエンシェントドラゴンに脅させて証拠を隠滅していたらしい。
友人のヒラクちゃんも、毒牙にかかろうとしていた。大人を引き連れて駆けつけたわたしが、真相を暴いて校長を半殺しにしたのである。
校長は白を切っていたが、エンシェントドラゴンが負けを認めた。校長は資格を剥奪され、ドラゴンも自由の身になった。
「クソみたいな話だな」
正直に言うと、ソランジュさんが目を丸くした。
「そ、そういえば、ここには一人で来ていたね。他の仲間は?」
「あいにく、誰も仲間にできず」
わたしは、聖騎士である。冒険者学校で、最も難しい職業と言われていた。
生まれたときから故郷で過酷な修行をしていたわたしにとって、聖騎士の訓練はさほど難しくなかったが。
そのため、わたしは剣も回復魔法も扱える。
盾を使って味方を援護もできる職業なのに。
「お金には困っていないんですよ。分け前は全部自分のものだし」
常に一人なので、酒場でも割り勘がない。
「裏地は、魔法金属製だな。とはいえ、身軽になるような特殊加工など施されていない。よくこんな装備で、軽々と野山を駆け回っていたね」
細い指が、剥き出しになったわたしの太ももを撫でた。
「単にバカ力なだけです。軽くしちゃうと、踏ん張りが効かなくなるので」
そんな女には、男性も寄ってこず。ともあれ、こんな体力自慢だからこそ、聖騎士という万能職につけたとも言えた。
「キミはこれまで、どんな強い魔獣と戦ったんだ? すべてドロップ品だろ?」
その通りである。始めは店売り品を使っていた。
ドロップアイテムを活用できないかと、武器屋の大将に相談し、格安で作ってもらえている。
盾の素材に使ったドラゴンのウロコなんて、「レア中のレア」と言われた。ゲットできても、重すぎて誰にも扱えないとも。
「これだけ揃えられる人材なら、仲間には困らないだろ?」
わたしは、これまで自分がパーティ入りにしくじってきた事情を説明する。
「ふむ。変人扱いされて、誰もパーティを組みたがらなかったと」
「ただ、みんながやろうとしない依頼しかなくて、仕方なく全部引き受けていたら、街から一目置かれるように」
「そりゃあ、上級者でも嫌う危険な依頼に飛び込むなんて、常軌を逸しているよ」
ごもっともだ。
「でも、ソロだとそういうものしか残ってなくて」
「ん? 話が見えない。ソロほど簡単な依頼に飛びつきそうだけど?」
「ほとんど刈り尽くされてしまって。収益を得ようとすると、高度な依頼しかなく」
持って生まれた人見知りも発動し、「人海戦術は必要としていないが、大人数でも躊躇うような高難度依頼」に、わたしは飛びついていた。
しかし、そのせいで周囲から恐れられるように。わたしは、仲間が欲しいだけなのだが。
ともあれ、緊急事態から脱出できたので、よしとする。ヨロイたちには、貴い犠牲になったもらう。
「剣も盾も一級品だ。これだけの数を揃えるのには、時間が掛かっただろう」
「一ヶ月ほど」
ソランジュさんが、一瞬固まった。
「冗談だろ? ヨロイの素材なんて、エンシェントドラゴンのウロコではないか。どこで手に入れた?」
「飼い主を殴ったら、ドラゴンの方からくれました」
「殴った?」
「ドラゴンの飼い主が、冒険者学校の校長だったんです。司祭様だったんですけど、実はその校長、冒険者の資格をチラつかせて生徒に性的なイタズラをしていまして」
もし逆らっても、飼っていたエンシェントドラゴンに脅させて証拠を隠滅していたらしい。
友人のヒラクちゃんも、毒牙にかかろうとしていた。大人を引き連れて駆けつけたわたしが、真相を暴いて校長を半殺しにしたのである。
校長は白を切っていたが、エンシェントドラゴンが負けを認めた。校長は資格を剥奪され、ドラゴンも自由の身になった。
「クソみたいな話だな」
正直に言うと、ソランジュさんが目を丸くした。
「そ、そういえば、ここには一人で来ていたね。他の仲間は?」
「あいにく、誰も仲間にできず」
わたしは、聖騎士である。冒険者学校で、最も難しい職業と言われていた。
生まれたときから故郷で過酷な修行をしていたわたしにとって、聖騎士の訓練はさほど難しくなかったが。
そのため、わたしは剣も回復魔法も扱える。
盾を使って味方を援護もできる職業なのに。
「お金には困っていないんですよ。分け前は全部自分のものだし」
常に一人なので、酒場でも割り勘がない。
「裏地は、魔法金属製だな。とはいえ、身軽になるような特殊加工など施されていない。よくこんな装備で、軽々と野山を駆け回っていたね」
細い指が、剥き出しになったわたしの太ももを撫でた。
「単にバカ力なだけです。軽くしちゃうと、踏ん張りが効かなくなるので」
そんな女には、男性も寄ってこず。ともあれ、こんな体力自慢だからこそ、聖騎士という万能職につけたとも言えた。
「キミはこれまで、どんな強い魔獣と戦ったんだ? すべてドロップ品だろ?」
その通りである。始めは店売り品を使っていた。
ドロップアイテムを活用できないかと、武器屋の大将に相談し、格安で作ってもらえている。
盾の素材に使ったドラゴンのウロコなんて、「レア中のレア」と言われた。ゲットできても、重すぎて誰にも扱えないとも。
「これだけ揃えられる人材なら、仲間には困らないだろ?」
わたしは、これまで自分がパーティ入りにしくじってきた事情を説明する。
「ふむ。変人扱いされて、誰もパーティを組みたがらなかったと」
「ただ、みんながやろうとしない依頼しかなくて、仕方なく全部引き受けていたら、街から一目置かれるように」
「そりゃあ、上級者でも嫌う危険な依頼に飛び込むなんて、常軌を逸しているよ」
ごもっともだ。
「でも、ソロだとそういうものしか残ってなくて」
「ん? 話が見えない。ソロほど簡単な依頼に飛びつきそうだけど?」
「ほとんど刈り尽くされてしまって。収益を得ようとすると、高度な依頼しかなく」
持って生まれた人見知りも発動し、「人海戦術は必要としていないが、大人数でも躊躇うような高難度依頼」に、わたしは飛びついていた。
しかし、そのせいで周囲から恐れられるように。わたしは、仲間が欲しいだけなのだが。
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