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第一章 ボッチ聖騎士です。魔女さん、友達になりませんか?

第3話 独り言が増えました!

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「はーあ、まいりました」

 ヒーターシールドを担ぎ、森の奥深くへ。

 この森は、「朱砂の魔女ソーマタージ・オブ・シナバー」の縄張りだ。

 二〇〇年以上も生き、強力な魔法の達人だという。「賢者の石」と同義語とされる紅い金属、「朱砂《すさ:シナバー》」の名を冠するほどの。

 わたしは、そんな人に会いに行くのか。

 この大陸を支配していた魔王【アガリアレプト】に仕えていたが、なぜか裏切ったらしい。
 魔王を殺したことで、魔女は魔族の社会から追放された。
 並の冒険者など、ひとたまりもないそうで。
 とはいえ、「山を下りて街を襲った」などという報告こそない。

 気まぐれで殺されたり、しないよね? なんか「お前の顔が気に入らん」とか言われて。まあ、そんな人なら討伐依頼とか出てるよなあ。

 人との交流も多少ある。現に、今も一人の商人が、魔女と商談に出払っていた。「魔女の屋敷へ荷物運び」という依頼で。

 わたし以外にも、魔女に会う人物がいるらしい。

 腹の虫が鳴る。胃に何か入れて帰りたい。

「もうお昼じゃないですか。肉をワイルドにかっ喰らって行きましょう」

 高速で森の中を駆け回る、一角ウサギを見つけた。

「よし、あれを捕まえましょ……おや?」

 さらに大きなウルフに、追いかけ回されているではないか。

「予定変更します! ウルフさん、お覚悟を」

 わたしは、ウルフを秒で仕留めた。

 片手で捕まえて、牙は換金用としてアイテム袋へ。

「牙なんて役に立つのでしょう? 砕いてお薬を作るか、魔除けですかねえ?」

 焚き火でウルフ肉を焼きながら、朱紗の魔女がいるルートを再確認する。

 魔女に害は出ていない。だが、油断は禁物だ。

 この前に倒した魔獣も、魔女の配下ではというウワサまで聞いた。でなければ、森に現れないだろうと。

 だが、その理屈はおかしい。魔女が呼び出したなら、森から出てくるはず。だが、あの魔獣は森を目指していた。

「いただきます」

 ウルフ肉を頬張る。食用ではない雑食種なので、やはり味はよろしくない。

「あの魔獣、そんなに強くなかったですね。学校を襲ったレベルですかね」

 パサパサのウルフ肉を食べながら、冒険者学校時代を思い出す。

 学校の近くに、爬虫類型の魔獣が出てきた。その魔獣どものせいで、学校で飼育していた家畜が死んでしまう。とんかつが食べられなくなって、キレたわたしが始末した。が、誰も魔獣に立ち向かわなかったのを思い出す。

 どうして、他の生徒にはこれくらいできなかったのか。わたしにはよく分からない。

 冒険者候補生に聞いても、「そんなことができるのはお前くらい」と恐れられた。

「あれ、わたし、結局ソロの方がよくありませんか?」

 たき火を囲みながら、わたしは不安に駆られる。

 このまま一生独り身で、誰からも存在を知られないまま、静かに死んでいくのだ。ソロ狩り冒険者の孤独死なんて。

「うわーん、いやですー! お友達が欲しいですーっ!」

 山に、わたしの叫びが響き渡った。

「くじけちゃダメですよね、リッコ・タテバヤシ。ヒラクちゃんにも、『いつか自分一人でパーティを作る』って約束しましたもん」

 無意識に動いていた口を、わたしは両手で閉じる。また最近になって、独り言が増えていた。
 
 仕事以外で、誰かと話した記憶がない。商店のおじさんくらいなら、話をしたことがあるか。あとは、宿屋のおばさんとパン屋さんである。

「生活範囲が、狭すぎますね」

 いっそ、ここに住むという魔女と友だちになってやろうか。

 そんな考えさえよぎった。

「いえいえ。なにを受け入れられる前提で、話しているんでしょう? 魔女に気に入ってもらうには、それなりの対価が」

 それに、いくらぼっちとはいえ、得体の知れない魔女と仲良くなるなど。

「た、助けて」

 ほら、ぼっちをこじらせて、幻聴まで聞こえてきたではないか。

 ウルフ肉をかじりながら、わたしは「気のせいです気のせいです」と自分に言い聞かせる。

「誰か、ギルドに報告を。救助隊を!」

 いや違う。これは幻聴ではない、悲鳴だ!

「はいはい、今行きます!」

 たき火を素早く消して、声のする方角へ駆け出す。

 救助隊なんて呼んでいるヒマはない。
 直接向かう。
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